『誰よりも』
健康であることに執着した男がいた。
もちろん、酒や煙草は一度も口にせず、添加物を恐れ、最後には「ストレスこそが最大の毒だ」という結論に達した。
彼は他人との関わりを全て断ち、光や音さえ遮断した清潔な部屋で時を過ごした。
そのまま、健康であることを辞められず、男はひとりで孤独に死んだ。
そこに、死神が現れた。
「よお、迎えにきたぜ」
男は答えた。
「見ての通り、僕は誰よりも健康に気をつけた。死ぬ理由なんて、どこにもないはずだよ」
死神は男の履歴書を眺め、退屈そうに欠伸をした。
「ああ、確かにそうみたいだな。でもな、健康に気をつけてはいたが、それは誰よりも死に近い生き方だったんだよ」
死神が指を鳴らすと、男の身体は砂のように崩れた。
2/17/2026, 12:16:38 AM