『雨に佇む』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
俺は間違っていたらしい。
大雨の中を傘もささずに歩き回った挙げ句、静かに佇んだまま泣く姿はとても弱々しい。
あんなに悪口や嫌がらせを受けても笑っていて、平気なふりをするでもなく興味関心なんてないといわんばかりの態度で普段通りに接することをやめなかった。なのに、なぜ彼女は泣いているんだ。
彼女は決して善人ではない。真面目な人間を演じることで善人にみえるようにしていたのだ。それだけで敵も味方もいないつまらない人間であろうとする。ただその目にはギラギラと静かに煮えたぎる感情が見え隠れしていて、とても面白い。
いつからかその姿を目で追うようになった。堂々と善人の皮を被る強かさに惹かれた。
興冷めだ。がっかりした。
急速に萎んでいく恋心に吐き気がする。せっかく気にかけてやったのに期待はずれもいい加減にしてほしい。
俺はいつだって味方でいてやったのに、礼もなければ挨拶すらまともにしてこないのだ。元からそういうやつだったっけか。どうでもいい。ああいうのはタイプじゃないし、むしろ大嫌いな部類だ。
「メンヘラとかむり」
手に持っていたペンケースを校庭にいる女にむかって投げつけた。肩にあたって地面に落ちて泥だらけになったものを拾い上げた女が俺を睨みあげてくる。
校舎の2階にいる俺と泥だらけの校庭に佇む女。とうていつり合うはずもない存在を見下ろして嗤った。そうしたら人が集まってきたからみんなで嗤った。
なんて無駄な時間だったんだろう。俺にふさわしい女なら他にいくらでもいる。
それからひと月後、あの女は死んだ。
【題:雨に佇む】
台風が上空に居る中、1人家を出ていった君を僕は
どんな感情で待つのが正解だろうか。
浮気を疑われたとか、浮気をされたとか、お金にだらしないとか、そんな事が理由で喧嘩をしたんじゃない。
ただ、いつもの、普段から喋ってる僕の口癖が、気に食わなかったんだろう。
「いいよ。」
君が良いならそれでいいよ。
君が好きだと言うのなら、それがいいよ。
お米じゃなくて、たまには魚でいいよ。
僕が調理するから、君は座ってていいよ。
そう言うと彼女はいつも、
「私がやりたいからいいの。」と言った。
だがしかし、ふとした僕の口癖が、遂に彼女を傷つけたらしい。
「君が嫌なら、もういいよ。」
彼女の顔から感情が消え、表情が消えた。
諦めたような、酷く傷ついたような顔はせずに、ただ、無感情だった。
そこからの展開はとても早くて、台風だと言うのに傘なんか持たず、よりによってサンダルで駆け出して行った。
どうせ君は、いつものコンビニで迎えを雨の中佇みながら待っているのだろうに。
「ごめんね。僕が、悪かったよ。」
「私貴方に折れて欲しいわけじゃないの。けど、 」
「けど、?」
「貴方と対等に在りたかった。」
少し拍子抜けをしてしまった。僕は先程の言葉で彼女が傷ついてるものだと感じていたからだ。
「さっきの、嫌ならもういいよ、に怒ってるわけじゃないの、?」
すると今度は彼女が鳩が豆鉄砲を食らったような顔を一瞬して笑いだしたのだ。ひとしきり笑った後ようやく目が合って、彼女は微笑んだ。
「そうじゃないの、私貴方の事部下だとか下僕だとか、そんなふうに周りから見えてそうで嫌だったのよ。貴方の一つ一つの行動にはちゃんと愛があったし私もそれを理解してた。 けどね、知らない人からすればそれは恋人と言うより主人と召使いのような関係なのよ。 それがどうしても、嫌なの。今でも。」
君の心境を聞けた時、僕はどれだけ嬉しかったか、君に尽くしてばかりは負担をかける事も、新しく覚えておこう。
「じゃあこれからは、一緒にやろうって誘うよ。」
すると彼女は雨を晴らせるかのような笑顔で笑った。
