『鳥かご』をテーマに書かれた作文集
小説・日記・エッセーなど
何も知らなかったの。
貴方が死んでしまったことも、死んでもいいと思えるぐらい覚悟していたことも。
鳥籠の中でずっと考えていたの。私は、貴方に何かしてあげられなかったかしら。未来を変えられなかったのかしら。
でも無理ね。だって私は鳥籠の中だもの。
そうやって諦めるのは慣れていたのに、どうしても涙が止まらなかったの。
心にぽっかり、穴が開いちゃった。
自由を求めすぎて自由に縛られている気がする
自由が制限される"鳥かご"の中で
かごの中は自由に動けるのに
広い世界を知っている者は与えられた自由が本当の自由ではないように感じてしまって
広い世界や広い自由を求め続けている。
でもそうやって生きるのがその者達の生きる糧であり、強くなる術なのかもしれない
私が見ている世界なんて
きっと鳥かごみたいなもんなんだろうな
〈鳥かご〉
お題:鳥かご
君は鳥かごが似合う。必ず。
首を傾げて、差し込む光に照らされ艶めく髪。ふわりふわりと風で服の裾が揺れていて、今にもその青空へ飛び去ってしまいそうだ。君は人気者。君は自由。
「一緒に座りませんか」
――今だけはその目、僕を見ているんだ。
図書室の本を整理しようと扉を開ければ珍しく先客がいた。窓辺に設置された椅子に座っている彼は柔らかな陽光に包まれている。ゆったりとページをめくって優雅に本を読んでいるようだ。今日は天気がいい。青空を視界の端に見ながら読書をするのはとても心地良いだろう。
「あれ、図書委員は今日お仕事かい?」
「こんにちは。今日は仕事じゃないんですけど、時間のあるときにやっておこうかなぁと思いまして」
お邪魔してすみませんと言えば彼は大丈夫だよと微笑んで本を閉じ立ち上がった。どうやら手伝ってくれるらしい。
「バラバラになった本を順番に並べ変えて、それから……あった、これです。この紙に本の有無を記入していくんです」
「お安い御用だよ」
「助かります」
コトンコトンという本の音と柔らかな陽光に自分以外の息づかい、穏やかな空気に包まれている。今日彼がここに居て良かった。
同じ本棚についたとき、彼はこちらを見て唐突に言った。
「君は鳥かごが似合いそうだね」
「鳥かご?」
とても嬉しそうな顔をしているものだからそんなに似合いそうですかと問いかけた。彼は満足そうに頷き「うん。とても」と目尻を下げる。
「俺、そんなに弱っちく見えますかね〜」
「弱いだって?」
コトン、スー、コトン、コトン。この本は表紙が弱っている。
「ええ。だって鳥かごに入ってる鳥は捕まってるわけじゃないですか」
「うん、そうだね」
コトン、ス、コトン、コトン。ここの棚は滑りが悪い。
「餌に仕掛けられた罠に掛かって捕まったんですよね。だから、小さくて弱いのかなぁって」
コトン、コトン、コトン。この本はシリーズ物なのに2巻目が足りない。
「ねえ、鳥を飼う時、君は野生の鳥を捕まえるの?」
本棚に入れようとしていた本を中途半端に止めて彼を見上げた。とても真剣な眼差しだった。
「そんなわけないじゃないですか。法律違反ですよ〜? 買うんですからペットショップに行きます」
「そう、綺麗に飼われた鳥を買いにいく。それから鳥かごに入れる」
「あれ、じゃあ俺、おぼっちゃまとかに見えてるんですか」
「ふふ、確かに君は世間知らずの箱入りおぼっちゃまだ。鳥かごに入れて、お世話をして、美しい羽を保たせて、それから毎日眺めて君を見つめるのはさぞ満たされるだろうね」
コトン、コトンと、彼は順調に本を入れ始める。
「なんだか褒めてもらってる気分です」
「君が綺麗なのは事実だよ」
「だから鳥かごが似合うって思ったんですね」
「決して弱いだなんて思っていないよ。君を見下しているように聞こえた?」
「いえいえ! そんなことありません」
「そうかい?」
「優しく丁寧にお世話して飼うっていうのもありますもんね。鳥かごのイメージが、拘束とか捕獲とか、そういう過激なイメージがあっただけです」
コトン。抱えていた最後の一冊を入れた。
「少し休憩にしましょうか」
随分埃っぽくなった部屋の換気をしようと窓を開けると、ぶわっと強い風が教室に吹き込んでくる。心地良い。陽の光も、青い空も。
風が気持ちいいですよ、と声をかけようとしてやめた。彼はさっきの場所で立ち止まったままだ。
「……間違ってないよ」
(彼は何か言っただろうか)
「僕は欲しいものはどんな手を使ってでも手に入れる口だ。それこそ野鳥を捕獲するのが違反だとしても。自由に羽ばたけるその羽をもぎ取ってでも、僕は欲しい」
(彼が鳥を飼ったら、頬杖をついて、うっとり眺めるんでしょうか。ちょうど今みたいな目で)
「お世話をして可愛がるだけの生温いものなんて満足できない。拘束して捕獲して、鳥かごに閉じ込めて、一生檻の中で飼い殺すくらいじゃないと」
(あ、今、いいアイディアが思い浮かんだんでしょうか。とても楽しそうな顔……こんなに遠い)
「一緒に座りませんか」
今度こそ声をかけると彼は一等優しく微笑んだ。
鳥かご
所詮、籠の中の鳥だ。
籠の中で小さな反抗するくらいが、関の山なんだよ
ねえ、見える?
