三日月』の作文集

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三日月』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど

1/9/2026, 10:07:36 PM

夜空に浮かぶ三日月と更待月。
数年前、宇宙怪獣が月にかぶりつき、二つに別れた。
あの日から、満月は見ていない。
おかげで、狼に変身することが出来なくなってしまった。
「わおーーーん!!!」
夜空に浮かぶ二つの月に向かって、雄叫びをあげた。

1/9/2026, 9:11:58 PM

ゆったりたっぷりのんびり、旅行けば…

でもコロナ禍が長くて、どこか〇〇、たとえば温泉とか海辺とか海外に旅行にいきたいな、とかは思うんだけど、でも行かなくても別にいいよな、実は良かったんだよと思えばそれで済んでしまう。
コロナもあったし、旅行者ばかりで混んでるし、おかげで以前より宿泊費も、馬鹿らしくなるくらい値上げした。
それ以前に、お金ができて時間があったら、何となくどこか旅行にでも行かなきゃもったいない、みたいな刷り込みから解放されたというか。

風景や文物からの決定的な影響は、実は場所にはさほど依存しない、というかお金と時間をかけても、自分の素養の方が整っていなければ不意打ちってのもなかなか起こらなくて、場所が換わってスマフォの画像ファイルが増えただけなことの方が多いでしょ。しかも食べ物なんて、その土地の高価なお料理でも、数回噛んで飲み込んだらあとはもう〇〇○と同じになっちゃう。不思議なことに〇〇○には、高価な高級料理を食べた高級〇〇○なんてのはなくて、どれも潔くただの〇〇○、数時間前までは数万円だった料理が、無名の〇〇○になってほのかな〇〇○の臭気だけを残して流れていく。

(だから、人間なんてポテトフライとソーセージとタラのフライでも食ってりゃ十分とかいう民族もあるくらい。)

国内旅行者を見限った旅行業界は、もう海外旅行者と心中するがよい。

1/9/2026, 9:08:12 PM

昼下がり、ビル群の合間にひっそりと浮かんでいた三日月。
頼りなくて、ひっかき傷みたいな白。
昼間に見える月って見つけたら少しだけ得した気がする。
三日月なら尚更。
と言っても見つけたところで何かが変わるわけでもなく、わざわざ立ち止まったりスマホを向けて写真を撮ったりはしないけど。
「あ、月」
信号待ちでちらりと見上げても、歩き出す頃にはその存在をすっかり忘れてる。

今日の私はあの昼間の月のように所在なく、僅かな輪郭でさえ消え入りそうだった。
その場の空気に馴染めているか。
正しく相槌を打てているか。
誰からも裁かれたくなくて背景に溶け込もうとした。
でも月にしてみればそんな自己投影など、どうでもいいこと。
昼だろうが夜だろうが、月には気を遣う相手も読むべき場の空気もない。
夜、あの頼りなかった「ひっかき傷」は、静かに輝き放ち始める。
誰のことも置き去りにしたまま月はただ独り、鮮やかなまでに澄み切っている。

三日月

1/9/2026, 8:05:02 PM

巨人の爪にも見えるし、でっかい空が笑った口にも見える、夜道を照らせるほどの光はないけど、綺麗に見えると何故か満月より嬉しく感じる。物事の始まりや成長、始まりの幸運なんて意味も持っているらしいが、なんとなくピンとこない。だって欠けてるし、なんか中途半端っちゃ中途半端。だけど見れる頻度は高いから、いい意味を持っているんならたくさん見れると嬉しいよねって思う。

1/9/2026, 7:35:45 PM

三日月


彼はいつだって穏やかに笑っていた。
面倒事を押しつけられても、理不尽な役回りを任されても、彼が声を荒らげることはなかった。
いつの間にか雑用も仲裁も彼の仕事になり、周囲はそれを当然のように受け取っていた。
それでも彼は不満を口にすることもなく、大したことじゃない、と困ったように笑うだけだった。
損な人だと思っていた。

