『子供の頃は』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
地獄
虐待
記憶は死ぬまでなくならない
私の人生は
大人になっても散々だった
そして今は風俗嬢だ
子供の頃不幸だった女の
典型的な行き着く先
ただ一つだけ救いがあるとすれば
それは
今私に愛をくれる人がいるということだ
私という人間をジャッジすることなく
ありのままを愛してくれる人に
44年経ってようやく出会えた
だからあの時
死ななくてよかったのかもしれない
長過ぎる不幸な年月を
死ぬ勇気がなくて
泣きながら生きた私に
もしかしたら
神様は”彼”というギフトを
与えてくれたのかもしれない
人生は辛い
理不尽で残酷な弱肉強食の世界だ
きっと私は
死ぬ勇気がないのと同じくらい
踏みつけられたまま死んでたまるかと
根底にそんな思いがあったから
一線を越えなかったんだろう
敵に対する憎しみと
自分に対する嫌悪感の中で
明日は死のうと思いながら生きていた
あれから月日は流れて
今ここに45歳になった私がいる
お化けが苦手だった
暗いのが怖かった
自分の部屋にもひとりじゃ行けない
夜が早く終わって欲しかった
絵を描くのが楽しかった
みんなでいるのが心地よかった
今じゃ、真逆の存在
同じ人間って言えるんだろうか
子供の頃は
最近、お題が嫌なものばかり引き出そうとしてくる。
過去を思い出すことは、できるだけポジティブなものにしたい。
私に楽しかった、子供の頃などない。
もし、若くて苦しんてる人がいたなら。
子供でも大変なんだと思ってほしい。
思い出すのが辛い。
「きっと同じだったから」
あの頃は、何も躊躇わずに言えた「だいすき」
それはきっと、同じ目線だったから。
手を繋ぎたいと思う前に手を繋いでいた。
それはきっと、同じくらいの大きさの手だったから。
中学生になってから、急に伸びた背。
低くなる声。大きく角ばっていった手。
一緒にいるだけで揶揄われた、あの頃。
今は、どうやったら自然なカタチで側にいられるかを、必死になって考えている。
────子供の頃は
【子供の頃は】
まだ年端もいかない時分から超常現象やオカルト的なものが好きだった。いい年した大人になってもそれは変わらない。
そういえば有名な大地震の予言を見事に的中させた人物が、こんなことも記していたな……2025年7月5日4時18分に海中で大噴火、そして太平洋周辺の国々に大津波が襲ってくるそうな。
今から約「一年後」の予言、さてどういう結末になるのやら。
子供の頃は、親が守ってくれていた。
あまり良い両親とは言えなかったが、それでも確かに、俺は守られていた。
子供の頃は、裏切りなんて知らなかった。
友達は、今日も明日も明後日もずっと友達で、いつも一緒だと思っていた。
子供の頃は、自分が幸せになれるものだと信じて疑わなかった。
大切な人がいつかできて、人生の目標がやがて見つかってやり遂げて、安らかに眠りにつくものだと思っていた。
俺は幸せな少年だった。
あの時が来るまでは。
「この機械じゃ、世界は変えられんよ」
駆け込んできた俺に、冷静に彼女は言った。
彼女は淡々と、ホワイトボードに樹形図を書きながら、話し始めた。
「いいか?世界は選択の数だけ無限にある。私たちの世界はちょうど、そう観測されたことによってチャンネルが合っているだけで、私たちの世界線の外には、これまでの全ての“選択されなかった”選択の先の世界が、並行して並んでいるんだ」
「つまりだね…このタイムマシンで過去に行き、選択を変えたとて、それは君がその選択を選んだ世界線へ移動するだけで、新たな君がここで苦悩することになるのだよ…」
「だから、正直おすすめしないね。その選択をした世界線の君と君が入れ替わるだけで、それ以外にこの世界にはなんの変化もない。ひょっとしたら自分に恨まれることもある。よって、そんなリスクの高い意味のない行動はおすすめしない」
