作家志望の高校生

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ある日。俺の家に、自称天使だという小さな生き物が現れた。
サイズは大体手のひらくらい、見た目はほとんど人間と一緒。絹のような白髪と、桜桃のような真っ赤な瞳。真っ白な羽根、ほんのり光る頭の輪。天使らしい要素はあるが、羽根は小さすぎて飛べないし、輪はうっすら光るだけで何もない。ドジだし、バカだし、なんというか、期待していた天使とはかけ離れている。
さて、そんな自称天使と過ごし始めてから、早一ヶ月が経過しようとしていた。奴は小さいくせに無駄にエネルギッシュで、飛ぶ練習だとか言って机から飛び降りては、結局飛べずに床で泣きわめいている。正直、喧しくてかなわない。
しかしここ最近、奴の姿が見当たらない。元々小さいし、よくどこかに出かけては、犬に吠えられただとか、鳥につつかれただとかで泣きながら帰ってくる。今回も、どうせそうなのだろうと思っていたのに。奴の大好物になった苺を用意しても、名前を呼んでみても、一向に戻ってこない。
別に、構わないと思った。勝手に上がり込んで来て、我が物顔で飯を食うし、部屋は汚すし、煩いし。けれど、いざいなくなってみると、何故かこの部屋が広くて堪らないのだ。元々一人で住んでいたはずなのに、無性に寂しくて、この部屋が酷く味気ないものに感じてしまう。そこらに散っている白い羽根の残滓が、余計に寂寥を増幅させていた。
なんて、人が感傷に浸っていたある日。アイツが訪れた日と同じように、奴は突然帰ってきた。何故か、俺を超すほどの長身で、手には謎の手土産らしき何かを持って。
「やっと戻って来れた!」
第一声にそう言って、やたら整った顔面がすぐ眼前まで迫る。ミニサイズだった時はそこまで気にしなかったが、大きくなると、その美丈夫さに圧倒される。
奴の話はこうだった。小さい姿だったのはエネルギー切れを起こしていたからで、一時的にエネルギー補給をするため俺の家に上がり込んだ。が、想像以上に俺との生活が気に入ったので、元の姿に戻るがてら、地上への移住を伝えるため天上に戻った、と。
正直訳が分からなかったが、あの喧しい同居人が帰ってきたのが、嬉しくて。でも、それを表に出すのも癪で、上がりそうになる口角を必死に抑えつけていた。
なんだかんだ、俺もコイツのことを好いていたらしい。その日の晩、俺の家の食卓に苺が乗ったのは言うまでもない。

投稿忘れにより2日分複合テーマでの執筆。
テーマ:Love you/小さな命

2/24/2026, 10:15:53 AM