(「雪明りの夜」)
電気代の節約ということで、
夜をフケって布団へと入り込んだ私が
一生懸命に眠気を育んでいると、
ふと、閉じきった視界の奥、
そして、開いた目蓋の先、
カーテンの向こう側が
ぴかぴかと輝いている事に気が付いた。
ほんの少しは躊躇した後、
結局は執心をとった私は、
枕元に畳んであった朝冷えの為の上着をとって、
蛹の様になって服を着た後
もぞもぞと包みから這い出て
光の方へと引かれていった。
指先から伝わる熱伝導の気配に
またまた少し躊躇いながらも
一枚の薄布と一枚の厚地をはいで
景色を顕にすると、
そこにあったのは、満杯の雪と
少し欠けているお月様だった。
ふんだんに光と熱を享受している
都会育ち都会暮らしの私にとって
それは何度か経験はしている、
見覚えのない景色だった。
雪は溢れんばかりの月光を頂いて、
ほんの少し、
ほんのつゆ程だけとろめいた後、
殆どの残りをそのまま周囲へと分け与える。
ただそれだけの事が
こんなにも輝かしく映ることを
ずっと知らないでいたのだ。
余所見ばかりで、見えないでいたのだ。
すっかり、うちのめされてしまった私は、
それでもせめてもの抵抗として、
布団を手繰り寄せ
いつの間にか手元に収まっていた
アルコールで浮かれながら
そのまま、
ぼーっと夜更かしをした。
12/26/2025, 11:26:15 AM