「はいこれ。」
毎年律儀に幼馴染が渡してくる、誕生日兼クリスマスのプレゼント。ふたつを一緒にされることに若干不満はあるが、友人にそこまでの高望みはしないようにしようと毎年我慢していた。
「おー……さんきゅ。」
中身は、シンプルなマグカップだった。丁度この間持ち手を割ったばかりだったので助かる。
「にしてもさぁ、毎年わざわざラッピングとかしなくてもいいよ?別に。面倒でしょ、これ。」
明らかに店で購入した時に包んでもらうのとは違う、手書きのメッセージカードやわざわざ買ったのだろう緩衝材の数々。お金をかけて用意してくれたものを捨てるのもどうかと、毎年分捨てられずにずっと取ってある。
「え〜?ラッピングって可愛い方がテンション上がらん?」
へらりと笑う目の前の親友は、そこらの女子よりずっと女子力が高かった。男同士のプレゼントなんて、買った時の袋をそのままだって別に俺は気にしないのに、わざわざ丁寧にリボンまでかけて渡してくれるのだ。
「……まぁ、お前がいいならいいんだけど。」
解いたリボンを一つにまとめて縛り、鞄に突っ込む。毎年違うデザインで包んでくれる彼は、きっとこういう細かい作業が好きなのだろう。今年は、太めのリボンが巻かれていた。
「……ね、そのリボンさ。」
「ん?」
鞄に突っ込んでいた手を、リボンごと引き抜く。もう一度取り出してリボンを眺めると、細かい模様がプリントではなく、緻密な刺繍であることに気付いた。
「あの、その……今年、僕ら会って10年目、だから……その……こ、凝って、みた……」
「え待って、縫ったの?これ?マジ?」
店で売っていても全く違和感のないクオリティに目を見張る。適当に結んだリボンを急いで解いてよく見ると、蔓や花の抽象的なデザインに紛れ、何か文字が縫い込まれている。
「んと……い、いつも……ありがと……とか……」
言っていて恥ずかしくなったのか顔を背けた彼を、思わずまじまじと見てしまった。文字は、日頃の感謝だとか、俺の好きなところだとかが長々と綴られていた。
「……おう。」
こっちまで気恥ずかしくなってきて、俺も顔を背けた。男二人で何をしているんだとも思ったが、こうも真っ直ぐ好かれることはどうにもくすぐったい。
「……俺も、お前と会えてよかったよ。」
ぽつりと、小さく小さく呟いた。それでも彼には届いたようで、勢いよくこちらを振り返ってくる。
10年分の重みが詰まったリボンは、プレゼントのマグカップより、なぜかずっと嬉しくて仕方なかった。
テーマ:時を結ぶリボン
12/21/2025, 7:00:54 AM