初心者A

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⑤『お気に入り』


....今年の夏休みは楽しくなりそう、なんて。

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初めての出会いは小学生だった。
確か4年生の時...教室の隅で1人、文庫本を読んでいた。指で口を抑えてくしゃりと笑った貴方の横顔にどきりと胸がはねた。

自分の前でもそんな風に笑って欲しくて、本から視線をを引くために校庭に誘った。


........その時からあなたは私のお気に入りだった。


その日から毎日一緒に下校した。休日には公園で家庭用ゲームをしたり、貴方が好きな文庫本を読んで、ごっこ遊びをしたり。

中学生になると、お互い部活で下校時間が合わなくなった。貴方が見つめる先には別の誰か。
クラスも一度も被らなくて一緒に帰宅する事が無くなって。会おうと思えば会えたはずなのに心の距離ができていった。

そして今年の春、入学式で校門前で写真を撮っていた貴方を見つけてドキリと胸がはねた。
学校だけではなくクラスも同じになれた。これは運命だ....なんて。
長いホームルー厶が終わってお互いやっほ、なんて手を振りあった。席は遠いけど近い。


そして夏休み前、最後の席替えが終わった。


ー閑話休題


午前11時00分、梅雨時だからか最近雨が多くて気分が上がらない。

相変わらず退屈な授業だな、なんて肘をつきながら板書を写していく。

「先週から言っていたが、今日はグループでこのプリントをやってもらうから」と教師がプリントを配り始めた。

そして教師の合図とともに机や椅子が床を擦る音と机同士ぶつかる音が教室に響く。

斜め後ろの席の貴方はボーッと前の方....自分の方を見ていた。
何か考え事、なんて目を合わせて声をかけてみる。いきなり声をかけたからか慌てたような声で返事をして視線を逸らされてしまった。
ここテストに出るからな、と教師の言葉で私も黒板へ目を向ける。

そしてグループワークを終わらせるチャイムが鳴る。
途端に教室が騒がしくなる。昼食を食べるため席を立つ人、友人の元へ向かう人。

今回のテストやばそう、と勇気をだして声をかけてみる。放課後図書室で勉強することを提案してもらった。
誘ってくれたことが嬉しく、勢いよく返事をしてしまう。
少し驚きつつあまりの勢いにくすくすと笑い声が聞こえる。

恥ずかしい...なんて。


ーーー

午後1時02分、体育館の重たい扉から見えた雲の隙間の光。
ダンダンッと木の板を跳ね返るボールの音が体育館に響く。すぐ隣のコートには貴方。

そういえば貴方は運動が苦手だっけ、なんて思いながらも試合に集中する。

ピーッという笛の声で自身のチームが勝ったことを確信し、チームメイトとハイタッチをする。

隣のコートの貴方を見つめていると、目が合った。ずっと見ていたことがバレたくなくて、慌ててグッドサインを向ける。

ーー

午後5時01分、二人で図書室に向かう途中、貴方は中庭の紫陽花に目を向け足を止める。煌めく西の陽に照らされキラキラと輝く紫陽花は貴方に似合う。

そして数秒止まっていた貴方はこちらへ向けて動き出す。

貴方は正面に、どきりと心臓が跳ねる。

そして貴方から告げられる

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...だって貴方はーのお気に入りだから

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毎度の事ながら性別は読者様の解釈に委ねております。
以前書いた作品の告白される側の視点です。

読んでくださった皆様の明日が少しでも良い日になりますように

2/18/2026, 9:22:15 AM