部屋の湿気は笑った証

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夢占い、というものがある。
心の状況を夢の内容で知ることができるといった迷信。
貴女は安らかに横になっている。
一日体を動かすことなく、過ごしている。
目を覚ますこともなく、ただただ。

切れ味の検証に過ぎなかった。
身勝手な理由を並べたテレビの先の遠い遠い顔。

彼女は他人に対して興味が薄かった。
そしてよく話していた。「人の不幸は蜜の味、自分の不幸が舐め取る姿なんて滑稽で仕方がない。そんなもので自分を測るのはもったいないの。」
不幸を笑われる僕にはこの言葉だけで十分だった。
なのに、どこかへ行ってしまった。

夢占いなんて迷信では
生を失うことが再生を意味し、吉夢なんて呼ばれているらしい。貴女が聞けばそんなことないだろうと笑うだろうか。不幸は人の吉を招くなんてデタラメだ、と諭すようにまた唱えてくれるのだろうか。その答えを知ることはもうできない。

もし、
この世界は夢で生まれた世界線なら、
向こうの夢の先の貴女は刺された不幸を舐め取り暮らしているのだろうか。
貴女の美学に反してしまうことで成り立つ幸せだとしても、貴女が幸せで居られますように。

できることなら、僕をいつまでも許さないでいて。





ほんの少しだけ、病室が湿気で満たされた気がした。

12/16/2025, 4:31:31 PM