雪が昔から好きで、よく周りからおかしいと言われた。周りの子どもも雪は好きだったが、僕の雪に対するそれは少し異常だったようだ。
周りの子どもは、あくまで雪で遊ぶのが好きなのである。雪そのものではなく、友達と雪玉を投げ合うこと、雪の塊を積み重ねて雪だるまを作ることを楽しみとしている。けれど、僕は違った。雪の結晶の形が、光を反射する具合が好きで、つまるところ雪そのものが好きだった。
そんな僕は、美しい雪を壊すことができなかった。だから、当然子供たちの遊びにも混ざれない。新雪を握って玉にすることは、僕にとっては花畑から乱雑に花々をむしって握り潰すようなものだったのだ。野蛮で、不可解で、僕は空を飛び交う雪玉を見る度悲しくなった。
転機があったのは、中学3年生の時。小学校から大して変わらないメンバーの中に、新顔が入ってくることになった。普段刺激のない田舎の中学で、しかも転校には不自然な時期。すぐに話題はまだ見ぬ転校生の話で持ちきりになった。
友達のいなかった僕は聞き耳を立てることでしか知れなかったが、それでもそこそこの情報は入ってきた。転校生はどうやら男、都会の名門校らしいところからわざわざ転校してくるらしい。
話題性に富んだ転校生がついにやって来た日、彼の姿を見た誰もが言葉を失った。彼は、あまりにも美しすぎた。普段うるさいサッカー部の男子も、すぐ男を好きになる一軍気取りの女子も、彼の前でだけは本気で見惚れて何も言えなかった。
彼はアルビノらしく、肌も髪も、睫毛も何もかもが透き通るように白い。その端正な顔の一番目立つところに嵌め込まれた2つの赤い目は、雪兎の目のよう。
彼は僕にとっての理想そのものだった。賢く、物静かで、冷静。そして何より、その雪をそのまま具現化したような容貌。あの時、僕はきっと本気で彼に惚れていた。
現実はアニメや漫画のように都合良くは回らないし、ラブコメみたいなお決まり展開だってない。僕らの間に大した接点は無かったし、そのまま中学卒業までの短い数カ月を過ごしただけだった。
それでも、彼は僕の心に深く深く焼き付いている。雪が降るたび、雪の結晶を愛でる度、僕の心はまた、あの鮮烈な赤に縫い留められてしまうのだ。
テーマ:スノー
12/13/2025, 9:36:06 AM