作家志望の高校生

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「ねー、明日乗るのちゃんと予約取ったー?」
「取ったって……何回聞くんだよ……」
ドタドタと一人騒がしく荷造りをしていた彼が、一回階段を下りる度に聞いてくるものだから、さすがにそろそろうんざりしてきた。
「しょうがないじゃん!自由席の揺れマジヤバいんだって!」
「あっそ……つかケチって自由席乗ったお前の自業自得だろソレ。」
喧しい荷造り音が聞こえる2階から、何か幼稚な反論が聞こえたような気もした。当然無視したが。
明日は、少し羽根を伸ばして旅行へ行く予定なのだ。このうるさい同居人は、俺の中学時代の友人。バカでうるさくて子供っぽいが、中々憎めない。さてそんな彼は、散々早めにしておけと言ったはずの荷造りを案の定後回しにして痛い目を見ているらしい。
「おい、パスポート忘れんなよ。洒落になんねぇ。」
「さすがに忘れないって!」
不満げに言ってくるが、中学時代、コイツは鞄を丸ごと家に置いてきた前科持ちである。信用ならない。
深夜になってようやく準備が完了したようで、2階が静かになった。この調子だと、旅行初日の朝に寝坊する未来が見える。
まだ朝日も昇らない時間、スーツケースを持って家を出る。向かうのは、各国に配置された銀河鉄道の駅。
「…………ねむい……」
「だから荷造り先にやっとけって言ったろ。」
眠気に目を擦る彼の体を揺さぶり、パスポートを翳して改札を抜ける。既に駅に着いていた電車に乗り込むと、自由席はほぼ満員だった。
俺達は予約席なので、自由席の喧騒を後にしてゆったりと席に座る。広々としたボックス席は、少し値は張ったがやはりその分リラックスできる。
「月って何有名?」
「確か色々あるぞ。餅とか蟹とか。」
がたりと音を立てて動き出した列車に期待を膨らませる俺達を乗せ、列車の汽笛が夜空に響き渡った。

テーマ:夜空を越えて

12/12/2025, 6:45:40 AM