「うん。絶対ね、約束だよ。」
仲直りをして、彼女の為にちょうど切らしていた絆創膏と傘を買って、君の靴擦れを帰るまでにどうにかしようと思うよ。
やっぱりサンダルは片付けておくべきだったね。
そして僕らは、雨の中ひとつの傘を買って帰路についた。
私は雨が嫌いです。
屋根や地面に落ちた時の音が私にとっては耳障りだから。
でも、雨上がりは大好きです。
雨上がりの草木の匂いや、空の色が明るくなる瞬間は私にとっては美しく感じます。
だから、雨が降ったら少し立ち止まれる場所を探して、雨が上がるのを待つんです。
晴れになる瞬間を待つ時間は、どんな日でも楽しいと思うから。
#雨に佇む
それは人が作った石と言われている
誰もが人間らしい生活のできない時代に生まれても
立って、生きて、眠るのはその石の上とされている
ずさんに取り決められた持ち回りのように
いつかは海底にあった死の息吹さえ
やがて漠とした星々の間に逃れ去っていく
石は飲み込まれ、咀嚼され、吐き出される無限の輪を巡り
硬い硬い核への信仰を拾い集めている
これは強力な嘘なのだ
引力から成り立っている存在の脆さが
石の心地好い影を愛したのだ
含有された海が泣くとき
ぼくはその優しさのために泣く
閉じ込められたものが
閉じ込めたものを赦すように
永く濡れそぼつ星でぼくは
足元をみつめている
#雨に佇む
傘をさせば意味がない
雨が降ったら、立ち止まってしまう。
すると、あの話を思い出す。
――
「雨の日だけね、泣いてもいいんだよ」
彼はそう言った。
「何でなの」と聞いてみる。
「だって、雨が涙を隠してくれるでしょう?」
ふーん。
なんで隠さなくっちゃいけないのか分からなかった。
ザーッと雨の音が聞こえる。
そういえば、傘をさしてたはずなのに彼の顔にはツーっと水が流れていたなぁ。
いつの間にか私も彼と同じように水が流れていた。
雨に佇む
突然雨が降ってきた
雨合羽なんて持ってきていない私は
コンビニで雨宿りすることにした
雨は寂しい気持ちになるけど
人といればなんてこと無い
早く帰りたいなあ
なんて思いながら厚い雲を見た
雨の中佇んでいたらビチャビチャになった。
✾
学校が終わった時に急に雨が降り始めた。
折畳み傘を常備していた僕はリュックから傘を取り出し一人で帰っていた。
雨の音を聞きながら時々すれ違う近所の人に挨拶をしていた。
暫く歩いていると誰からか電話が鳴った。
確認するとみっつ下の妹からだった。
いつも通り、なにかの頼み事だろうと思い切ろうとしたが何故か今日はそんな気がしなかった。
頭の中で嫌な予感が走り、直ぐ様電話に出た。
「どうした?」
電話の向こうで妹が泣く声が微かに聞こえた。
「落ち着いて?何があったか話して」
「おか...さんが、事故....にあって...意識不明の重体で」
その瞬間手から傘が滑り落ちた。
「そう...か、直ぐ行く待ってろ」
「うん」
妹との会話が終わると電話を切った。
其の場にしゃがみこんだ。
雨とともに自分の頬からは涙が溢れ出ていた。
抑えようと何度も、何度も、自分の涙を拭き続けた。
けれど、涙が止まることはなかった。
# 106
雨に佇む
雨に佇み、暫しの憩い。
他人の家の軒先き借りて雨宿り。
今どきは無いかな。
暫しの雨宿り。暫しの憩い。
雨ではなく、お月さまのお話し。
今宵は朧月夜。お月さまに癒されました。
持って行き場のないモヤモヤを、月夜の散歩が、気分を変えてくれました。
お月さまに感謝!
#67【雨に佇む】
外に出られない。
突然のどしゃ降りに
思わず目を見開く。
駐車した場所が遠い。
楽器が濡れてしまう。
お天気アプリで予報を確認するが
しばらく止みそうにない。
詰んだ。
完全に詰んだ。
どうにもならない空を見上げて
スーッと息を吸う。
よし。取り敢えず待機!
