らむね

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××様の今後のご活躍をお祈り申し上げます。

初めての就活デビューを果たし、その後も何となく様々な会社に応募し続ける日々。初心を忘れかけていた頃にやってきた一通のメールは、どこかで聞いたようなフレーズで締めくくられていた。
これが俗に言うお祈りメールか。もう記憶が曖昧だけれど、おそらく1社目に受けた企業の選考結果だろう。

ほかの企業は絶賛選考中かサイレントお祈り(通知なし)ばかりのため、文面で祈られたのはここが始めてだ。しかもわざわざ時間が経ってから。いっそ祈らないでくれたら忘れていたのにな。

丁寧なのは上辺だけで、中身はただのテンプレートだ。きっとメール文をまるっとコピーしてネットで検索したら、「お祈りメールのテンプレ集」とかいうどこかの人材派遣会社が書いたまとめ記事が出てくるに違いない。あるいは最近流行りのChatGPTにでも書かせたのかもしれない。

ならば私もと、相棒のAIチャッピーにお祈り返しメール文案を考えてもらうことにした。

貴社の益々のご発展をお祈り申し上げます。

深淵を覗く時、深淵もまたこちらを見ているというように、
あちらがお祈り申し上げる時、こちらもまたお祈り申し上げているのである。
双方ともにお祈り申し上げれば、合わせ鏡のようにお祈りが増幅しあい、何か新しい神様でも生みだしてしまうかもしれない。都市伝説ってだいたいそういうものでしょ。人の噂がカタチになったもの。言霊とか引き寄せの法則とかそういう類いのやつ。
八百万の神がいる国なんだから、1つ2つ神が増えたって誰も困りやしないもの。

メールの下書きまで終えて、手を止めた。
よく考えたら、私のお祈りを見知らぬ企業の発展のために捧げてたまるか。
それからメールの宛書を全て私の名前に変更し、下書きボックスに保存する。
私から私への、ご活躍のお祈りメール。
これで私には今、よくわからない会社からと私からの2つのお祈りが捧げられている。
選考に落ちれば落ちるほど(サイレントお祈りは念力で祈ってくれてるので)、私のご活躍を祈る声は増えていくのだ。こんなに縁起のいいことはない。

神様、私の今後のご活躍をお祈り申し上げます!

『祈りを捧げて』

12/25/2025, 4:24:22 PM