『愛情』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
会話の途中で突如訪れる静寂。そんななかでふと、この気持ちが「愛情」なんて綺麗で透明で揺らぎない感情ならどれ程よかったのだろうか、と考えてしまった。
普段行き交う生徒を見ることは有れど、こんなに真近で見たのは久々だ。話をしたのはもっと前だろう。卒業して数年でこんなにも輝きを失ってしまったのか、と彼らと話していると驚きに尽きない。
私も彼らのように輝いていた時は綺麗な「愛情」を抱けていたのだろうか。
そんな、人に話す事でもないようなことが溢れそうになった時、タイミングよく少年が手洗いから戻って来た。
「すいません、今戻りました」
「お、お帰り」
この子といると、なんとなく独白したくなる。一人で布団に包まれた時に自分同士で交わす会話みたいだ、なんて言ったらまた怪訝な表情をするのだろうか。
そんな疑問は喉の奥にしまい、作戦会議に移ることとした。
「愛情」
それは目には見えないものだ。触れることもできない。なのに与えることができる。地位も権力も身分も財力も、老いも若いも男も女も関係ない。
ただし限りがある。時間的な限り、質量的な限りのどちらも発生する。受け取ったかと思ったのに、いつの間にか消滅していることもある。また、此方から与えた割合が100だとしても、受け取り手からしたら20くらいにしか感じていない場合もある。必ずしも同量が取引されるとは限らない。またその逆も然り。ほんの軽い気持ちだったつもりが、相手には相当なインパクトだったりする時もある。そういう場合は高確率で犯罪に発展するケースになる。
よって僕は新たな法律を提案する。
その名も、『愛情罪』だ。そこから大きく、
愛情詐欺罪、愛情出し惜しみ罪、愛情過多罪、愛情悪用罪に分類し刑罰を決める。こうすれば、愛情から生じるすれ違いや縺れのトラブルを未然に防ぐことが出来る。よりよい穏やかな生活を守るために、是非ともご賛同願いたい。
「阿呆か」
「なんで!」
友人は吐き捨て、あろうことか僕の論文を後ろへ放り投げた。
「何がいけないと言うんだ。至極真っ当なことを書いてるじゃないか」
「モテない男の僻みにしか聞こえねーよ」
「なんだと」
「こんな下らんことを考えてる暇があったらな、女の1人でも作ってみろ」
「そんな、簡単に言ってくれるな!そんなことできたらとっくにやっている!」
「ほー。てことは、そのために何か努力したってことかよ」
「おうとも。髪の分け目を7:3から6:4にした。毎日深爪ギリギリまで爪を切っている。シャツを着る時は必ずアイロン掛けされたものにしている。始めてまだ最近だが、顎ヒゲの脱毛サロンに通い出した」
「……」
「どうだ」
フン。隙が無さすぎて声も出ないか。開いた口が塞がっておらんではないか。
「俺はよ、」
「む?」
「髪の毛オールバック。手の爪は3個くらい死んでる。シャツはヨレヨレ。ヒゲは見てのとーり、たくわえてる」
「僕と対極だな」
「なのに俺には彼女がいる。何故だが分かるか?」
「……知るか」
「見てくれだけじゃねーってことだよ。ま、あまりにも見た目が酷いのはどうかと思うがな」
友人はヘラヘラ笑いながら胸ポケットから煙草を取り出した。……図に乗りやがって。そんな言葉に騙されてたまるか。
「そういうもんなんだよ」
「どういうもんだと言うのだ」
「お前も言ってたろ?さっきの下らん文章の中で。愛情ってのは見えないものだ、触れることもできない」
灰皿、と言うから棚の中から取り出してやる。一応ここは禁煙だぞ。
「外見磨くのも大事だけどさ、見えないもんをいかにして相手に届けられるかを考えてみな。そしたら上手くいくんじゃねーか?」
「……たとえば」
「そりゃ自分で考えろ」
なんだ、それは。為になるようなことを言うのかと思ったら最後は自分次第ってオチか。愛情の届け方だと?そんなことやったことないのだから分かるわけなかろう。つくづく無理なことを言う男だ。
「ま、お前の場合はまず愛を伝えたくなるような相手をさがすことだ。無闇矢鱈に好きになるなんて間違ってるからな」
「まぁ、それはお前の言う通りだな」
焦って動くものでもない。つまりはそういうことか。今日始めて、納得できた気がする。
「まー元気出せって。年齢イコール彼女いない歴だろうが、万年童貞だろうが、ラブホの入り方知らなかろうが、俺はお前の友達やめねーからよ」
「言い過ぎだ馬鹿め!」
「だからさぁ、それは言い訳でしょう?」
大声ではないが、威圧的な言い方が本当にムカつく。なんなんだ、このおじさんは!