〔あれ、傘忘れたの?〕
私がそう声を掛けたのは、同じクラスの女子生徒だ。
彼女は、学年でも評判の良い優等生で、優しい性格の持ち主である。私も、休み時間を利用して、よく勉強を教えてもらっている。
毎年皆勤賞を取っていて、真面目で忘れ物をしているのも今迄見た事が無い彼女が、強い雨が降る校庭を玄関から
じっと見つめて、困った顔をしていたから、そんな言葉を掛けてみた。
「そうなの。今日は、天気予報で晴れって言っていたものだから、持ってきていないの。それに、予備の傘も持っていなくて。雨が止む迄待とうかと思っていたのだけれど中々止みそうになくて。」
彼女は、落ち込んだ様子でそう言った。
確かに、天気予報は晴れの印が付いていた。
だが、今日は夕立ちの可能性があるからとも言っていた。
彼女は、夕立ちの可能性を知らなかったのだろう。
だから傘を忘れた。と、言うより持ってこなかった。
の方が正しいか。私は一人で納得していた。
〔あのさ、もし良かったら、なんだけと、私の傘使って。
私の家近いから、傘が無くても多分どうにかなるし。〕
私は持っていた傘を、彼女に差し出しながら言った。
彼女は、
「でも、近くても濡れちゃうでしょう?
きっと、もう少ししたら止むから、私は大丈夫よ。」
と、眉を下げて戸惑った顔をしながらそう言った。
私は、
〔でも、もう少しって言っても何時止むかもわからないし、もしかしたら夜ぐらい迄ずっと降るかも知れないよ?
そうしたら、委員会の書類もあるんでしょ?〕
〔宿題も有るんだしさ。これで寝坊とかしたりして、
皆勤賞逃したら勿体ないって言うか、私の罪悪感が凄い。
私、宿題が有るだけだし、もう既に皆勤賞取れないし。〕
つらつらと、彼女に色々と傘を渡す理由を述べる。
それでも、まだ迷っている彼女に、
〔それにさ、此処まで言ってお断り喰らった方が、
すげーダサい。めっちゃカッコつけてるもん。
だからって言うのも変だけど、
受け取って欲しいかな。お願い。〕
そう両手を合わせてお願いすると、
彼女は参った様に、
「うん、分かった。ありがとう。」
そう言って、笑ってくれた。
私は彼女に傘を差し出して、受け取って貰った。
彼女は申し訳なさそうに少し笑みを浮かべながら、
「ありがとう。また明日ね。」
と言って、手を振って帰って行く。
その時に、私は凄く場違いな事を考えてしまった。
彼女の、困った笑顔が、とても可愛い。
雨の中に去って行く彼女の、後姿が、とても美しい。
私は、強い雨の降る校庭に、彼女の事を考えて
十数秒佇んでしまった。
次の日、体調を崩さなかったのは奇跡だと思う。
雨は好きだ
子供の頃は雨が降ると
長靴を履いて外に飛び出し
大きな水たまりに足を突っ込んだ
今は
雨が降っても
小さい頃のように出来ない
いつから出来なくなったのだろう
そんな事を思って
雨の中を佇んでいた
でも雨は好きだ
雨に佇む
真っ直ぐに。いつも真っ直ぐに伸びていた背筋は今、萎びた草のように曲がり。俯いた顔はきっと、普段の凛とした貴方の面影もないくらいに悲壮を映しているのでしょう。
そうして幽鬼のような足取りで私の前までやって来る。
3年前からずっと変わらない。否、段々と貴方は此方側に近付いている。まるでそれが唯一の希望のように。
嗚呼。もし、まだ私に身体が残っていたならば。もし、貴方と言葉を交わせたのならば。貴方を止めることが出来たのかもしれない。別の希望を示せたのかもしれない。
けれどもそれは叶わない。
死者の私に許されているのは、ただひとつ。
傘もささずやって来る貴方を迎え、悲嘆に暮れるその姿を見ていること。それだけ。
雨に佇む
多分、中2の頃だったと思う…下校中に、思いがけない夕立にあった。慌てて近くのバス停の屋根に逃げ込んだ…すると、既に先客が居て、一つ下の後輩の女子だった…何となく顔を知っている程度で、お互い小さく頭を下げて、何となく空を見上げていた…何か話し掛けたほうがいいかな、と思いつつ、特に話題もない中、何とも云えない空気の儘、雨宿りをして…
