作家志望の高校生

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「お前、いつもそれだよな。」
ふと隣に座る幼馴染にそう言われ、俺は半開きのまま唇を止めることになった。
「あ?」
「いや、だからさ。お前いつもそれしか食べないじゃん。」
大学の学食の内容は、大体どこも似通っている。カレー、ラーメン、カツ丼あたりが、大抵どこも人気ランキング上位を掻っ攫っているだろう。そんな、良く言えば人気のものばかりの、悪く言えばありきたりなメニューの中で、確かに俺は同じものばかり頼んでいたかもしれない。
「あー……まぁ?」
「お前以外にそれ食べてる奴見たことないんだけど。美味いの?それ。」
そう言われて、手元の丼を見下ろす。茶色一色のそれは、同じ色味のカレーよりずっと貧相に見えて、人気度で争ったって勝負にもならないだろう。言われてみれば、俺も家でカレーか、手元のこれかを選ぶならカレーにする。
「そもそもそれ何?」
「……もずく丼。」
シンプルすぎるネーミング。元々は、小学校だか中学校だかの給食メニューらしい。給食になるくらいだから、たぶん栄養バランス的にもある程度整っているのだろう。
「渋……で、なんでそればっか食べてんの?」
何故か。理由を聞かれても、なんとなくとしか言いようがない。醤油やみりんで程よく煮詰められたもずくは、プチプチとした食感はそのままに海藻の匂いが消え、食べやすく、格段に美味いものに変わっている。が、毎日食べるほどかと言われれば、そうでもない気がしてきた。それでも、俺は毎日食べている。
「……なんとなく。」
結局、そのまま直球に伝えた。彼は釈然としなさそうな顔をしていたが、お気に入りなんてそんなものだろう。どうしてそれがそんなに気に入っていて、固執するのか問われたって、そうそう答えられる者などいないのだ。
「……つーか、お前も人のこと言えねぇだろ。」
「え?」
彼の手元に目をやる。そこには、赤というよりは黄金色に近い麻婆豆腐の乗った丼があった。
「俺もお前しか見たことないぞ。その激甘麻婆豆腐丼食べてる奴。」
「そうかなぁ……」
辛味の微塵も感じられない麻婆豆腐は、果たして麻婆豆腐を名乗っていいのか。これも元は学校給食らしい。うちの大学は、学校給食が好きなのか。
曖昧な会話はふにゃふにゃの線のようにダラダラと続く。なんだかんだ言って、一番のお気に入りは、もずく丼でも、辛味のない麻婆豆腐でもなくて、どうでもいい話をずっとしていられるこの時間なのかもしれないな、なんて思いもしたが、絶対、目の前の彼には言ってやらないことにした。

テーマ:お気に入り

2/18/2026, 8:07:57 AM