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最後の50分が終わった。
終わりのチャイムを合図にすぐに多くの生徒に囲まれる人気者。
入り込む隙はないと分かっているけれど、ただ一言だけ言いたくて。
迷惑になりたくない思いと、話がしたい思いが喧嘩して、どうやら負けたのは前者らしい。
何度も何度も窓の反射で前髪を治して、出てくるのを待っていた。
ぱちり。
生徒の波から逃げるように飛び出してきた先生と目が合う。
はく、と口が動いた。
なにか言いたいのに、これで終わりなんて嫌だと諦めたはずの恋心が疼き出す。
寂しくてたまらないのだと、そばに居たいのだと大きな声で泣きわめく心根にうるさいと包丁を突き立てたのは先生のお陰で少しだけ大人になった私だ。そう、私なのだ。
何も言わない私に、先生はゆっくり口角を上げて、
「来年も頑張って。」なんて。
ひらりと手を振って歩き出すその背中に、行かないで欲しいと抱きつけたらどれだけ良かったことか。
しかし、大人な私はそんなことしない。そんな自分の立場を理解していない子供みたいなこと、絶対にしないのだ。
でも、それでも。
「まだ、子供でいたい。」
細く小さく、まるで葉っぱに乗った雨粒が落ちるくらい小さな音で漏れ出た私の声を、その丸い耳はきちんと拾ってくれたらしい。
丸い目をさらに丸くして、大きな目をさらに大きくして、こちらを見た先生。
すぐにきゅ、っと細めて、くすくす笑って。
「まだまだお前は子供だよ。」
今度こそ、とでも言いたげに歩き出したその背はもう止まってくれはしないみたい。

先生、またね。

2/24/2026, 1:05:20 PM