「俺は行きます」
俺は答えた。どんなに無駄なことであろうと、最初から決めていた。
俺の言葉に、彼女は微かに眉根を寄せ、ため息をついてから、少し震える声で続けた。
「…確かに今回の件は私も辛い。だが……」
「俺は行きます」
彼女の言葉を遮って俺は怒鳴った。
「もうこんな世界は懲り懲りなんだ!両親は死んだ!親不孝の息子のせいで、分かりあう前に、仲直りもできないままで!!友達もいない!良い奴から死んで、生き残った奴は裏切った!俺には何にも残っちゃいない!!」
喉にひりついた痛みが込み上げる。
俺はゴホゴホと痛みを吐き出す。
赤い飛沫が落ちる。
俺の方に傾いだ彼女の手を、俺は振り払って怒鳴る。
喉から掠れた声が出た。
「この世界に何も残っちゃいないんだ…!もう…もうこんな貧乏くじは懲り懲りなんだ…戻りたいんだ、子供の頃に。子供の頃は…ああ…頼むよ……最期の望みなんだから」
彼女は黙って立ち上がる。
俺はゼイゼイと肩で息をしながら項垂れて、長い沈黙をしばらく享受した。
足音が近づいてくる。
俺の目の前に、鍵が差し出される。
「…そこまで言うなら、勝手にするといい」
「…!ありがとう!」
俺は鍵をおしいただいて、顔を上げる。
「私だって、面倒事はもう懲り懲りだ。……この件が最期のお願いだと心得ろよ」
俺の泣き笑いの顔に、彼女はそう冷たく言い放った。
しかし何故だろう、彼女の目の奥に、ちらりと悲しみとも切なさとも諦めともとれる形容し難い何かが、チラと走ったように見えた。
「じゃあ、さっさと行くが良いさ。じゃあな」
「ああ、さようなら」
俺は鍵を使い、タイムマシンに乗り込む
__これで何回目だろうか。
タイムマシンが消えた研究室の椅子に、ぐったりと、腰掛ける。
彼が、世界線の移動を始めてから、私は何人の彼を見送ったことだろう。
タイムマシンで行えるのは世界線の変更。
質量保存の法則で、移動した世界線の人物は入れ替わり、別世界線の同じ人物が、この世界線にやってくる。
“記憶を消されて”
世界の理とは、実に上手くできているものだ。
世界線を移動した人物の記憶は、移動した時点でその世界線のものに書き換えられる。
記憶は保管される。
…それが分かったのは、私が彼を送り出してからのことだった。
故に彼は、何度も何度も、無限と思えるくらいにこれを繰り返している。
説明は意味を為さなかった。
この世界線で起きた出来事に絶望し切った彼の摩耗した精神の前には、如何なる理性も通用しなかった。
これは私の責任だろう。
世界線を跨ぐということに無知で、タイムマシンの安全性を試さずに彼を送り出してしまった、私の責任だ。
…だから私は、最期までこれを見届けなくてはならない。
子供の頃は。
私はただタイムマシンに憧れているだけの理屈っぽいただの少女だった。
子供の頃は。
彼はちょっと野心の強い、真っ直ぐした性根のやんちゃなただの少年だった。
「子供の頃は…子供の頃に戻りたいな」
ひっそりと弱音が漏れた。
誰もいない研究室。
たった1人の味方だった彼はもういない。もう帰ってこない。
私の研究成果はもう戻らない。動かなくなるまで彼と一緒に永遠とループし続ける。
私は独りだ。
目を瞑る。
私の呼吸は、独りの沈黙の中に、静かに溶けていった。
「私が子供の頃は……」
「子供の頃って、今もまだ子供じゃないか」
「そうだけど、言葉の綾だよ。わからないかな」
「ああ、そう」
「それに、ひとえに子供と言ったって高校生と小学生とじゃ日々の生活も価値観も、その目に映る世界も何もかも違うでしょう。まだ十七年しか生きていない私にも、たまには懐かしき小学生時代の無垢な私を偲びたくなるんだよ」
「そういうものか」
「そういうものだよ。十六歳の君にはまだ分からないだろうけど」
「せいぜい数ヶ月の違いでしかないだろ。というかお前、何か自分を勘違いしているみたいだけどな」
「なに?」
