ーなくなった日ー(お気に入り)
誕生日。
あたしは買われた。
知らない子に。
あたしはね、
その子をとっても、かわいいと思ったの。
あたしを買ったのが、この子で良かった。
あの子言ったのよ。
「ずっと一緒にいるからね」
って。
それから、本当にずっと一緒だった。
一緒に外に連れられて、
一緒のベッドに入って。
手からはずっと、あの子の体温が伝わってきてた。
あたし、この子大好きだわ。
あたしのこと、大切にしてくれるもの。
ずっと一緒にいましょうね。
―――――
あたしは、いつもみたいに、机の上で、その子が学校から帰ってくるのを待っていたの。
いつもみたいに、勢いよくドアが開く。
いつもみたいに、あの子はあたしを抱き上げて、優しくぎゅっとするの。
でも、今日は少し違った。
その子の腕に、知らないお人形がいたのよ。
あたしよりはずっと雑な顔だったけど、
その子はその日、知らないお人形をずっと持って、
あたしは、ずっと、机の上…。
次の日、その子はあたしと知らないお人形を遊ばせた。
あたし、ほっとしたわ。
…まだこの子の一番は、あたしなのよね?
あの子はだんだん、あたしを連れ出さなくなった。
あの子の手に握られているのは、あたしじゃない。
あの子はあたしに話しかけなくなった。
あの子はあたしを、抱きしめてくれなくなった。
あたし、気づいたの。
だんだん、体が透けてることに。
縫い目よりも奥の、あたしの中が。
あたしの中に詰まった綿は、ふわふわ揺れていたわ。
あたしの可愛い声も、がらがらになってた。
こんなんじゃ、あの子に嫌がられちゃう!
どうしよう。
あたし、どうなっちゃうの?
今日もあたしは机の上で一夜を越した。
あたしはもう、限界だったの。
その子が学校に行った後、ついね、感情が溢れてきちゃった。
「あたしが一番だったのに…。毎日一緒にお布団に入って、お散歩に行って、お話をして!あたしが、あの子の一番だったのに…。」
涙が溢れてきた。
あたしの体が濡れていく。
綿は相変わらず、ずっとふわふわ揺れてたわ。
でも、少し湿ってた。
あーあ。
もう、あの子に嫌われちゃうわね。
…どうして、あたしじゃないの?
―――――
帰ってきたその子は、あたしが濡れているのを見て、お母様に言いつけたわ。
あたしは洗われた。
「汚いわね」って言われて、とっても乱暴にね。
爪が食い込んで、
糸が引っ張られて、
あたしの中の綿は少しずつ偏っていった。
あたしの中の綿が、減っている気がする。
あたしはすっかり乾いて、あの子の前に戻ったけど、
あの子は私を押し入れにいれた。
光が消える。
それが、あの子からの拒絶に見えた。
罰なのかしら。
当たり前よね、嫌なこと言ったもの。
あたしはもう、可愛くない。
体が、見えなくなっていく。
綿はもう、揺れていない。
まるで眠っちゃったみたいに。
ごめんなさい。
お願いだからどうか、あの子の記憶には、残りますように。
あたしのこと、なくさないでね。
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今日は早く書けました!なんかめっちゃ楽しかったです。
おやすみなさい。20:30
2/17/2026, 11:30:02 AM