『ちょっと、いい加減にしてよ!』
最初の一行がそれだった。
三十歳の誕生日。
ポストに届いたのは、未来の私からの殴り書きの手紙だった。
『あんたが三十歳になってもニートで居続けたせいで、こっちは四十歳になってもまだ職歴無しの引きこもりよ。あんたが無駄に時間を消費したツケが、今こっちに全部回ってきてるんだけど? マジでふざけないで。今すぐハローワークに行きなさいよ!』
私はカップ麺の汁をすすりながら、鼻で笑った。
四十歳の私、他力本願すぎる。
「何言ってんの。あんたこそ十年分も先を生きてるんだから、勉強して資格でも取ったら良かったのよ。こっちは今を生きるだけで精一杯なんだからさ」
もちろん返事は出せない。未来に手紙を送る術などない。
私は文句を口にしながら手紙を丸めてゴミ箱に捨て、再び布団に潜り込んだ。
未来の私が泣こうが喚こうが知ったこっちゃない。今の私が寝たいんだから、仕方ないのだ。
その時、またポストがカタンと鳴った。
見に行くと、また同じ筆跡の手紙。
『私からの手紙、ゴミ箱に捨てたでしょ。わかるわよ、自分なんだから。今、五十歳の私から「お前のせいでホームレスになった。なんとかしろ!」って手紙が届いて修羅場なのよ! もういい、あんたも私も、六十歳の私に期待しましょう。六十歳の私は、きっと宝くじか何かを当てて、私たち全員を救ってくれるはずだから。それまで寝てていいわよ、私も寝るわ』
「……だよね。やっぱり、生きてるだけでなんとかなるよね」
私は安心して目を閉じた。
こうして、三十歳の私、四十歳の私、五十歳の私は、全員一致で「六十歳の私」にすべてを託し、今日も仲良く眠りについた。ああ、あたたかい布団て、なんて幸せなのかしら。
『10年後の私から届いた手紙』
2/15/2026, 1:45:22 PM