彼と深く関わる気はなかった。
そんな中、些細なトラブルに巻き込まれた私を助けてくれたのが彼だった。
それがきっかけとなり、彼との接点は確実に増えた。
私にとって彼は本来なら避けるべき存在だった。
なぜなら彼の女王こそが私の標的で、標的に最も近い存在である彼と深く関わることは明らかなリスクだったからだ。
それでも私は、彼と行動を共にする危険より、彼の動向を把握できる利点のほうが大きいと判断した。何より、周囲に慕われている彼を不自然に避ければ余計な注意を引いてしまう。警戒される理由を与える方が、よほど危険だった。

小さな齟齬が生じ始めたのは、その頃だ。
準備していた手順が微妙に噛み合わない。想定していなかった妨害が、こちらの動きを先回りするように現れる。違和感はあった。だが、彼を疑う理由にはならなかった。
計画は慎重に練り上げ、彼に悟られるような痕跡も残していない。何より、彼自身に不自然な動きは見られなかった。相変わらず温厚で、善良で、頼まれれば断れない男のままだった。疑念を抱くほうが過剰反応に思えた。

だから私は、その違和感を切り捨てた。
この計画に綻びはないと自分に言い聞かせながら。

根回しは終わっていた。あとは動くだけ、そう確信していたその日、すべてが崩れた。情報は漏れ、協力者は離れ、逃げ道は塞がれた。計画は外側からではなく、内側から崩壊した。

行き場を失った私の前に、彼は現れた。
灯りの落ちた部屋で彼の顔を見ることはできない。
ただ一箇所、窓から差し込んだ月明かりが彼の口元だけを淡く照らし出している。
その唇は、三日月のように歪んだ弧を描いていた。

私は、すべてを理解した。

最初から、この結末は決まっていたのだと。
――すべてが、彼の掌の上だった。

1/9/2026, 7:06:05 PM

齧りかけのメロンパンが空に浮かんでいる。ボクは菓子パンを3回に分けて食べるけど、黄金色に輝くそれは瓜二つだった。明るく振る舞う三日月は化粧直しに出かけた満月の代役を見事に演じている。誰も欠けているとは思わない。彫刻刀で削ぎ落としたクレセントは人生の中盤になって完成した大器晩成の器のようで欠けているから美しい。残りは明日に食べるとしよう



題『三日月』

1/9/2026, 6:44:12 PM

キムチ鍋を山盛り食べ、締めのうどんも飲むように食べ、ルビンの土産のアイスを食べて、シンヤはこたつに入ったままコロリと転がって眠り始めた。無限の体力がある年代で、この速度はまずい。もっと運動とかさせて体力をつけさせた方がいいのではないか。なんか、プールとかにほりこんで。
「促す? あったかね、こんな田舎にジムとか」
「わからん」
 ぐわりとあくびをすると、ルビンは散らかった缶の向こうでコップ酒をあおりながら、老人! とからかってきた。そのとおり、人間からしたら考えられない年代だぞ俺は。
「で、何しにきた」
「雪を見に」
「うそつけ」
「ほんと、半分は」
 細められた眼のうさんくさいこと。まあ声のトーン的に、本当に半分は雪を見にきたのだろう。この男にかかればどこの街のどんな景色も見られるだろうに、わざわざこの町に。
「本題は」
「シンヤのこと」
 俺とルビンがこたつ机を挟んで向かい合い、俺の右手側にシンヤの頭がある。目をやると、閉じられた瞼がこちらに向いていた。ガキの頃から寝顔が変わらない。
「このまま手元に置いておくつもりなのか?」
「どういう意味」
「このまま、青年期の人間を飼い殺しにするのかってこと」
 ルビンのいる協会、稀少生物の保護だか共生だかの団体の対象は、絶滅が危ぶまれる生物のみ。人間のシンヤはそこに入ってこない。
 シンヤが生まれて、しばらくして孤児になったとき、ルビンはしつこく俺を説得した。今のうちに手放した方がいい。その方がその子のためだ──それに最初頷かなかったの理由は意地もあるし、なんとも説明しがたい。それでも一度手放して、それでもまた手元に戻した。小さい人間の集団の中、見たことない顔で固まっているシンヤをそのままにしておけなかったし、その後まる三ヶ月は口がきけなくなった彼を二度と手放そうとは思わなかった。
 飼い殺し。
 言い得て妙だ、と手元の酒をあおる。シンヤの行動範囲は、この町の歩いていける範囲のみ。スーパー、図書館、それからなんだろう。わざわざ山手の、子どもの集団がいるような場所を避けた住処だ。
 学校に行きたいだなんて、言い出したら困るから。
「協会はシンヤを引き取る。教育も仕事も与えられる」
「前それでどうなったか、忘れたか」
「あの頃、この子は小さい子どもだったろ。事情が違うよ」
「違わないよ」
 まっすぐ俺の目を見てくるルビンの、その目尻にシワを見つける。こいつも歳をとった。小さいシンヤを誘拐して逃げまわった俺を、半年かけて見つけだして協会の保護下に戻した、その時の勢いと若さはもうない。プライベートは知らないが、子どものひとりやふたりいるのかもしれない。
「ユキ」
 ルビンの後ろ、カーテンがたわんで、ちょうど夜空に浮かぶ月が見えた。冴え冴え輝く三日月。なああれ今日食べたパンに似てるよなと、腕の中の虚な目の子どもに話しかけたあの日々。
「シンヤには権利がある。どこに行くか、何を学ぶか、どう働いて生きるか。あのころの弱い子どものままじゃないよ」
「……」
「その選択肢を渡さないで、そのままずっと囲っておくのは、傲慢だよ」
 知らねえよ。
 そう言って笑ってやれればいいのに、どうにも上手くできなかった。