「別に懐古するほど小学生の頃からそんなに変わってないぞ。身体も、頭も」
「殴られたいの?」
「そういう短気なところも相変わらずだ」
「もう……そうやってすぐ揚げ足とって苛めるところ、君も変わってないよね」
「まあ、そうだな」
「少しは否定しなよ」
「お前より自覚的なだけだ。きっと、あの頃から何も変わってない。俺も、お前も」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……ねえ、不安にならない?」
「不安? ……なにが?」
「数年経たくらいじゃ、私たちは何も変わらない。そりゃあ多少背が伸びたり賢くなったりはしているのかもしれないけど、なんていうか、生き方というか、世界の見方とか、人との関わり方とか、そういう部分って、君の言う通り何も変わってない。それなのに、世の中はあまりにも目まぐるしく変わっていく。時間は流れていく」
「…………」
「大人なんて先の話で、まだまだ私は子供のままで……そう思っているうちに、私はもう十七になっちゃった。来年には成人して、将来の進路を見据えなきゃいけなくなる」
「…………」
「このまま、変わらないんじゃないかって。世界は変わって、みんなも変わって、だけど、私だけ変わらないまま大人になっていくんじゃないかって思うと、不安っていうか」
「焦ってる?」
「そう。焦ってる。変わらなきゃって。私たちはいつまでも子供のままじゃいられない。分かってる。分かってるけど、まだ私は子供のまま」
「……んー」
「その唸り声はなに」
「いや、なんか、お前ってそんなセンチメンタルになれたんだなって」
「やっぱり殴られたいんだね? 殴ろうか?」
「やめてくれ。実力行使はフェアじゃない」
「むう」
「いや、俺が思うのはさ。別にそれでいいんじゃないかって」
「それでって、子供のままでいいってこと?」
「そういう訳じゃないけど、多分、誰だって子供のまま大人になっていくんじゃないのか」
「どういうこと?」
「個人的な面で言えば、大人と子供に明確な境界線は存在しない。特に精神面だな。どれくらい精神が成熟したら大人とか、どれくらい賢くなったら大人とか、そんな基準は無い。というか、定めようがない」
「まあ、そうだね。頭が悪い大人も頭が良い子供もいる」
「ああ。だけど、社会的な面で言えば、大人と子供には明確な境界線がある。18歳になったら成人。20歳になったら酒が飲める。22歳で大学を卒業したら社会人。俺たちの意思に関係なく、社会が俺たちを大人へと上らせる」
「つまり?」
「誰しも心が大人になってから大人になるんじゃない。心延えはまだ子供のままで、なのにいつのまにか大人ということにさせられて、社会の荒波に揉まれながら少しづつ身も心も大人として成長していく。いま変わろうとしなくても、変わる時が来たら、きっと変わる。俺が言いたいのはそういうことだ」
「そうかなあ。ちょっと楽観的すぎない?」
「楽観的すぎるくらいが人生丁度いいんだよ。それに、だ。大人になったらもう子供には戻れない。子供時代は今しかないのに、その貴重な時間を使って大人になろうとするなんて馬鹿らしいぜ?」
「たしかに、それはそうかも。子供の頃を回想するのはまだ早いかもね」
「ああ、俺たちはまだ子供だ。未来と自由ある、若々しき青少年だ。目まぐるしく変わりゆく世界の中で、変わらないままでいられる今を楽しめよ」
「うん。そうする」
「おう。そうしろ」
「……ふふっ、やっぱり君は変わらない」
「安心しろ。変わらないから」
「私と君の関係も、ずっと変わらないままがいいね」
「どうだかな」
「なにその返事ー。……あ、もうこんな場所か。もう少し話していたいのに」
「帰る家が違うんだからしょうがない」
「そうだね。じゃあ、バイバイ。また明日」
「また明日」
【子供の頃は】
仲良くしようと話しかけた
うざいと思われたのか話さなくなった
自分の好きな物を言った
それは“周りの言う”私の好きな物じゃなかった
