「今日のラジオテーマは、
『10年後の私から届いた手紙』です。
さっき、放送が始まる前の打ち合わせで、
スタッフとも話していたんだけど、
どうした今日のラジオテーマ、
急にファンタジー?って感じだよね。
え、私の場合?
うーん、そもそも、10年後の私から手紙が届いたとしても信じないかな。
これってさ、少し違う言い方をすると、
今の私が10年前の私に宛てて手紙を書くってことだよね。
たぶん、10年前の私も信じないと思う。
だから、そうだな、もし手紙を書くとしたら、
10年後の私から、ということは隠すかな。
私じゃない、他の誰かの言葉の方が
心に届く場合もあるから。
どんなことを手紙に書くのかって?
うーん、そうだね、、うん。
焦らなくても大丈夫ってことは伝えたいかな。
悩んで、苦しくて、立ち止まったとしても大丈夫。
立ち止まることは悪いことじゃない。
夢なんてなくても、何とかなる。
悩んで、もがいて、苦しいと感じてしまう時間も、
ちゃんと10年後の私の糧になっているから。
だから、大丈夫。
焦らなくて、大丈夫……」
ちょうど参考書の31ページ目の問題に取りかかろうとした瞬間だった。
いつもと違う放送局にチューニングを合わせていたことに気づかず、不意に女性の声がすーっと耳から入り込んできた。
手にしていたシャーペンを机に置き、両腕を頭上へとグッーと伸ばす。
その手を胸にあてて、深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
よしっ。
髪を結び直して、カチカチっとシャーペンを2回ノックしたのを合図に、再び参考書の問題に向き合う。
ラジオからは私の知らないアーティスト名の曲が流れて始めていた。
【10年後の私から届いた手紙】
2/16/2026, 6:00:50 AM