1/9/2026, 5:49:07 PM

三日月


あなたへの思い

不安な夜

まるで欠けたような

三日月

1/9/2026, 5:47:03 PM

『三日月』

私は三日月に限らず、欠けていく月が大好きです。これにはちゃんと理由があって、どうしても共有したい感覚なのです。テーマとは少し逸れてしまいますが、眠れない夜の思索の寄り道にでもしてください。

遠い昔の人たちは月を見て何を感じていたのでしょうか。私たちが今生きている世では、ほとんどの事柄に、既にもっともらしい理由がつけられています。答えが元々揃えられているのです。もちろんまだまだ未知の領域はあります。が、私のような平凡な人間が人生で出会う疑問には、先人が答えを出してくれています。そうなると、ふいに何のために生きていくのか、という疑問にぶつかるのです。

人は考えずにはいられない生き物です。とはいっても、いくら考えたところで結局は自然の流れに身を置く一部で、誰一人例外なく死ぬ時は死にます。
それなのに私たちは暇さえあればいくらでも考えてしまう。こうしてみると、やはり私は、人は考えるために生きているのだと感じるのです。
そして私は、なぜ月が満ちて欠けるのか、その原理を知らなかった大昔の人を少し羨ましく思います。
月はなぜ痩せたのか、何を失ったのか、また戻ってきてくれるのか。様々な感情を抱き、長い間考えたはずです。
私が感じるこの羨ましさは、世界がまだ問いで満ちていた状態への憧れなのだと思います。

今の私たちは、多くの答えを持っています。月の満ち欠けも、生も死も説明できる。だからこそ、何のために生きていくのかという問いが、以前よりも鋭く、逃げ場なく胸に残るのです。

人は考えるために生きている。

これは、古代の人と現代の人をつなぐ、一本の細い光です。
昔の人は、理由を知らなかったから考えた。
私たちは、理由を知ってしまったけれど、それでも考えずにはいられない。
考えても意味が尽きない。
説明されても、感じることは終わらない。
死ぬと分かっていても、生を問い続けてしまう。決して本能の奴隷だからではありません。これは自然の流れの中にいながら、そこに意味を見出そうとする力なのだと思います。

そうして想いを巡らせると、日に日に欠けていく月がとても愛おしく感じられます。
この感覚こそ、まさに昔の人と同じ場所に立っている証です。
原理を知っていても、なお不思議だと感じ、なお愛おしいと思える。
答えが揃っている世界で、それでも問いを手放さないこと。
それは平凡ではなく、とても人間的で、尊い営みです。

1/9/2026, 5:40:14 PM

三日月は欠けてなんかいないわよ。
地球が隠してるだけ。

なんで?
さあ、なんででしょうね。

、、、

月だって、あまり光ると疲れちゃうのよ。
ほら、蛍だってそうじゃない?
影がないと、休めないのよ。

あなたは月の影に何を映しているの?

