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『手のひらの贈り物』


「ねぇ、クリスマスプレゼント、何が欲しい?」

姉にそう聞かれた私は姉の目を見ずにそっぽ向いて答えた。

「……お母さんが欲しい。」

姉はおそらく悲しそうに笑っていただろう。
ごめんね、と言う姉の声は掠れていた。

「お母さんはなんで帰ってこないの」

なんで帰って来ないかなんて、わかってる。
お母さんは私たちのことが嫌いだからだ。
じゃなきゃ、おかしい。
こんなこと聞いても現実は変わらないし、未来も変わるとは到底思えないけど、私は何度もその問いを口にした。

その度に姉はごめんねと謝り、私を抱きしめてくれた。
本当は、抱きしめて欲しくて言っていたなんて、言えなくて、その後に自分の部屋でこっそり姉が泣いているのを知って、罪悪感に飲まれる。

優しいお姉ちゃんがきらいだ。
そんな優しいお姉ちゃんを泣かせたお母さんがきらいだ。
とっくの昔に死んでしまった父さんもきらいだ。
でも、何よりも、自分のことが大嫌いだ。


12月25日
クリスマスだ。
私は泣き腫らした目を擦り、ゆっくりと起き上がると、机の上に小さなクリスマスツリーと、小さなプレゼントが置いてあった。

メリークリスマス

お姉ちゃんの字で書かれているメッセージに、キラキラと輝く小さな白色のクリスマスツリー

私は恐る恐るプレゼントを開けると、小さなスノードームだった。

私はそれを振り、ただ、雪が積もっていく様子を眺めていた。

体が弱くて、すぐに風邪を引いてしまうお姉ちゃんは、雪に触れたことがなくて。
お姉ちゃんの手はいつも暖かくて

私はサンタさん、ありがとう。と書いたメッセージカードを姉の机の上にそっと置いた。

12/19/2025, 1:28:19 PM