ーあなたへー(十年後の私から届いた手紙)
ガチャ
玄関のドアを引く。朝の風が、気持ちよかった。
私は毎朝、ポストに届いているものがないか、確認する。今日も、ポストの蓋を開いた。
一通の手紙がある。
封筒の表には大きく、「十年後の私へ」と書かれている。
その字は、私に似ていた。
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玄関の鍵を閉めてから、ソファに座って、封筒を開いた。
中には一枚の紙。
ズラッと文字が並んでいた。
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“十年前の私へ”
元気にしてる?十年後のあなたは元気だよ〜。まだちょくちょく智美(ともみ)とも会ったりしてる。仲良しだから、安心してね。
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智美とは、誰のことだろうか?
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最近よく思い出すんだ。“思い出の場所”。桜の木の下で、初めて告白した時。緊張したな〜。放課後に呼び出してさ、相手も緊張してたよね笑。今はちゃんと夫婦やってるよ!
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“放課後に呼び出した。”その言葉が引っかかった。放課後じゃなくて、一緒に帰ってる時じゃなかったっけ?
……まぁ、この手紙はいたずらなんだろう。
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あとさ、ペットを飼いたいって思ってたよね。実は私、クリスマスの前の日に、ペットがほしいって言ってみたんだけど、そしたらなんと!ペットショップに行くことになったんだよね〜。最終的には、かわいい子が見つかってさ〜。
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私は、たしかにペットが欲しかった。でもそれは、捨てられちゃった子が欲しかったのであって、ペットショップにいる子が欲しかったわけじゃない。どういうことだ?
この話を、誰かに話したことはない。……全身にじわっと何かが広がった。
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私、今すごく幸せ んだよね。でも、それは私が人じゃ かったか なの。
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文字が擦れて読めなくなっていた。“人”?
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私、どこ 間違えたんだろ。
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ここも、擦れている。というか、消されたような…。うっすらとあとがあるような気がする。耳の奥で、何か聞こえた。
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さて、ここまで読んでくれてありがとう。実は私、やり直したいんだよね。
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ゾワッとした。私の影と同じ場所から、少し大きな影が、かぶさっているのに気づく。
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でね、あなたのこと、のっとったらいいかなって。
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“のっとる”?
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大丈夫。あなたより幸せになるから。安心してね。
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影は、私が読み終わるのを待っていたように、急に大きくなった。私は走った。玄関まで、一直線に。確実に、何かが来ている。そんな気配を感じながら。
玄関のドアを引いて、外に出る。はずだった。
「なに!?なんで開かないの?やだ!!」
ガチャガチャやっている時に、鍵が閉まっているのに気がついた。いつ閉めたっけ。なんで閉めちゃったんだろう。
指が滑る。うまく回せない。胸が詰まる。喉に熱いものがこみ上げてくる。
耳元で、呼吸音が聞こえた。
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実は、玄関の鍵が開かないとこ。ちゃんと伏線張ってあったんですよ〜。気づきましたか?あと、怖いの苦手な人ごめんなさい!最初に提示しないほうが、びっくりするかなって思ったんです…。
おやすみなさい。21時25分
2/15/2026, 12:25:13 PM