彼女はそう言って、煙草の煙を吐いた。
唇から零れた煙は、月へと上っていった。

1/9/2026, 5:39:09 PM

am02:27

今夜は

三日月?…

違った

二十日余りの月

少しふっくら

とても輝き眩しい…

風もざわめき賑やか

ゴォーっと

唸ってきたので

部屋へ戻る

カールの空袋が

散らかっていた…

………

空ならゴミ箱に

捨てて欲しい

変な膨らみに

期待しちゃうよ

あと1個残ってるの?

みたいな…ね





✴️630✴️三日月

1/9/2026, 5:32:00 PM

元始、女性は実に太陽であった。真性の人であった。今、女性は月である。他によって生き、他の光によって輝く、病人のような蒼白い顔の月である。

深い眠りから目覚め、時計を確認すると、14時を過ぎていた。
高校1年生の冬休み、それは、自由に過ごせる至福の時。外に出ることも誰かと会話することもなく、自分のやりたいことを好きなだけする。やりたいことと言えどできることは限られており、ショート動画を見続け、飽きてきたら読書をし、またショート動画を見て…これの繰り返しである。

いつもと同じように過ごしていると、気づくと27時になっていた。この時間になると情報をインプットするのが疲れてくるため、自分の思想を展開させていく。
この時、世界が空白となり、孤立する。惑星も何も無い宇宙を彷徨っているような感覚で、不意に自分の行いを振り返る。他人が生産している動画あるいは文章を目に通すことで毎日を過ごすことができている、つまり私は他によって生かされている。
そんなことを考えていると、時刻は29時。顔をあげるとカーテンの隙間から電灯の光がほんの少しだけ私を照らしていた。暗闇に浮かぶ私の一部を少しだけ。
カーテンを開けると、とおくとおくとおく離れた空に三日月が浮かんでいた。
誰にも見られることのない時間に顔を現す三日月。貴方は何時まで美しくいられるの?

1/9/2026, 5:15:36 PM

街には いろいろな色が

行き交う

君と僕は 何色だろう

きっとお互いを引き立てる

似合いの色だ


〈 色とりどり 〉




静かな夜半

星々を散りばめ

ただ静かに 美しい姿で輝く

ふたり静かに

酒を酌み交わそう

〈 三日月 〉

1/9/2026, 5:11:16 PM

三日月といって一般に思い浮かべるのは、本来の三日月とは違ったりする。
新月から三日目の月が本来の三日月であるのだが、これが想像しているよりもずっと細かったりするのだ。
これが三日月?と初めて見るた時は驚いたものだった、
一般に思い浮かべる三日月は、新月から5日以上経った月くらいの存在感がある。
このイメージと実物のギャップは三日月だけに限らない。 意外と面白いものだと思う。

1/9/2026, 4:48:38 PM

(お前の、ことが、嫌いだ)

心の中で彼にそう言う。

物腰の柔らかい、穏やかな表情や口調で彼は私の隣の男性と接している。
彼はあまりにも綺麗な顔をしていて、知的な声をしていて、少し間違えば、簡単に皆、彼に堕ちてしまう。

