極星

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あなたを昼の街中で見かけた。最初は普通に声をかけようかと思ったが驚かそうと思い、コソコソと気配を消して後をつける。
曲がり角に差し掛かり、一瞬あなたが僕の視界から姿を消す。僕も腕には自信があるが、彼は歴戦の戦士だ。そして業務の内容からして、尾行の経験が豊富なのは彼の方だろう。注意深く気配を探ってから、尾行しなければ。
そう決意し、気づかれないように角から様子を伺う。すふとそこには、僕には見せない類の笑顔を浮かべながら、若い女性と談笑するあなたがいた。

「なんで……」

どうしてあなたは、僕に見せない顔をその女性には向けたのか?
僕はずっと、あなたが幸福そうに笑う姿を本当は独り占めしたいという欲求を、我慢しているのに。なぜ初対面であろう女性にそのようにへにゃりと笑い、可愛らしく魅力的な顔を見せるんだ?
そうして僕の思考は、今までにない程に目まぐるしい動きを見せた。疑問を浮かべては的外れな答えを出し、そして一つ終わればまた次の疑問が生まれてくる。そのループをただひたすらに繰り返す。

少しの時間を起き、仮初の心臓が大きく脈動した。すると突然目の前が暗くなり、何故か地面が天井だと感じる。
足元がグニャリと歪み、膝から力が抜ける。抗えない強い眠気のようなものを感じ、どれだけ瞳をこじ開けようとしても瞼が落ちてしまう。
ドサリとやけに重たい音が響く。もう何も考えられない、感じない。
耳だけはまだ無事なのか、あなたが悲痛な叫びを上げて僕の名前を呼ぶ声だけは、最後まで聞こえていた。

2/17/2026, 11:19:03 AM