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“遠い金の音”


もうすぐ、年が変わる。
そんな中でも、私は清掃員の姿でホテルの中を歩いていた。
短期バイトのためだ。用意されたキャリーケースに大きめの箱を置いて、ブルーシートをかけ前に進む。


605号室の扉を開ける。立っているのは中年の男。

「ニコニコサービスの袴田です。荷物の受け取りに参りました。」
『あ、あぁ、これ全部です、。』
「わかりました。では、受け取りのサインお願いします」

テーブルの上にあったのは、たくさんのお菓子、、安っぽい袋に入った。カラフルなフエラムネみたいなやつもあるし、グミっぽい形のやつもある。

サインを受け取って、これを軽トラで倉庫まで運べば、業務終了。何も危なくないし、免許がある分には簡単な仕事である。やっぱり、この名前の自分なんなキモイな。

このお菓子たちは誰の元に届いて、どんな風に人を狂わせるんだろう。

トラックの中で、考えた。
バイト後はいつもこうだ。考えても、答えは出ないのに。

帽子を深く被り直して、私は倉庫に向かう。
いつもより明かりが無駄にキラキラして見える。

今頃は、紅白飽きてくる時間だな。

気づくと除夜の鐘の音が聞こえ始めていた。
遠い鐘の音に憂鬱の痛みを感じた。
あいつに騙されて売られた名前を取り戻すまで、あと200万。
お金を稼ぐためには、手を真っ黒に染めるしか無かった。

私は、名前の無い犯罪者なのだ。

12/13/2025, 11:38:29 AM