雨に佇む
雨は、記憶を取り戻してくれるのだ。
人は雨に佇みながら涙を流すものであって
簡単に泣くものではなく
それは、亡くなるまでに取っておきたい
いつかその日が来るのであれば
人は、きっと亡くなった後も幸せに泣くのであろう。
『雨に佇む』
ざあ、ざあと雨が降りしきる。予報外れの雨で、同じクラスメイトは非難の声を上げる。
傘持ってきてないよー、とか、電車止まっちゃってる。そんな喧騒の中、俺はただ校門で灰色の空を見ていた。傘も持ってないし、帰れそうにない。
まだまだ止む気配は無さそうだ。しょうがないし、俺は教室に戻ることしよう。特にやる事もないし、自習でもしているか。
ーーと、ついさっきまで思っていたのに、今はどうだ。
彼女からひとつの傘、しかも折り畳み傘に2人で入ってバスを待っている。
雨はひどいし、しかも折り畳みだから体がより近くなる。
俺の体は少しはみ出るから、制服は思いきり濡れるし、
挙句の果てにバスは雨の影響で遅れている。
勘弁してくれ、そう思うのと同時に。
「……」
より近くで感じる彼女の体温。恥ずかしさを誤魔化すために話す他愛もないこと。
そんな事が、非日常的で。
もう少し、このままでいたかった。
まだ、バスが来ないで欲しかった。雨の中に、小さな屋根で肩をすり合わせていたい。
雨も、たまには悪くない。
題:雨に佇む
最近ずっと心の中が雨なんだ。
一昨日も
昨日も
今日も…
きっと明日も雨に佇むんだよな。
「3月24日に『ところにより雨』、5月25日に『いつまでも降り止まない、雨』、それから6月1日が『梅雨』で、今回『雨に佇む』か」
3月は「『ところにより雨』、ピンポイントに自分の所に降りがち説」、5月は「『止まない雨は無い』って励ましのセリフがあるけど、実際絶対止まない雨は有るよな説」、6月は日本茶の茶葉「あさ『つゆ』」で書いたわ。過去投稿分を振り返る某所在住物書き。
外ではさらさら、ざーざー、雨が降っている。
「……ところで別に気にしてねぇけどさ。最近、某ソシャゲのリセマラしてたの。
気にしてねぇけど、1週間くらい粘って、結局、大妥協して絶対条件1枚だけ揃えたわけ。
……今日その絶対条件キャラ厳選のピックアップのガチャ始まってさ。1週間、何だったのって」
気にしてねぇよ。ホントに気にしてねぇけど。
唇をきゅっと結ぶ物書き。外の雨は止まない。
――――――
昔々、まだ年号が平成だった頃のおはなしです。前回投稿分にまつわる、平凡な恋愛のおはなしです。
都内某所、某自然公園。
雪国の田舎出身であるところの自称捻くれ者、今は諸事情で姓が変わり、当時は附子山と言いましたが、
深い群青の傘をさし、白いリネンのサマーコートを羽織り、さらさら、ざーざー、雨に佇んでおりました。
田舎出身の附子山は、雨を好み、雨に歓喜する花を草を好み、つまり、自然を愛しておりました。
花に季節を見出し、雨とともに歩き、落ち葉を喜々として踏んで、ドカ雪と路面凍結を憎みながらもその美しさだけは認める。
附子山は、口では人間嫌いの捻くれ者と言っておきながら、その実心が優しくて、真面目で、草と花と風と水を愛するひとでありました。
「本当に雨好きだよね。附子山さん」
それが心底気に入らないのが、附子山の顔に一目惚れした恋人。加元といいます。
元カレ・元カノの、かもと。分かりやすいですね。
「濡れちゃうよ。良いの?」
「あなたが濡れるのは、良くないと思う」
都会と田舎のあらゆる違いに、揉まれ擦られて、一時期、本当に人間嫌いになっていた附子山。
「私のような物好きの捻くれ者に、無理して、合わせてくれなくても」
加元の知らぬ、顔も分からぬ、唯一の親友以外は誰も寄せ付けない、静かで鋭利な野性の敵意と、
加元好みの、やや細身な容姿。
それらがバチクソ気に入って、懐に入り込み、初恋の心を奪ってみたは良いものの、
いざ附子山の人間嫌いが癒えてくると、見えてきたのは解釈違いな内面ばかり。
実は優しい?
