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時を結ぶリボン

あなたは昔から不器用でした。リボンだってうまく結べませんでしたね、いつも歪な形になってしまいました。あの子が結んだ綺麗なリボンとは大違い。結び直そうとほどいてみても、かえって不恰好な固い結び目がいくつも出来るばかり。その度にあなたはため息をつき、目に涙を滲ませました。いっそのことリボンなんて切ってしまえばいいのに、あなたを見て私はそう思ったものです。けれどもあなたはそうしなかった。しわくちゃになったリボンをほどくこともできず、今でもぎゅっときつく握りしめたままなのですね。



手のひらの贈り物

部屋に入ってみると、あなたはうずくまっていました。私が天使だったら、その寄る辺ない背中にそっと手のひらを添えたことでしょう。打ちのめされて顔を上げることも出来ないあなたに、ささやかな贈り物をすることができたかもしれません──わずかであっても温もりを。ですが私は寂しさに誘われて来た幽霊です。温もりどころか質量さえ失ってしまった存在ですから、あなたに触れることすらできません。ただ、あなたが誰にも打ち明けられない寂しさを抱えていることが、ひどく心地良いのです。




12/21/2025, 1:26:47 AM