昼顔

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残されたのは、変わり果てた町並みと、多くの死骸。
そこには過去の面影は一切なく、ただただ腐敗と弾薬の臭いが充満していた。
こんな筈じゃなかった。
すぐに終わるとされた戦いは徐々に苛烈さを増して、両者共に犠牲者を積んでいった。気づけば何故争う事になったのかさえ思い出せないほどに、戦争は激化の一途を辿り、理性などとうに無くなっていた。
両の手は握り合わされたまま、血に塗れ固まっている。
十字の祈りは死体と瓦礫に埋もれて、もう誰にも届かない。
ただ、静寂と廃墟の中、誰に問うでもなく生者は祈り続ける。
もう帰らぬ誰かの為に。

「お題 祈りを捧げて」#104

12/26/2025, 3:29:54 AM