『踊るように』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
踊るように
将来の夢という題名の作文は周りに合わせて、お花屋さん、パティシエ、先生…。適当に夢を語って、周りの大人の反応を気にしていた。大人が求めている答えを知っていた、いや知りすぎていた。小さい頃から、夢などなかった。いや、そう自分に言い聞かせていた。
書くのが怖かった、何か言われるのが怖かった。心の奥底で強く音が鳴りひびいていた。その音に気づかないふりをした。ただ、あのとき本当は願っていたのかもしれない、ダンサーになりたいと。ただあのとき書きたくてたまらなかったのかもしれない、踊りたいと。踊るように書きたいと。
“踊るように”
ジュウジュウという音に合わせて踊るように、フライパンの上で薄いベーコンが跳ねる。時刻は午前10時。朝ご飯を作り始めるには少し遅い時間だけれど、日付を跨いでからしばらくして帰ってきた不眠気味の同居人が起きてくるには少し早い時間だ。
BGMとして付けたテレビからは、気象予報士の抜けるような青空が広がり、絶好の洗濯日和ですとこの時間帯に告げるには少し遅いようなコメントが聞こえてきた。もしかしたら三連休初日の今日はどの家庭ものんびり過ごしているのかもしれない。カリカリのベーコンを2枚ずつお揃いの皿に乗せて、残った油の上に卵を落とす。ジュウっと少しだけ油が跳ねて、白身が歪な形になる。
ゆで卵の黄身の具合には口うるさい同居人は、なぜか目玉焼きには頓着がなく、焦げない程度に火を落とし隣のコンロに火を付ける。小さい鍋には野菜のたっぷり入ったミネストローネが入っている。
チラチラと目玉焼きを確認しつつ、テーブルのセッティングをしているうちに洗面所から水が流れる音が聞こえてきた。どうやらやっと同居人も目を覚ましたらしい。テレビをちらっとのぞくと、最新の映画情報が流れていた。
今日はゆっくり家で映画を見るのも悪くないな。しっかりと火が通った目玉焼きをベーコンの上に落とす。もう一つ卵を落としたところで思いの外しゃっきり目を覚ました様子の同居人が顔を出した。
ちょうど、今話題のホラー映画の予告映像が流れたせいかちょっとびっくりしている同居人に少しだけ笑いつつおはようと声をかける。おはよう、って時間じゃないけどね。同居人はちょっとだけバツが悪そうに口を尖らせてそう言った。
もうすぐできるから、ちょっと待っててとバケットの入った皿を渡す。口を尖らせたままの同居人は子供扱いするなと言いながらも大人しく皿を持ってテーブルの方へ歩いていった。そのままいつも通りのイスに座って仕事用の端末を覗いている様だ。やっと取れた休暇だというのにワーカホリックも大変だ。
目玉焼きをテーブルに置きがてら、仕事も程々にねと寝癖のついたままの頭を軽く小突くとすぐ終わる!と拗ねた様な声が聞こえた。
【踊るように】
君の文面はいつも優しくて踊っているように楽しそうだった
でも君の本音を一度だって聞いたことがない
踊るようにはしゃぐ君も優しい君も本当の君なのだろう
でも言葉だけはどこか嘘をついてるような感じで
君の言う「大丈夫」はいつも信用できなかったんだ
君の「大丈夫」はいつも弱々しかったからね
詩(お題)
『踊るように』
踊るように…と言いながら
ステップ踏んで肩を揺らして
歌うように…と言いながら
大声だして夜空に叫ぶ
人は卑屈で謙虚なのだ
勇気というチケットはいつも
○○のように…なのだ
愛するように、好きなように
あなたの前では、初恋のように
踊るように、歌うように
あなたの前では、道化のように
心臓がダンス、ハートがジャンプ
あなたの前では、
「ように」じゃいられない
踊るように
跳ねて
飛んで
回って
笑うの
あぁ幸せだった、と
_踊るように
私の仕事はデスクワーク。
各ブースに隔てられた静かな空間、単純作業だし味気がないから、口パクで歌いながら踊るように左から右へと手を運ばせる。
傍から見たらノリノリで横揺れしてる奴だろう。
自分でもトモコレのウキウキ状態くらい揺れていると思う。無心で仕事をする時もあるけど、揺れてる時のが何だかんだ楽しい。勤務時間中ほとんど座ってるけど体を動かしてるから姿勢もきつくないし。
ダンスって楽しいから、踊るように仕事をするのも楽しいんだな。
わかってる事が
どうしてもできない
覚えてきた日常に囚われて
手を伸ばせない
誰も助けてくれない
自分が決める自分の人生
…
言い訳していないか
流されていないか
怒りを忘れていないか
弱いから立ち向かえる
弱いから優しくなれる
誰のものでも
誰のためでもない
掛け替えの無い僕の人生
風の坂道 小田和正
踊るように
明かりの灯らない、
蒼い月が照らす部屋で、
独り、踊るように、
ステップを踏む貴方。
まるで貴族の様な、
優美で華麗な身の熟しで、
誰もいない虚空を見詰めて、
そっと手を伸ばし、
優しく微笑む貴方…。
僅かに潤んだ、貴方の瞳には、
一体、何方が、
映っているのでしょう?
