誰よりも努力したつもりだった。
この西の地で、メカニックというものは異端者である。キリスト教徒の国で仏教が否定されるように、ジャズに溺れた人間がクラシックに眉を顰める様に、それは自然の摂理みたいな顔をしてやってくる。もちろんそうでない事もあるのだろう。しかしそんなの、海に一滴の真水を落とすのと変わらない。その一滴は余りに無力で、世界を変えるには到底足りないものだ。
同じように、伊波はこの地でひとりだった。自身が作る機械は性能に関わらず、まず批判される。異物は取り敢えず認めない、それがこの場所のルールだった。それがどんなに血肉を注いだ成果物だとしても、片手間に作ったガラクタだとしても何も変わらない。ゴミはゴミ、それだけの事だ。
「やるじゃん、お前」
だから、随分と拍子抜けした。あの能面を貼り付けたみたいな彼が、少年の様に目を輝かせていたから。
小柳ロウは、伊波にとってのトマトだった。伊波はトマトが嫌いだ。けれど、ミネストローネが美味しいことは知っているし、カプレーゼが人気である事も理解している。大衆に望まれるものには相応の価値と対価がある。それはトマトも、小柳も同じだ。
2/16/2026, 3:35:11 PM