ずっと周りに合わせてた
自分の意見をいえと言われたけど分からなくなっていた
今とほとんど変わらないけど自分の気持ちを尊重したい
ずっと、早く大人になりたいと思っていた。
誰にも干渉されない自由を得られることはもちろん魅力的だったけれど、それよりも、自分の未熟さを事あるごとに痛感しては、精神的に大人になりたいと何よりも願っていた。
いつのまにか、大人になりたいと思うことがなくなった。
それはきっと、十分大人と言える年齢になった事もあるのだろうし、自分の中で腑に落ちるくらいには自分の中の‘’大人‘’に近づいたという事もあるのだろう。
なのに、
それが今、こどもに戻りたいなんて時折思ってしまう。
何の責任も無く、周りに守られていたあの頃。
何もせずとも、明日もまた同じ日が来るんだと無条件に信じられていたあの頃。今では信じられないくらいの狭い世界で、だけどその世界で起こることがすべてで。無邪気に笑って、素直に泣いていた、あの頃。
それを懐かしんで戻りたいと思うくらいに、大人になってしまったんだな、私は。
子供の頃は、憧れて、なりたくて、なりきっていた。
何にでもなれると信じていた。
夢があった。
大人の今は、穢れて、錆びついて、壊れていった。
現実から逃げ出したくて仕方がない。
夢なんて幻になった。
温かな言葉なんて、冷たくなった心に、
もう響かない。
届くことなんてない。
あの陽に当たっていた時代は、
とっくに闇に変わってしまったから。
■テーマ:子供の頃は
子供の頃は
全て、自分が描いた理想的な人生だった。
幼い頃から、自分は周りと少し違かった。
歯車が合わなかった。
白くて、真っ白で、静かなキャンバスに描いた理想的な僕の人生図は、黒かった。
よく、夢がないと両親には言われていた。
子供の頃は理想的な人生を描いていただけだった。
でも、今は違う。
理想的な人生は叶うわけがない。
そう分かっていても、描いてしまう。
止められないんだ。
子供の頃と違って、結末が分かっていても、理想的な人生図をまだ求め続けてしまう。
子供の頃から変わらないな。僕は。
#11
子供の頃は
子供の頃はなんでも口に出していた。
嫌なことは嫌といいめんどくさいことはやりたくないといって自分がやりたいようにやっていた。
年をとるにつれてその行動はできなくなっていく
子供の頃はあっという間に終わると実感した。
子供のころは、自由だった。
責任がないから自由でいられて、
責任が取れないからこそ窮屈だった。
でも、大人になった今も、ちゃんと自由だ。
責任が取れるから自由で、
責任があるからこそ、窮屈。
『子供のころは』
#16
昨日の貴方のストーリー
バイクで事故したって載ってた
心配でどうしようもなくて
『大丈夫ですか、?』
なんて送っちゃって今もDMしてる
照れさすのが上手な貴方は
私の手をひいてくれたことも
1度もないけど
貴方のワードセンスが好きな私は
隣にいるいるときの笑顔が
絶えないの
貴方の癒しに私はなりたいよ
なれないなんてそんな悲しいこと
言わないでね
早く梅雨終わってほしい
貴方とまた散歩がしたい
長く長く隣にいときたいよ
#私と貴方
「ねえ、おはなすき?」
「うん!すきだよ!」
「そっかあ、じゃあこのおはなあげるね!」
「わあああ!きれいなおはなねえ、ほんとうにいいの?」
「いーよ!きみのためだもん」
優しく笑う顔立ちに思わず見惚れていたら
はっと目が覚めた
そこには、潤んだ瞳の貴女の顔
「私、夢の中で何か言ってたかしら…?」
「いや?君の可愛い寝顔に見惚れていたよ」
「変なこと言わないでっ」
恥ずかしくて、顔を背けると、貴女はふっと一つ笑う
「これいる?」
「なあに。これ」
「花束」
「良いの?これ」
夢のように呟く
「良いよ、君の為なら」
あの頃のように
優しい笑顔で
子供の頃は、ずっと貴方と一緒にいられると思ってた。
