それは遠い国の幻想的な気象現象───
温暖な気候に恵まれた地域で生まれ育った私は、空から降り注ぐ結晶を目にしたことがほとんどなかった。
微かに山が白い化粧を施し、風に吹かれて舞う華をいっとう寒い時期に数度見たことはあるけれど。
道も屋根も、人々の着ている服すらも真っ白に染め上げられるような、一晩で景色を塗り替えてしまうような、いっそ排他的な単色な世界はその時初めて知った。
あまりの冷たさも、滑る危険さも、新雪の柔らかさもすべて。
さくり、真新しい足跡ひとつない純白を穢す。
それが新しい生活の第1歩
テーマ:【雪原の先へ】
12/8/2025, 10:40:50 PM