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祖母は太陽のような人だ。
いつも目を細めてニッコリと微笑んでいる。

両親が共働きで、学校から真っ先に帰る場所は、
近所に住む祖母の家だった。

小学生のころは、今日の出来事を一つ残らず話したくて、
祖母のところへ走って帰っていた。
どんな話にもニコニコと聞いてくれるのがうれしかった。

中学は運動部に所属したせいで、いつも腹ペコ状態。
よく食べる祖母と二人して、たくさんの焼肉を平らげた。

高校生になると、同級生との関わり方や勉強のストレスから
祖母と会話する余裕のない日が増えていた。

ある日、学校の友達とケンカしてイライラのまま帰宅した。
家に着いた瞬間、祖母の家に立ち寄ると約束していたことを思い出し、
忘れていた自分に苛立ちながら、祖母に会いに行ってしまった。

いつものようにニッコリと微笑み、迎え入れてくれただけなのに、何故かどうしても素直に受け取れずに
「そういうの、大キライ」と言葉にしていた。
放たれた自分の言葉に自分で驚き、その場から逃げ出していた。

次の日の朝、食べることが大好きな祖母のために、
ホットケーキミックスを使ってレモンケーキを作った。
「昨日はごめんなさい。ケーキ作ったから一緒に食べよう」
いつものようにニッコリと微笑んで迎え入れてくれた。
そして、最近の祖母は、レザークラフトに興味があって、
図書館の本で調べているという初耳な話を聞きながら、
一緒にレモンケーキを食べた。

大学生になった今、祖母の話が聞きたくて、なるべく会いに行くようにしている。
たぶん私が少しだけ大人になり、ちゃんと話を聞くことができるようになったのかなと思う。

「喜怒哀楽は、多ければ多いほど心を豊かにしてくれるの。
毎日何かを発見できる喜び、
おじいさんと喧嘩したときの怒り、
好きな人に嫌いと言われたときの哀しみ、
美味しいものを一緒に食べる楽しさ……
喜怒哀楽がなかったら、平坦すぎて面白くないわ」

そう話しながら私の手を握ってポンポンポンと撫でる。

「それにね、喜怒哀楽はね、皺になって刻まれていくの。
あなたのこの手も顔も、たくさんの皺が増えていくわよ。
だけどそれは日々が豊かであるということなの。
嫌なことも皺になるだけよ」

目を細めて、いつも以上に小さな皺を目尻に集めて、
ニッコリと微笑む。
私は祖母の柔らかな手をそっと包み、ちょっと言い返す。

「嫌なことはイヤだなあ。それに、もう少しツヤツヤな手のままでいさせてよ」

二人で顔をクシャクシャにしながら、笑い合った。

【太陽のような】

2/23/2026, 4:57:53 AM