窓から差し込む月明かりが、
貴方の影を作り出します。
貴方は、とても楽しげに、
踊るように、ステップを踏んでいるのに、
貴方の影は、酷く悲しげに、
何方かを求めて、彷徨います。
大切な人と、踊るように。
独りきりの貴方は、
月明かりが照らす、
静かな部屋の中で、
夢に揺蕩っていました。
挙動不審をまるで踊っているかのように見せるのが私の特技です。
私はこれでブロードウェイに立ちました。
本当です。
【踊るように】
まるで踊るように歌を歌う子がいるのです。
盛り上がったり、悲しんだり、
歌から動きが感じられました。
とても楽しそうに歌う子です。
その歌い方はその子自身を表しているようでした。
ーとある後輩の印象ー
合わせて手足をくり返す動かす意味が理由が
わからないの
楽しいときに無秩序に跳ねたいの
悲しいときはぐるぐる回るの
#踊るように
会議は踊る、されど進まず
ナポレオン戦争後のウィーン会議を揶揄してつくられた言葉。私はてっきり、話がコロコロ変わって何も決まらないというニュアンスだと思っていたが、本当にダンスばっかりしていたかららしい。
ダンスしながらだと、悪いことなんか言えなそうだ。実際、めっちゃ踊ってはいたけどけっこう戦後の平和に貢献したらしい。
同じリズムで、足を揃えてステップを踏めば、意見も揃いそうだ。レコードのグルーヴ感に酔って、全てYESだと首を振れば、縦ノリのフロアの完成だ。
会議は踊るように進む。
さあ、君も一緒に。
踊るように
足取りひとつ、愛の対象であった。
時折の無視も、ぼけっとしていた、と頭を下げて謝る姿も、私だけに向いた好意の具現化だった。
どうやら双方の生活は暖かいらしい。
ありがたいことに毎日は癒しに満ちていて、不思議と猫背にならず過ごしている。
私を笑わせることに命をかけるあなたの気概は、私の生活をぐんぐんと幸福に吊り上げていく。
おそらくこの桃源郷は守られ続けるだろう。
なぜなら、日々前を向く怖さが薄れていっているから。
そして何よりお互いの足取りが、以前は死なないために踏みしめていた一歩一歩であったのに対し、今ではステップを踏むように軽やかだから。
昔より随分大らかになったあなたが口を開く。
「生きているんだから、細かいことはいいんだよ」
私はあなたの目を見つめて答える。
「おっしゃる通りだよ」
踊るように
世界のルールの中に自分ルールを内包して守ることで一定数偉くなる
それが幸せだった
ルールの中で踊ることができるようになってからは
自由と限界と境目を覚えた
それでも私が踊れば影も踊った
花弁が最後の生を全うするかのように
踊るように煌めいて落ちていった
その絨毯の残る橋は絶対に崩れない気がする
・踊るように
全く手が進まん。
紙の上をダンスフロアに見立ててペンを踊らせろ?冗談キツいぜ。
どんだけアガる曲を流してもペンは一切ノってくれないし、それどころか代わりに自分が踊ってたわ。
一体誰がこんなこと言ったんだよ。情報に踊らされただけじゃねーか。
って、ここで上手いこと言っても意味ないの。紙に上手いこと書いて欲しいのよ。
わかる?わかんないか。わかってたらもっとスムーズに書けてるわな。
あーあ。1度でいいから勝手に手が動いて執筆してくれないかなぁ。
→『彼らの時間』2 〜時よ、進め。〜
(改稿 2024.9.8)
踊るように手を動かしたワタヌキ昴晴は、階段の手摺を掴んだ。階段の踊り場で、彼の繊細で美しい手の動きに目を奪われた。
