八木橋と久しぶりに会った。静かな、穏やかな午後だった。
ペットカフェはあくまで犬との触れ合いを主とした場所で、飲食はできなかった。1時間の制限があったものの、許す限り犬を撫で、写真を撮りまくった。最後にチェキの撮影を頼み、合法的に八木橋とのツーショットを手に入れた。
カフェを出て1日空けておくと言ったとおり、彩子が近くの喫茶店に誘うと、特に渋る様子もなくついてきた。
残業の労いにと用意した紙袋を渡すと、まさかもらえるとは思っていなかったと、予想通り戸惑っていた。
その後は相変わらず彩子から話を振って行った。恋愛話より、彼の仕事や家族の話を聞いた。
たまに沈黙も生じたが、彩子に初回のような焦りはなかった。父や職場の男性とふたりでいる時もよくあることだと考えれば苦しくなかった。彼の会話のスピードが遅かったせいか、藤堂と気まずくなった時のような聞き間違いもほぼなかった。自分が繊細体質であることも、自然と伝えられた。
イルミネーションの飾られた通りを軽く回り、ふたりして黙って風景の写真を撮った。騒がしい外は余計に喋らない方が楽だった。最後に年明けまた会おうと言って別れた。
まだ知り合って2ヶ月ほどの、友情とも恋愛とも言えない名のない関係のまま、恋人たちの残した足跡をなぞった。
もう少し未来の話ができれば、きっと。
【きらめく街並み】彩子17
12/6/2025, 7:19:34 AM