辛いこと

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ー折りたたみ傘ー(待ってて)

テレビから聞こえる天気予報を傘は拾った。 

「曇りのち雨、午後は雨になるでしょう」  

やった!

最近は快晴が続いていたから、あの子に開かれるのは久しぶりだ。 

早く、雨にならないかな。

傘は思った。

あの子はきっと、私を鞄に入れていってくれるだろうから、と。

 案の定、あの子は傘を、鞄の中へ入れた。  

久しぶりに感じる、ぎゅうぎゅうな感じ。 

道具たちと会うのも久しぶりだ。 

傘は言う。

「ひさしぶり!」

「いつぶりだぁ?良かったなぁ!」

筆箱は、傘に対してそう言った。

 「今日は濡れてないでしょうね…」

言ったのはノート。

実はこの前、前日に使ったのを忘れられて、中のものまで濡らしたことがあった。 

「大丈夫だよ!最近は快晴だったし」  

「…それもそうね」  

「うらやましいな。僕は使われていない上に、ずっと忘れられてるから…」  

そう言った古いノートに同情しつつ、傘は少し、誇らしい気持ちになった。

それからしばらく、傘は静かに雨を待った。


放課後。 

雨が降っていた。

良かった。

傘は思う。

しかし、違和感があった。

あの子は、いつまでたっても、傘を外に出そうとしない。

どういうこと?

鞄が揺れた。

あの子が少し、走っていると分かった。 

声が聞こえた。 

「あのさ」 

あの子の声だった。 

「傘、“忘れちゃった”んだけど…」

えっ!?  

私はここにいるのに? 

傘は、何が起きたのか、まだ理解できていない。

あの子は続けた。

 「入れてくれないかなって」 

 「いいけど…」

つまり、つまりどういうこと?  

混乱している傘に、ノートが言った。

 「最近、あの声の男の子と話してるみたいなの」

筆箱も言う。 

「恋してるんだろうなぁ」 

古いノートも言った。 

「僕が何度、彼に貸し出されたことか…」

傘は、少し状況をのみ込んだ。

「じゃあ、私は、あの子が相合傘をするために、ないふりをされてるってこと?」 

「そういうことね」  

「それは…」

傘は複雑だった。

あの子が恋愛をしていることは、嬉しい。 

しかし、“ないふり”をされたことは、とても悲しかった。  

「まぁ、しょうがないよ、僕もはじめは嫌だったし」

古いノートが言う。

「そう、だよね」

傘は言う。 

しょうがない。  

しょうがないよね。 

でも…。

あの子が鞄の中にすら、入れてくれなくなる気がしたから。

傘は、鞄の中を濡らしてはいけないと、考えないようにするほかなかった。

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おやすみなさい。21:00

2/13/2026, 12:00:19 PM