夜空の音

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10年後の私から届いた手紙

一人暮らしをするこの機会に、部屋の大掃除をしている。
いつもは触らない、押し入れの奥まで整理をしていると、見つかった手紙は見覚えが無いもので、気になって封を開けた。
その手紙はキティちゃんの柄が入った便箋で、平仮名だらけの手紙だった。

“10年ごのわたしへ
わたしは今小学校の1年生です。10年ごは高校生になってますよね
たのしいですか?
まいにちどんなことしてますか
わたしは今あまりたのしくないです
友だちいなくて、いつも本よんでます
今のわたしのこと、10年ごのわたしはおぼえてますか?
おぼえてなかったらいいなって思います”

10年後の自分へ向けた、小学生の私の手紙は書いたことを忘れてしまっていて、更に10年、30歳目前にして私の元へ届いた。

ふと、私は便箋を出した。
落ち着いた紺色の便箋はキティちゃんの便箋と比べて大人になったことを感じる。

“小学1年生の私へ
私は来週一人暮らしをします。もう27歳です。気づくのが遅くなってごんね。
楽しくない時期に、未来の私に手紙を書いてくれてありがと。
楽しくない時期は、きっとまだまだ続きます。今も、楽しいのかわからないです。
仕事に明け暮れて、趣味というものも無くなってしまいました。本もあまり読んでいません。
今の私から思い返すと、子どもの時代の間はなんだって出来ました。
なのに何もしなかったことが無念でなりません。
どうか、楽しくないと思っても色んなことに挑戦してください。
今は楽しくないと思ってても、振り返ると楽しい時間です。
死にたくなる日もあるけど、1日1日を、大切に生きてください。”

続いて淡い水色の便箋を取り出して私はまた書き出した。

“50歳の私へ
小学1年生の私の手紙を見て、約20年後の私へ手紙を書くことにしました。今日を覚えていますか?
今は何をしていますか?
まだ仕事に明け暮れているかもしれませんね。
それとも、気づくのがまた遅れて、実はもう定年してるんだ。なんてこともあるかもしれませんね。
この手紙を呼んだ時の私が幸せなことを願います。”

キティちゃんの便箋と一緒に紺色の便箋と淡い水色の便箋を、また押し入れの奥へしまった。

2/15/2026, 10:18:53 AM