あなたは野性を失って人慣れしちゃった犬ですか?
スマホで自然を撮るのが好き?
自分の趣味を一切見せない、完全フラットで無色なあなたは今何処ですか?
群青?白?
いやいやそこは、赤か黒でしょう?
不一致、不一致。
公式の解釈相違とは、まさにこのこと。
「大丈夫だよ。附子山さん」
けど悲しいかな、附子山の顔は、スタイルは、加元のドチャクソ好みなのです。
そしてなにより、加元は恋人というアクセサリーを、それを所持している自分のステータスを、絶対手放したくないのです。
気分落ち込む雨が嫌い、虫に刺される草が嫌いな加元は、それでも「恋人」が欲しくて欲しくて、わざわざ、笑顔で嘘を吐きます。
「私も、附子山さんと同じく、雨が好きだから」
「そう。それは良かった」
表情に左右対称性が無い。
特に左側が右側ほど笑ってない。
加元の偽証の軽微な可能性を、「加元さんがそんな、まさか」の盲目な恋煩いで、知らんぷりする附子山。
加元が自分の某旧呟きアプリの別アカウントで、
『雨が好きとか違うでしょ。解釈不一致なんだけど』
なんて呟いているのも知らないで、
さらさら、ざーざー。
静かに、草花濡らす雨に、佇んでおりました。
後日、ようやくその呟きに気付いた附子山。
名字を変え、住む区も移し、加元との縁を「すべて」バッサリ切ったつもりでしたが、
附子山が想定していた以上に、加元の執着はバチクソに強かったらしく……
唐突なゲリラ豪雨にて雨に佇む私。
昔もこんなことがあった気がする。
雷が酷く鳴り響く放課後、傘を二人して忘れた友だちと一緒に喋って恐怖を和らげてたあの日は、何年も前の事だろう。
今は会社で一人、コーヒーを飲みながら静かに雨が少しでも収まる事を待っている。こんな雨の日は折りたたみ傘ではあまりにも心許ない。
時間が経てば経つほど酷くなり、戻ることのないのは雨だけだろうか。
私はまだ濡れてる。
ゲリラ豪雨が過ぎても雨に佇む私。
#1#雨に佇む
お題「雨に佇む」
アニメやドラマのように、
土砂降りの雨の中で泣くなんて、
そんやロマンチックなものではない。
悔しさ、自己嫌悪、絶望感、不安感。
ポツポツと歩く僕の背後には、
そういった感情たちが付いてくる。
止まない雨はないとはよく言うが、
きっとこの空の雨が止んだとしても、
僕のこの感情たちはきっとまだついて回る
嗚呼、雨よ。どうか一刻も早く 洗い流してくれ。
アスファルトに染みゆく この血飛沫を。
そして一刻も早く ここから立ち去らねば。
山道の急カーブ。見渡す限り木に覆われた晦冥。
鹿でも轢いたか。あるいは猿か。
そんな期待はフロントドアを開けて 間もなく散る。
嗚呼、人だ。自分と同じ形をした生き物が そこにいる。
どうか一刻も早く立ち去りたいのだが 足が動かない。
絶え間なく降る小雨が しっとりと肌を潤す。
濃い土の香りに紛れ 這い回る赤黒き鉄の匂い。
「……ずっと、ここにいたのか」
朽ちたガードレールと木陰の隙間に 人影ひとり。
嗚呼、[また] 轢いてしまった──否、これは[警告]か。
なおも穏やかに降り続ける小雨。
その静穏さに隠された 確かな殺意を全身に浴びて。
そいつと、私と。
見つめ合い動かぬまま 雨に佇む。
2023/08/27【雨に佇む】