髪の毛は伸ばさないんだけれど、この都市に来てすぐに水色のリボンを買った。
何かオシャレしなきゃ行けない時にうまく使えればなって思ったのと……。
私はケースに収まっている、あの時のリボンに手を置いてゆっくりとなぞる。
私にとって、ここに来た決意も込めて買ったものだ。
そして、視線を隣に置いた袋に送る。
それを取って袋から中にある新しい水色のリボンを取り出して、リボンを置いた。
自然と笑みが零れてしまう。
前はここに来た時に買った。
このリボンは、明日からの私のために用意した。
「片付け、終わりそ?」
突然、後ろから優しい声がかかる。
屈託のない恋人の笑顔が私を照らしてくれた。
私の様子を見てぷくっと頬を膨らませる。
「あー、その様子はサボってたなー。片付け終わんないと寝る場所なくなっちゃうぞー」
「バレちゃいましたか」
私は自然と彼に足を向けて彼の身体に寄りかかると、彼の頬が私の頭に当たって心地いい。
「そうなったら、あなたのとこに行きます」
それを伝えて彼を見上げると、彼も優しい瞳で私を見てくれていた。
もう、私はひとりじゃない。
おわり
五八三、時を結ぶリボン
12/20/2025, 2:56:54 PM