何とか友だちになりたくて、次の授業中に声を掛けた。国語だった。なぜだか心臓が跳ね上がるように速く打った。
「時を告げるって、なんか大層な言葉だよね」
急に話しかけられた彼は驚いた顔で何度も小さく頷いた。
その日の夜、なかなか寝付けず、「時よ、進め」と朝を待った。新しい友だちと早く会いたかった。それが友情とは違う、焦がれるという感情だと知るのは、もっと先の話だ。
あれから十年。偶然の再会を経て、ワタヌキと一緒に暮らしている。
「おかえり」
「ただいま。あれ? もしかして夕食作ってくれたの?」
「まぁね」
「ヒロトくんは優しいね」
ことある事に、ワタヌキは俺を優しいと言う。褒められている気がせず、彼を遠くに感じることがあるのは、何故だろう?
スーツ姿のワタヌキがネクタイに指をかけた。彼の美しい手が神経質にネクタイを解く。とても絵画的だ。何度も見ているのに、つい目で追ってしまう。
「ワタヌキ、生姜焼き、好きだろ?」
食べたかったやつだーと嬉しそうな声を残してワタヌキは着替えに行った。
ワタヌキは名前で呼ばれることを嫌がる。コウセイと呼びかけても返事をしない。
そう言った垣間見える問題を、いつか二人で乗り切りたい。
そしてずっと一緒に暮らすのだ。笑ったり、喧嘩したり、コウセイと手を取り合って。
二人の時間が今よりもっと絆を強くしますように。「二人の時よ、進め」と生姜焼きを盛り付けながら、呟いてみた。
テーマ; 踊るように
踊るように
剣舞と見紛うほど無駄の無い動き。
思わず後退りしてしまいそうなほど強い圧と覇気。
その姿に強く憧れた。格好良い。素直にそう思った。
いつかああなりたいって、それでいて、ただ。
凄く悔しかった。
ただただ暑い夏だと、早く過ぎて欲しいって思うけど、
楽しい日があると、夏終わって欲しくないって思う。
〇踊るように
入学式当日。学校が目前の通学路にある桜並木の坂道で、俺は馬鹿みたいに口を開けて上を見ながら歩いていた。ひらひら舞い落ちる桜が綺麗で、こんな春の良き日に入学式を迎えられて良かった!と心から思った。好きな季節は春。桜も好き。憧れだった高校に入学でき、待ちに待った入学式。春満開のこの光景は忘れたくないと、目に焼き付けたくて桜を眺めていた。
「あっ。」
と、後ろから声が聞こえ、なんだろと思ったその瞬間。身体前面に鈍い痛み。思わぬ衝撃には頑丈が取り柄の俺も思わず声を漏らしてしまう。
「ィ"〜〜…………」
額を抑えてしゃがみこむ。前方不注意で校門の柱に激突。春の陽気に浮かれてこんな事になるとは、恥ずかしい限りである。
「……大丈夫?」
控えめで冷たげな、けれどもこちらを心配してくれていると分かる優しさが伝わる声。頭上から聞こえるその声は、先程「あっ。」と聞こえた声と同じであった。
えっ、今の見られてた?恥ず〜……。と思いつつ、心配してくれてるんだからなんか言わなきゃな、と立ち上がって後ろを向いた。
運命ってあるんだ、って思った。この15年間生きてきて、ここまで心臓が跳ね上がる事は初めてだった。
黒艶の髪。透き通って触ると冷たそうな程白い肌。こちらを心配するように見つめる大きな猫目。見れば見るほど芸術品のように美しかった。
「だっ……ア、あひヘ……」
聞くも無惨な言葉とも取れない無意味な発音であった。動揺し、言おうと思った言葉が全て吹き飛んだ結果漏れ出た音だった。
