『太陽のような』
……ん……。
寝室の冷えた空気をけたたましく揺らしたのは目覚まし時計。
ふかふかの羽毛布団の中から細い腕が伸ばされ、目覚まし時計に鉄槌を下した。
少しずつ寒さが和らぎ、外が明るくなる時間もほんのわずかに早くなる。
季節がひとつ進む気配を感じながらも、気持ちよく起き上がるには、日差しも気温も足りていなかった。
目覚まし時計のベルを止めるだけ止めて、再び羽毛布団の中にこもってしまった彼女の行動が全てを物語っている。
この時期はほんの少しだけ寝汚くなる彼女に人間味を感じながら、俺は彼女に手を伸ばした。
ぬくい。
「み゛ぅ?」
「あ。起きました?」
眉毛や睫毛をかすかに上下させているが、瞼は開いていない。
穏やかで規則正しい呼吸音は、彼女を再び眠りの世界まで連れ去ってしまいそうだ。
「……ヤダ。まだ寝る」
「起きる時間は過ぎてますよ?」
「れーじくんのせいだもん」
「……」
俺の、せいかぁ。
それを言われるとぐうの音も出ない。
昨夜、彼女は珍しく俺の独占欲を受け止めてくれたのだ。
タガが外れて、就寝時間の早い彼女に対して無理をさせた自覚はある。
羽毛布団から出てこようとしないのは、どうやら照れを占める割り合いが大きいからのようだ。
「起きたらヨシヨシしてあげますから、ね?」
「よ、よしよ、し?」
あ。目が開いた。
突拍子のないことを言ったつもりはなかったが、彼女の瑠璃色の大きな瞳はパチクリと俺を捉えながら瞬きを繰り返した。
かわいい。
乱れている横髪をそっと彼女の耳にかけて流すと、指先が触れてくすぐったかったのか、彼女は小さく声を漏らす。
「んっ」
早朝にしては甘やかな雰囲気は、寝返りを打った彼女に雰囲気ごと巻き取られてしまった。
「それ、れーじくんがしたいだけじゃん」
「バレました?」
サラサラとした細い髪の毛を、彼女の皮膚に触れないように指に絡める。
「できることなら、ナデナデもギュウギュウもチュウチュウもしたいです」
「欲望が漏れすぎ」
彼女のもっともな言葉には笑ってごまかし、俺は体を起こした。
「もう起きるの?」
「そうですね? 誰かさんは起きないみたいですから、味噌汁でも温めてきます」
「意地悪だ」
「どこがですか」
まだ眠たそうにしている彼女のために、朝食を準備しようとがんばるいたいけな彼氏を差し置いて、贅沢な。
ぷくぷくと彼女は頬に不服を詰め始めるから、無理やり指で押し出してやった。
「8時頃にもう一度起こしにきます」
「うん」
「今度はちゃんと起きて、俺にヨシヨシさせてくださいね♡」
「しつこ……」
「今さらでしょう」
まろやかな太陽のような笑みを浮かべたあと、彼女は再び瞼を下す。
静かな寝息が聞こえ始めたあと、彼女の小さな頭を撫でた。
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いつもありがとうございます。
私用のため中途半端になってしまいましたが、こちらで。
気が向いたらもう少し整えようと思います。
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2/23/2026, 7:29:28 AM