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初めて会った瞬間に好きになった。一緒に遊ぼうと僕が誘うと、はっきりとは見えないけれど、その人はなんだか嬉しそうな顔をした気がした。
その人に二回目に会った日が、僕の最初の家とのお別れだった。「どこに行くの?」こわくて聞けなかった。
知らない場所。ここはどこ?お家に帰りたい。でも、不安と恐怖で声も出なかった。
「今日からここがあなたのお家だよ」え?
「これからよろしくね」どういうこと?
いやだよ、僕お家に帰りたい。皆はどこ?出口がどこかもわからない。もう帰れないのかな。
隠れられそうな場所を探して、そこに閉じこもった。
あの人の心配そうな声が聞こえる。出ておいでと、何度も呼びかける。
お腹がすいた。でも今出ていけば捕まってしまう。あの人と誰かの話し声がして、そのうち静かになった。
誰もいない間、たぶん皆が寝てる頃に出て行って、ご飯を食べた。終わったら、また隠れる。そんな生活を何日も続けた。

今思い返すと、そんな事もあったよなって笑い話になるけど、あの時は本当に不安で、毎日こわくて仕方なかった。でもあの頃の僕では考えられないくらい、今はこの家が大好きになった。だからお別れするのが寂しい。
「死んでからも、ずっとこの家にいていいんだよ」本当に?
「蛇口から直接お水飲んでも怒らないよ」やったぁ!
「暖かい日は日向ぼっこしてお昼寝して、私が帰って来たらおかえりって、言って……」
泣かないで。ずっと一緒にいるから。いつか一緒に虹の橋を渡ろう。ずっとずっと、待ってるから。
「この家に来てくれてありがとう。おやすみ」
うん、おやすみ。またね。大好きなキミへ!

12/29/2025, 1:17:39 AM