「待たせてしまって、ごめんね、終わったよ」

「行こうか」

そして私に微笑んで声をかける。
彼は、きっと裏表がないのだろう。
こんな身分の違う私に、誠実に優しく接する。

「……はい」

その背に、ついていく。

「…っと、あれ、…あれ?ごめん、さっきの資料どこにやったっけ…?」

「……先程、ジャケットの左ポケットに折りたたんで入れていたところをお見かけしました」

「あっ……ははは、うっかりしてた。ありがとう。参ったな…しっかりしないと…」

そう言って、少し落ち込んだみたいに俯く。俯いた時、落ちた睫毛の影があまりに綺麗だった。
そして、気を取り直したように、私の目を見た。

「君がいるから僕は周りの人からとても評価してもらえる。君のおかげだよ。ありがとう」

そして、柔らかく、真っ直ぐに彼は笑った。

この人の瞳に、声に、笑顔に、いちばん夢中になっているのは誰だろう。

この人がいつか許嫁と結ばれることを、1番苦痛に感じているのは誰だろう。

彼が前を向いたあと、ぎゅ、とめをつむる。

嫌いだ。
きらい。
お前のこと。
いつか違う人と結ばれるお前のこと。
身分不相応な思いを抱いている自分のこと。

お前なんて、嫌いだ…

1/9/2026, 4:48:28 PM

足もつけず
ふらふら
漂うだけで
息をしていたい
どうか私を連れて行って
何も知らない世界へ
どうか私を連れて行って

1/9/2026, 4:33:41 PM

細い月が怖いのは、見られている気がするから。

薄目を開けて、じっと私を監視するように。

どこへ行ってもついてくる。
逃げても、逃げても、どこまでも。

空からずっと、私を見ている。

私が、××してしまわないように。

──ああ、
新月が、待ち遠しい。

1/9/2026, 4:32:34 PM

三日月
のネックレスを12月に買った
今、思い出した
まだ一回も使ってないなぁ
明日の新年会につけていこうかな

1/9/2026, 4:23:55 PM

三日月の

閉じた瞼から

涙がこぼれて

星になった




君のことだよ

1/9/2026, 4:22:40 PM

三日月(三日月を由来とするクロワッサン成分多め)

 スパイとして、私は夜の舞踏会に潜入した。
 ターゲットは貴族の女性――ジャンヌ・デュ・エピネルの情報だ。
 古い血筋の人間であり、この国において銀行に携わる一家の女当主だ。有力な家であるのはさることながら、当代で四代目だというのに甘えることなく研鑽し、一層勢力を強めている厄介な奴らだと聞く。
 さて、それと同じぐらい厄介な出来事が一つ。

「招待状が男性宛だからと、男物を着こなすのは……少々骨が折れたな……」

 鏡に映る自分を見て、自らの変装――厳密には男装にため息をつく。
 私はとある大きい商社のスパイなわけだが、優秀なスパイは私だけだ。他は殆どが見習いかそれ未満か。いずれにせよ私が一番スパイとして実力も経験もある。
 皇室貴族の情報だって一度や二度引き抜いて、多大な利益貢献すらしてきた。
 さて、首周りや肩周りに布を巻いたりして体つきはある程度誤魔化した。舞踏会へと向かおう。
――――――
 それからしばらくは恙無く談話したり、有名なシェフの料理に舌鼓を打った。
 男装がバレないのかとか、不安点はかなりあった。しかし結局のところ、2代目3代目と腐敗の進んだ品のない貴族どもは、そんな点に目は行かない。
 金と名声。あるいは美貌。
 平々凡々な貴族の招待状で良かったと心の底から思った。

「……そこのジェントル。少し良いかしら」

「貴方は……これはこれは、かのデュ・エピネル家の当主様」

 探す手間が省けた。
 肢体の魅力全てを引き出すように作られたドレスは滑らかな生地で出来ていて、レース生地がふんだんに使われていた。ジュエリー系のアクセサリーは控えめである反面、糸の宝石たるレースの多さで優雅に資金力を魅せていた。

「皆様方、私をいつも家名と当主の2つを使って呼ぶのよね。そこに黄金を感じているのかしら」

「で、あられましたら……ジャンヌ女史とお呼び致しましょうか?」

「ふふ、貴族でもない人が畏まっていると……なんだか、その服みたいね」

 背筋が凍りつく。
 この女、なんて言った。

「こんなつまらない舞踏会なんて抜け出して……名前で呼んでも良い場所、抜け出してみないかしら」

 しなやかなシルク生地の手袋が私の手に触れる。
 軟体生物が絡みつくように、手指が攫われて、引かれるまま会場を後にした。
 目の前しか見ることのできない他貴族たちは誰も気が付いていないようで、段々遠のく声を背に静かなベランダへ連れられた。
 月相は三日月だった。