目の前の女の子は心配そうにしながらも、眉を顰めて警戒するように俺を見つめた。それはそうである。目の前の男が上を見ながら歩いて前方不注意でぶつかり、心配で声をかけたら意味のわからない言葉を出してジロジロ見てくるのだから。
咄嗟に第一印象!という言葉が脳内を走り、なんとか言葉を口から押し出した。
「大丈夫です!俺、頑丈なのが取り柄なんで!」
「あ……そう、なんだ。良かった。気を付けてね。」
女の子はそれだけ言って苦笑いを浮かべ、そそくさと俺の横を通り抜けて校門をくぐって学校の敷地内へ入って行った。
第一印象最悪だった。このままではマズい。あの女の子に不審人物として覚えられたくないし、今巻き返さないと今後近付けるチャンスなんて無いかもしれない。
今ここで、引き止めなければならない。
俺は続いて校門をくぐり、女の子の背中に向けて「あの!!!」とここ一番の声量を出した。
びく、と驚いた顔で振り向いた女の子に、俺はすぐさま駆け寄る。しかし引き止めねば、と思って声を出しただけで、引き止めた理由なんて何も無かった。強いて言えば、挽回させてくださいだった。
どうしよ、と考えを巡らせてる間にも、女の子の顔は曇っていく。何か、何かないかと脳内の引き出しをガッタンバッタン開けまくっていると、女の子のネクタイの色が自分のネクタイの色と違う事に気付いた。つまり、上級生である。
「あ、あのっ、先輩、っスよね?あの、俺、教室どこか分かんなくて……」
「……あ、新入生だったんだ。」
「そっス!その〜、良ければ案内とかしてもらえないかな〜、なんて……あ、あは……」
我ながら雑すぎる引き止め方である。でももうなりふり構っていられなかった。俺はこの人と絶対に関係を繋ぎたかった。なんでもいいから、こっちを向いて欲しかった。
先輩はちょっと困った顔をして、でも先程よりかは警戒を解いたような顔だ。少しの沈黙の後、先輩は俺と目を合わせて頷いた。
「分かった。案内するね。」
「え!あ、ありがとうございます!!!」
思わず嬉しさ全開の声で大声を出してしまった。先輩はそれに驚いて、「声大きいね……静かにね。」と少し笑って言ってくれた。
その笑顔が可愛くて、俺は絶対にこの人の彼氏になりたいと思った。人生で最初で最後の一目惚れだった。恋に落ちるとは、こういうことを言うんだなと。思いがけない所に、とんでもない落とし穴があると身をもって体験した。
「俺、乾って言います!よろしくお願いします!」
「じ、自己紹介?えっと……櫻根です。」
先輩は困惑しつつも、自己紹介をしてくれた。先程からお人好しが溢れている。冷たそうな見た目なのに、優しくてお人好しだなんて。もっと知りたい。先輩はどんな人なのか。
少なくとも、知り合いにはなれただろうか。第一印象は悪めだけど、これから挽回していけばいいのだ。
高校生活一日目にして、一世一代の恋に落ちてしまったのだ。
俺はルンルンで先輩の後を着いて行く。
これが俺と先輩の出会いである。
恋という言葉の意味を知ったのは、その瞳を通して揺れ動く白のリボンを羨ましいと思ってしまったから。
その白色は確かにいつも私の隣にあった。
普段はボーイッシュでその髪を快適のために纏めていただけの後頭部は、いつのまにか白に侵されていた。
彼と私とあの子、彼はこの3人のグループが楽しいと言った。
彼女もずっと3人でいたいと言った。
苦だったのは私だけ。
貴方が好きだと言ったから綺麗に伸ばした黒髪、馬鹿みたい。
貴方が好きなのは黒髪じゃなくて黒に映える白だったのに。
1人俯く私の黒髪とは反対に、大好きな声に導かれ踊る白色を捉えた。