作家志望の高校生

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女の子になりたかった。俺の好きな服を着ても、好きなものの話をしても、笑われない女の子に。
一般的に、俺は男である。自認も男だ。自分が女子だと思ったことは無いし、今後もきっと思わない。ただ、戦隊ごっこよりもおままごとが、スタイリッシュで男らしい服よりも、フリルのたっぷり付いた、ふわふわで可愛らしい服の方が好きだっただけだ。だから、厳密には女子になりたいんじゃない。好きなものを言っても、おかしいと思われないような容姿が欲しかった。
小さい頃から、親に言われるがままバスケをしていた俺は、身長も高く、骨張って筋肉の付いた体つきをしている。肩幅の広い、硬い体は、俺の憧れるような、可愛らしい服は入らなかった。
一度だけ、中学の文化祭の出し物で、誰が言い出したのか男女逆転メイド喫茶をすることになった。周囲の男子たちは、面白がって笑うか、心底嫌そうな顔をしていたが、俺は内心、大好きなフリルやレースで飾られたメイド服を着られることに歓喜していた。
でも、現実は俺の思う通りには行ってくれなかった。男子が羨み、女子が目を輝かせる高身長と鍛えられた体つきのせいで、俺だけサイズがなかった。結局は俺だけ燕尾服を着ることになり、この体が憎くて仕方なかった。
男子達の羨む声と、女子の黄色い声を聞き流しながら、ぼんやり教室を見回していた、その時だった。
教室の隅、ぽつんと座り込む、メイド服のよく似合う男子がいた。彼は女子から密かに、よく似合うと騒がれていたが、それを耳にする度に悔しそうにしていた。
気が付いたら、声をかけていた。彼は俺よりずっと背が低く、華奢で、小柄だった。俺の憧れた、可愛らしい服のよく似合う顔立ち。俺は、彼が羨ましくて仕方なかった。
彼と数言言葉を交わして、勘付いた。彼も、俺を羨んでいる。きっと、俺とは正反対の理由で。
正反対で、けれどよく似た俺達はすぐに打ち解けた。そのうちに互いの羨望をぶちまけ、ぶつかって、最後にはまた笑い合った。その日から、俺はバスケを辞めた。彼も、親に言われて続けていたピアノを辞めたらしい。
翌年。俺達は、お互いの前で、お互いの着たかった服を着て会ってみた。周囲の目は当然気になったし、何度も泣きそうになった。途中で帰ろうかとさえ思った。けれど、どうにか堪えて会った彼は、相変わらず小柄で、華奢で、けれど確かに格好良く見えた。
その日、確かに俺達は、誰より可愛く、格好良くいられたに違いない。

テーマ:誰よりも

2/17/2026, 7:55:22 AM