「……ねえ、クロワッサンって好きかしら」

「その、今は……塩税といい、少し高くてあまり食べれてませんが……でも、とても好きです」

「そうね。庶民ですものね、スパイさん」

 柔らかな風はひんやりとしていたが、彼女の表情は温かくて柔らかい。
 だが気をあまり許し過ぎるのはよろしくない……一目でキチンと身分も性別も当ててきた。只者ではないのは確かだ。
 壮大な前日評は大抵当日覆される。陸軍随一の切れ者と称されていた将校も、ハニートラップに負けて処刑されてしまったし、ライバル商社のトップは偽の醜聞から生まれた誹謗中傷の末に命を絶った。
 誰も、最初から最後まで私の手のひらの上だった。
 だが目の前の女はどうだ?

「タキシード、着慣れてないわよね。服に着られてて、むしろ逆に弱々しい貴族っぽくて……あなたが追い出されなくてむしろ安心する出来よ」

「追い出された方が、ジャンヌ女史の身の安全としては良くはないのですか」

「あらあら……可愛らしいのは、顔だけじゃなくて口先もなの?」

 口角が上がる。
 笑みもまた、三日月のようだ。

「貴方って商社に拾われて、ただコードネームだけ付けられた……そう、ただのチェス盤のコマよね。ヒトとして扱われたこと……あるかしら?」

「……拾って育ててもらった、それだけで忠義に値する。商社のためなら、この身の全てぐらい」

「それで、貞操まで捨てさせられたのね。選択の余地もないままに」

 哀れみか、同情か、読めない。この表情は何?
 ハニートラップは……確かに言われた通りだ。
 けれど、それらもまた恩に報いる為。使う事も無いと思っていた選択肢に、唐突にスポットライトが当てられて、選択の余地も無いままそうなっただけだ。
 仕方ないことなんだ。
 目を伏せがちにしていた彼女が、再び私に視線を向ける。

「ねえ。私なら貴方に毎日クロワッサンを食べさせてあげられるわ」

「……ク、クロワッサンを!?」

 素っ頓狂な声が出た。

「ええ。毎日暖かいベッドで寝かしつけてあげるし、危険な目にも遭わせないわ」

「っ、ちょ、ちょっと待っ」

「ねえ、私の物になっちょうだいよ」

 勢いにグイグイと押されているうちに、べったりと私にくっついてくる。
 貴族は大抵キツい香水を振り撒いていて、一堂に介した時――さっきの舞踏会もだ――なんかは鼻が曲がるほどキツい。
 けれど、彼女がふわりとさせた匂いは……心が落ち着く。なんだかアロマみたいで、やすらぐようだった。
 他の腐敗貴族とは何もかもが違う。もしかして、彼女なら……何か、期待してもいいのかもしれない。

「……ジャンヌ女史」

「呼び捨てでいいわよ。ジャンヌって、パパとママしかそう呼んでくれなかったの」

「はぁ……ジャンヌ」

「ふふっ。ありがとうね」

 無邪気そうな笑顔を浮かべる。
 商社の者らが浮かべるような笑顔とは、本質から違う……そんな笑顔を。
 心臓がだんだん落ち着かなくなっていく。何をしても同じリズムを刻むメトロノームだというのに、何がそうさせた? 何が、どうして。

「ねえ、貴方の口から名前を教えて」

「名前は……ありません。ただ、コードネームなら」

「ならコードネームでいいわ。言っちゃダメかもだけど、考えなくていいわ。三日月以外聞き手は居ないもの」

「……ソリチュードです」

 ソリチュード――この言葉の意味は、孤独。

「そんな……そんや、悲しい名前に運命を決められちゃダメよ。貴方は……貴方は、ボヌール。ボヌール・デュ・エピネルでどう?」

 思わず呆気にとられた。
 ほんの少し背伸びした彼女が私の頬に手を添えて、三日月みたいに口元に弧を描く。
 ああクソ――綺麗だ。

「私が幸せにしてあげるわ。これから月が満ちるみたいに、私が貴方の心を満たしてあげるから」

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