とある恋人たちの日常。

Open App

 
 あまり本を読むのは得意じゃないんだけど……ちょっと気になった本を買ってみた。
 このご時世だからデジタルで買っても良かったんだけど、手触りやページをめくる音も大切にしたくて紙の本を買ってしまったわけです。
 
 年末年始は仕事だから恋人が身体を労わって欲しいと言うから最後の休みをのんびり過ごすことにした。
 
 ぼんやりするのも悪くはないんだけど、恋人が隣にいて、温かいココアの香りが漂っている。そんな中で本を読む時間はとても贅沢だ。
 
 ぱらり。
 
 俺は本の世界に旅立つ。
 
 ぱらり。
 
 何回かめくっていると、彼女が体勢を変えて俺の膝に頭を乗せた。
 
「どうしたの?」
「んーん。紙の音が心地よいから少しお休みします」
 
 そういうと嬉しそうな顔をしつつ瞳を閉じる。 
 その表情が愛らしくて胸が暖かくなった。
 
 俺はもう一度本の中に旅立つ。
 
 彼女のぬくもりを感じながらの読書は、最高に幸せだと思った。

 
 
 
 
おわり
 
 
 
五九一、心の旅路
 
 
 

12/28/2025, 1:45:47 PM