自分がいつも正しいと思っている、昭和の悪いところを引きずっているおじさんは嫌いだ。
言い訳ではなく、私には言い分がある。
第一に、もともとは彼の指示が遅い。その上ギリギリになって、原稿の差し替えを言ってきた。私にだって都合はあるのだ。その日は早めに帰らなければならなかったのに…。
慌てて対応した私の些細なミスを、彼は自分のことを棚に上げて、私を責める。
もう、言い返すのも面倒になってきた。
帰りの電車の中でも、私はそのことを反芻して、なんだかモヤモヤした。
このモヤモヤをどう処理したら良いのか。
駅前のスーパーで、いつもよりちょっと高めの肉と、有機野菜を買う。
「うんと美味しいものを作って食べてやる!」
料理を作る時は、楽しく。家族への愛情を込めて作るのが、私のルールだ。
食事ができた頃に、家族が帰って来た。
でも、昭和のおじさんの話はしない。せっかくの美味しい食事が台無しになるから。
モヤモヤした気持ちは、愛情たっぷりの食事と幸せな時間で晴らす!
まぁ、完全ではないとしても、少しだけでも心が晴れれば、明日からも大丈夫!
また、おじさんに何か言われても、軽くスルーして、私は私らしく生きるのだ。
愛情
愛情はものすごく大事だと心の中で思う
友達の愛情 家族の愛情 親戚の愛情 etc…
皆さんの愛情はなんですか?
愛情
ただただずっとそばに居たい。
別に何もしなくていいから。
愛情に見返りなどいらない。
忘れるまでは愛しています。
忘れるほどなら既に愛はありません。
愛情
──大人になれば『それ』は自ずから与えられるようになるという。
だから大人になれば、自ずから与える『それ』が湧き出でると思っていた。どうやら違ったらしい。
ある人は「求め続ける限り、与えられる日は来ない」という。またある人は「そもそも与えられて来なかった者に『それ』を他者に分かち与える余分は無い」という。
つまり、私がいまだ誰かに与えられないのは、いまだ『それ』の足るを知らないからか。
さて、大人になった今からでも、足るを知ることは出来るのだろうか?
そうして私は今日も『それ』の在処を探すのだった。
【 愛情 】
僕には人を愛せないと思ってた。
君に会って初めて、湧き上がる気持ちに気付けた。
寒空の下、木の根元に横たわっていた君。
体は冷たく硬かったけど、なぜか連れ帰らなきゃと
思って、背負って帰ったね。
何も話せず、動きもしない君に感じた気持ちは本物だよ。
ただ、時間とともに腐臭と虫を発する形になって、
僕らはお別れすることになったよね。
出会った木の下に君を葬ったけど、新しい縁もあった。
君が連れてきてくれたのかな。
君に似て、やはり冷たく硬い体をしている。
僕の胸は高鳴ったよ。
また、大切にしてあげるからね…。
彼は愛情を与えるだけだと思っていた。
愛情はそれだけだと。
諦めて許して堪えて。
彼がそれも愛情だと知ったとき彼は優しくなった。
だけど、無口になった。
「愛情」
意外と身近に潜んでいるものだ
靴がそろっているのも
近すぎるからこそ気づかない
毎日の美味そうなお弁当も
気付けないだけなのかもしれない
帰ってくれば部屋がきれいなのも
当たり前の日々の尊さに
私はイチゴを愛情込めて育てている。
私はアパートに住んでいて庭がないので、ベランダで育てている。
最初は育つのだが、イチゴがならなかったり、枯らしたりして大変だった。
でも水やりの頻度、日当たり風通しなどが分かってきたときくらいから、大きなイチゴを付けてくれるようになった。
今では見るだけで調子がわかるようになった
これを、愛と呼ばずしてなんと呼ぼう!
