おぼろげ

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【同情】
―喫茶店の薫り―
「男子会しようぜ〜!賛成の奴手ぇ挙げて!」
声を発したのは無論、榎本だ。そして、案の定誰一人として手を挙げない。
「瀧君〜!手挙げようよ〜」
「嫌だ。面倒くさい。それより期末テストの勉強しろよ」
どこの高校行ってるのか知らないが、瀧の方が頭がいいことは確かだ。けれど、学校には行っていないらしい。昔色々あったのだろう。
「じゃあ、八木さん!堀川さん!勉強教えて…」
「あ〜、俺大学から色々書かなきゃいけないものがあったんだぁ!」
「俺、ちょっと今人生について考えてるから、忙しい。」
「八木さん、大学行ってないでしょ。堀川さんは悩みが膨大すぎる」
すかさず瀧がツッコむ。何故ここにはまともな奴がいないのか、と呆れる。
いや、でももう一人いたな、と考えていると、軽快な鐘の音と共に誰かが入ってきた。
「こんにちは〜。あんたら、何しとん?」
こってりな関西弁で入ってきたのは喫茶店の店員の一人、叶だ。
叶は見た目こそ、バリバリの女の子だが、中身の性別は男。女装が趣味の関西人だ。年齢は瀧や榎本より高く、八木や堀川より低い。百花と同じ年齢だそう。
「聞いてよ〜!叶ぅ!」
「えのき、どうしたんかいな?場合によってはぶっ飛ばすけど、一応話は聞くで」
「皆が冷たい〜」
「なるほどな。そら、えのきが悪いわ。」
「えのき言うな!てか、同情せい!」
叶は榎本に興味を失ったらしく、瀧に目を向けた。
「おぉ~、瀧君、偉いなぁ。そら、優しいお姉さんが教えてあげるわ」
「あ、ありがとうございます。ここなんですけど…」
「え!?嘘!フル無視!?」
榎本がショックを受けていると、猫の権左右衛門ちゃんが駆け寄ってスリスリしてくれた。
「……お前ぇ…、いい権左右衛門だな……」
猫に同情されている榎本なのだった。
今日も喫茶店には優しい色に染まっている。

2/21/2026, 6:50:39 AM