『誰よりも』
....今年の夏休みは何しよう。
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初めての出会いは小学生。
あれは確か4年生の時...友達とクラスが離れて中々馴染めず教室で1人、文庫本を読んでいた時。貴方は笑顔で手を差し伸べて、校庭に誘ってくれた。
........多分その時から好きになってた。
そこからは家の方向が同じということもあり毎日一緒に下校した。休日には公園で家庭用ゲームをしたり、文庫本の主人公になりきってごっこ遊びをしたり。
中学生になると、お互い部活で下校時間が合わなくなった。クラスも一度も被らなくて一緒に帰宅する事が無くなって、どんどん距離ができていった。
春、入学式で前の方で歩く姿を見てドキリと胸が跳ねた。学校だけではなくクラスも同じになれた。
長いホームルー厶が終わってお互いやっほ、なんて手を振りあった。席は遠いけど近い。
そして夏休み前、最後の席替えが終わった。
ー閑話休題
午前11時03分、教室のカーテンの隙間から見える外は土砂降り。
ここ最近は雨が多くて髪がはねて困るな、なんて肘をつきながら斜め前のあなたを盗み見る。
白いものが視界をかすめはじめて、前からプリントが回ってきたことに気づく。
慌てて軽く謝罪しプリントを受け取る。
教師の合図とともに机や椅子が床を擦る音と机同士ぶつかる音が教室に響く。
なにか考え事、なんて声をかけてくれた貴方は斜め前。焦って上擦った声で返事してしまい、堪らず視線を逸らす。
ここテストに出るからな、なんて言う教師の言葉でコツコツと音が鳴る黒板へ目を向ける。
グループワークを終わらせるチャイムが鳴る。
途端に教室が騒がしくなる。昼食を食べるため席を立つ人、友人の元へ向かう人。
今回のテストやばそう、と声をかけてくれた貴方に放課後図書室で勉強することを提案するー。
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午後1時02分、体育館の重たい扉から見えた雲の隙間の光。
ダンダンッと木の板を跳ね返るボールの音が体育館に響く。貴方はひとつ隣のコート。
さすがパス上手いなとか、ハイタッチ羨ましい、だなんて...試合途中なのに盗み見てしまう。
ピーッという笛の声ではっと意識が自分のコートに向く。相手に点を取られてしまった。こちらも点数がギリギリなので試合に集中する。
バッと手を出してボールを捉える。
普段は自分からボールを触りに行くなんてこと、しないのに。
ふと目が合って、ピースサインをこちらに向けてくれた。
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午後5時01分、図書室に向かう途中、中庭にある白い紫陽花が煌めく西の陽に照らされキラキラと輝く。
貴方は正面、早くなる鼓動。普段より重くなった鞄をぎゅっと握る。
ふぅ、ひとつ深呼吸。はねた髪を撫でる。
ー貴方の事が誰よりも
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お互いの性別はあえて不明にし、読者様の解釈に委ねる作品になっております。
貴方の明日がより良い日になりますように。
2/16/2026, 1:47:53 PM