込めた愛情を返してくれたのだ、というほど私はロマンチストではない
多分、イチゴはいい感じの水といい感じの土、いい感じの日当たりで自分のしたいことをやっているだけなのだ。
私という存在を認識しているかすら怪しいものである
ならばイチゴのしたいことはなんだろうか
赤いイチゴという魅惑の果物を作り、他の存在に恵みを分け与える
それは実に慈悲深く、愛に溢れた行為だ
もしかしてイチゴは、私よりずっと愛情深い存在なのかもしれない
朝起きて台所に立つと
ぽてぽてとワンコがそばにきて何かくれるの?って右前足をあげる
そんな毎日が今考えるとたまらなく幸せだったなぁ
#66 愛情
可哀想で、哀しそうな
私が愛おしいんだよね
移動の為にワゴン車の後ろに乗ってると君が隣に乗ってきた。後ろに座った仲間となにか盛り上がってるみたいで、隣に座ったってのにずっと後ろ振り返ったままめっちゃ喋ってる。
いや別にね。そんなのなんとも思ってないよ。俺よりも話盛り上がるもん、趣味とか俺とは全然合わないし。隣に座ったのだってたまたま俺の隣と後ろがひとつ空いてたからで、ここ俺が座ってなかったら2人で座ったんじゃん。
いやもう、全然そんなの。
いつものことだし。
仕事にあいじょーは持ち込まないし!
「…なんで突然膝枕されてんの?」
俺がばたんと横倒れに倒れて君の膝に頭乗せてかたーく目を閉じて寝たふりしたら、話を一旦中断した仲間が呆れたように言うのが聞こえる。
君は知らねーって笑いながら、仲間からは見えないように俺の頭を撫でた。
仕事に愛情は持ち込まない。
でもね。
たまにはね。
▼愛情
母からもらえない愛情が憎しみに変わる
それでも私が色んな人に『優しいね』と言われるのは、亡き父の愛情と学生時代の先生達の愛情があるから。今の私がいる。
母からもらえなかった愛情で、自分口下手に。
気持ちを素直に伝える事ができなくて
料理とお菓子を作って愛情表現。
彼を想い続けて多分一年が経とうとしている。
その大半が片想いだったけれど。
そろそろ恋は終わりかな?
彼と愛を育めているかな?
想いはもう愛になれたかな?
#愛情
胸の中に秘めておけない愛情が
君に伝わってしまわないだろうかと
僕はいつも恐れている
触れられないその手に、ひとつ、ふたつと、
本当は受け取ってもらいたいのに
拒まれてしまったらと思うと踏み出せない
(愛情)
【愛情】
もう永遠に君とは会えない
その事実を受け入れられないまま、
時間だけが過ぎていく
あれから随分経ったのに、僕が目にする
SNSのタイムラインは今も賑やかで
君が愛した人たちと君を愛する人たちが
今日も楽しい想い出を語っている
君からの愛情は今も誰かに届いていて
君への愛情も誰かが届け続けている
君からの言葉と君への言葉が交差するのを
僕は幸せな気持ちで眺めている
時々、すきま風が吹き込んでくるように
君がいない寂しさを感じてしまうけど
そんなときも君と君を愛する人たちの
愛情あるエピソードの数々に救われている
ふと気がつくと僕は、夕方になると
君が好きだった歌を口ずさんでいる
僕と君との想い出の中にある大切な歌
おかげで僕は今日もまた
カレーライスが食べたくて仕方がない
誰にでも忘れられないものはたくさんある。特に母親からの愛情は一生忘れない。それが例え連続殺人犯でも、総理大臣でも。ONE PIECEでガープが言っていただろう「愛ある拳は防ぐすべなし」とだからどんな人でも愛には勝てないんだろうと僕は思う。
[愛情]#6
【愛情】
私は元から親というものがいなくて、施設で育った。施設の大人は他の子には優しかったけれど、私には厳しくて悲しかった。
学校の参観日の日に他の子達はお母さんとお父さんが来ていて皆、楽しそうに笑って「――ちゃんのお母さん可愛いね!」とかそういう何気ない会話を出来るのがとても羨ましかった。