貴方と大人になっても一緒にいて、貴方と結婚できると思ってた。
でも、この世界はそれを許してくれなかった。
あたしと貴方は、結婚できない。
夫婦という肩書きは得られない。
なんて苦しい世界なんだろう。
『来世は幸せになろうね。』
子供の頃と言われる度
いつも思い出すのが夏なのは何故
子供の頃はわんぱくで勉強が嫌いで、外で遊んでるような子供でした。昔から周りに大人がたくさんいて、空気を読んだり、面白いことを言わないとという気持ちで知らず知らずにストレスを溜め込んでいた部分もあった気がします。
「子どもの頃は」
子どもの頃、私たちは見えない何かに守られていた。
当時私たちが住んでいた町は、都会へ出るための交通の便が良いと、ベッドタウンとして持て囃され賑わっていた。
町の真ん中には広い公園があり、その周りは樹木に囲まれ、花壇には季節ごとに花が植え替えられ、夏祭りの日には町じゅうの人々が集まった。
そんな公園の奥に大きな樫の木があった。
何人もの大人が両手を広げて並んでやっと一周できるくらい幹が太かった。
その樫の木の公園とは反対側の根元には、草書体で書かれた碑と、神様か仏様かそれとも観音様なのか子どもには区別のつかない御姿が彫られた石が置かれていた。
町の人々は何か気にかかることがあるとその場所を訪れた。
そこへ行くことは誰にも言わなくとも、お供えものや水で洗われた形跡を見て、自分以外の人もこの場所に来て手を合わせているのだと理解していた。
やがて時が経ち、子どもたちは巣立って行き、当時は新興住宅地だったその町は建物の老朽化と住人の高齢化に悩まされ、建物を工事して若い人に移り住んでもらえるよう対策をとった。
結果、公園の樫の木は大き過ぎて周りの家の日当たりが悪くなると切られてしまった。
碑と御姿の石も由来がわからないという理由でどこかへ持ち去られてしまった。
それ以来、その町は瞬く間に衰退していった。
事件や事故が増えて治安が悪いと移住者が来なくなった。予算が回らなくなり、福祉サービスがカットされ、景観は荒れていった。
かつてその町の住人だった私たちは、それぞれ今住んでいる場所で、故郷の町が隣町に吸収される形で合併されたことを知った。
町の名前すら残されなかった。
公園の大きな樫の木と草書体で書かれた碑と御姿の石。
子どもの頃、私たちは見えない何かに確かに守られていた。
「早く大人になりたいな〜。」
昔は今の現状に満足せずに、大人に憧れた。それなのに、今の俺は過去の俺が見たらどう思うだろうか。
〈〇〇小学校 卒業アルバム〉
そう大きく書かれた、分厚い本が目に入る。実家の倉庫の片付けをしている時だった。休憩がてら、アルバムを開く。
〈俺の将来の夢は、格好良い大人になる事です。〉
俺の将来の夢の欄には、そう書かれていた。抽象的すぎる夢に、顔が綻んだ。俺はなれたかな?
子供の頃は、自分こそが世界の主人公だった。そして、大人になったらもっとすごいことが待っている、そう信じていた。しかし、大人になって知った。昔憧れた大人は、存在しないのだと。大人はすごい、格好良いと目を輝かせていたあの頃にはもう戻れない。大人も社会も、薄汚いものだ。きっとその事を知った日から、俺もまた、薄汚い大人になっていったのだ。過去の俺を叱ってやりたい。抽象的な夢を抱く前に、もっと努力しろと。大人になってから頑張っても、もう遅いのだと。そして、教えてやりたい。お前が夢を見ているその日々が一番楽しいと。
あぁ、もう一度やり直したい。そんな馬鹿げた夢、叶うはずはない。ならばいっそ、これ以上汚くなる前に終わりたい。
足が自然と会社の屋上へと向かう。フェンスを越えると、そこには美しい景色があった。世界も上辺だけは綺麗なんだな。俺は少しの勇気と来世への期待を胸に、前へ歩く。
子供の頃は自分が世界の中心だった。大人になったら世界を回す歯車になった。歯車だとしても、俺が死んだら世界が悲しんでくれると期待してもいいじゃないか。