私は親がいないせいか、見窄らしい服を着ていたからか分からないけどクラスの人達に虐められて苦しくなって先生に相談したらどうにかしてくれるかもしれない。そんな希望を胸に職員室へと向かった。
デスクに向かっていた担任の先生に声をかけ相談すると面倒くさそうに「君に至らないところがあるから虐められるんじゃないのか?」と言われて何で、助けてくれないの?全部私が悪いの?と、目の前が真っ暗になった。
そんな私も高校に入ってから仲のいい男の子がいて、私は初めて恋をした。それからは楽しかった。2人で色んなところに行って美味しいものを食べたりもして、自分がこんなに幸せでもいいのかと心配になるくらい今まで真っ暗だった私の世界が一気に輝いていた。
私たちが大学を卒業して暫く経ったある日彼が「愛してるよ。これからはずっと一緒だ。」と、言って抱き締めてくれて私はとても嬉しくて直ぐに抱き締め返して私達は婚約をした。
――それなのに、もうすぐ結婚式という日に彼は車に轢かれそうになった見ず知らずの子供を庇って死んでしまった。
子供が助かってよかったじゃんと思えればよかったけれどその時の私はそんな事を考えられなくて毎日毎日、泣いて泣いて。
食べるのも嫌になってこのまま死んだら彼に会えるかも、と何度も思っていた。そんな時貴方に出会った。
貴方は夜中の歩道橋で上に立って道路を見つめていた私に優しく声をかけて家に招いてくれて、暖かいご飯を作ってくれて同情心だと思ったけどその時の私は何処か安心してしまっていた。そんな私に貴方は一緒に暮らさないか?と言ってくれて最初は戸惑ったけれど悪いことはないかもと思って「はい!」と返事をして一緒に暮らすことになった。毎日毎日、暖かいご飯を作ってくれて。とても嬉しかった。
過ごしていく内に前までは死にたい程感じていた悲しみが貴方のおかげで埋まっていく感じがして、私はいつの間にか貴方に惹かれていった。
薄々、気付いてはいたけれどそれを自覚したら何かが変わってしまう気がして怖かったの。だから貴方が「愛してる」と告白してくれた時、彼が死んでしまった時の恐怖を思い出してしまってとても嬉しかったのに断ってしまった。そんな私に貴方は悲しそうに笑って「いいんだよ。これから君に好いてもらえるように俺が頑張るから。」と言ってくれた。
…貴方は私をずっと離さないでいてくれる。どうしても気になって「どうして見ず知らずの私にこんなに優しくしてくれたり好意を持ってくれたの?」と聞いた時。
「あの日、歩道橋にいた君を見た時に今君に話しかけなかったら一生後悔すると思った。最初はそれだけだったんだけど、一緒に過ごしていくうちに道端に咲いてる花をわざわざ避けて通ったり、街を歩くと色んな人を助けている君を見ているうちにずっと側にいてほしいと、心から感じたからだよ。」
そう言ってくれた貴方に私は、どうせ貴方も彼と同じように私を置いて逝ってしまうのでしょう?と考えてしまっていた。普通の人だったらきっともうこんな私に呆れて離れていくだろう
なのに貴方は愛情に応えない私に呆れることも無く、私に向けるにはもったいないくらいの愛情をくれた。
そして弱虫な私はやっと貴方に私の気持ちを伝えた時にはとても嬉しそうに抱き締めてくれて私はそんな貴方を抱き締め返してとても素敵な夜を過ごしましたね。
それから貴方と付き合い始めて暫くした時、綺麗な夜景をバックにプロポーズをしてくれて私はそれに泣きながら返事をしたことを今でも覚えています。
貴方との結婚式が終わって、何度も愛を確かめあって、子供にも恵まれて、
私は、今とても幸せです。
こんなしょうがない私を愛してくれて有難う。
最期の相手が貴方で良かった。
そう思いを馳せながら私はもう二度と空くことはないであろう目を閉じた。