この世かいのとりかごが。
とりかごというおりにとじこめられてるの。
えらい人はねみんなしてあんしんそうな
かおをするんだよ!
なんでだろう?
ぼくたちがいやなことをできないからって
自ぶんたちはいやなことをするのにね
えらい人に見てほしいなあ
このおりからのけしきを
こんなにせまいんだよ
こんなにしばられてるんだよ
ゆーら…ゆーら…ゆーら……
鳥かごにいるみたい。
激しく揺れることは、私が動かないかぎり、
きっとない。
きっとないけど、揺れて欲しい。
この鳥かごをひっくり返してしまうほど、
揺らして欲しい。
誰かだけに、わたしの手をとってほしい。
――「『Bird Cage shop ~トリカゴノユメ~』?」
見慣れない看板に思わず声が出た。
町外れに新しいお店がオープンしていた。
ここ最近、魔法使いの間で自分のお店を出すことが流行っている。妙に雰囲気があるし、なんとなくここもそうかなって思った。
入ってみる。
謎めいた香りに鼻をくすぐられ、視界に洒落たアンティークな内装が飛び込む。至るところに鳥かごが置かれており、一番奥のカウンターに店主らしき女性が座っていた。
「いらっしゃい!」
「こんにちは。素敵なお店ですね…でも鳥かごのお店なんて珍しいですね。」
「そうでしょ~。私の趣味でね、鳥かご作り。ここにあるのは全部私の作品なんだ♪」
「そうなんですね。あの、お姉さんは魔法使いですよね? どんな魔法の鳥かごを?」
「ん~例えば…これはどんな大きさの物も入れられるから、ミニチュアを楽しんだり邪魔なものを入れてもオッケー!(笑)」
「そんでこっちは入れたものが浮くようになってて、中でフワフワ浮く様子が見れるよ。」
「あっちのカゴは水が入ってて、水中をアレンジ出来るやつだね。あと他にもいろいろ!」
「へぇー!おもしろいですね。見た目もオシャレだしどれか買っちゃおうかな~?」
「ありがとう♪気になったのがあれば言ってね。」
わたしの部屋でもトリカゴノユメをみるぞ☆
ずっと一緒
閉じ込めて
世話して悦に入る
君は満足してるのかい
かごを閉じる
少しの罪悪感とともに
―鳥かご
9(鳥かご)※BL
逃げていいと、彼は言う。
「……どうしてまた、そんな事?」
首を傾げてしまった。それをされて困るのは彼自身だろうに。別に拘束され、繋がれている訳ではない。なし崩しに連れて来られた時出るなと言われた、ここから。いや、なし崩しでは無いか。
一週間前に共に飲んでいた。二人でよく行く居酒屋で、いつもの様に楽しく気楽に。そうして気付いたらここに居たから、薬でも盛られたのだろう。別に、それはいい。彼が自分に向けていた感情がどういったものか、気付かない程自分は鈍感ではない。自分が誰それと何をしたという話を聞くと自分では誤魔化しているつもりなのだろうが、険を帯びる視線もとっくに自分は気付いていた。だからと言って自分から彼を求める事はしないが。言葉も気持ちも、これは彼自身が答えを出さなければいけない事だ。だというのに。
こっちに選択権を委ねて、自分の心の言い訳に俺を使う腹積もりか。
人を思い通りに動かすのは好きだ。だが、自分が使われるのは好ましくない。この男の逃げに自分が使われるのは許せない。
「……」
黙りか。ふざけやがって。
こちらから歩み寄るつもりは無い。向こうが始めた事で、いつでも逃げられる状態のこのドアの開いた鳥かごに居るのは自分の選択だ。決してこの男がどうこうという理由ではない。
俺が選んで傍に居るのに、なにが逃げていいだ。帰って来て俺が変わらずここに居ると、心底安心した顔をするくせに。そんな顔をする癖にそんな試し行動をしないと安心出来ないか。くだらない。
「諦めるふりのごっこ遊びに付き合うつもりはねぇぞ」
ソファの背に寄りかかり、目の前で膝を着き項垂れる男を見下ろす。
「お前、俺じゃなきゃとか言ってなかったか?確かにお前は俺が居なきゃだろうが、俺はお前居なくてもやってけるぞ?」
ゆっくりと、俯いていた顔が上がる。その顔を見て、ソファに深く腰掛け直し笑みを浮かべた。
逃げろと言っておいて、他の人間の存在を匂わせた途端これだ。暗いながらも奥に強い光が灯っているのを確認して、この鳥かごに居着く事の確信を得る言葉を、男の口から出るのを待った。
『私と鳥かご』
優しさは悲しみ
一生入れ続けられる。
人間はみんな可愛がってくれる。
でもそれは私にとっては悪魔。人間は可愛がって私に優しくしていると思う。
けどそれは、鳥の私の気持ちじゃない。
鳥かごというものから出ていきたい。
ここには私の幸せがない。
みんな何を見ているの?
何も見ることはないのに。
私はちっとも嬉しくはない。
私が求めているのは、ただ、大空。
『鳥かご』
鳥籠の中に囚われているうちは、何も見えやしない。
ただ、見ようとすることは出来る。
鳥籠の外側にいるやつは、鳥籠の内側にいるやつらよりこの世界を知ろうとはしないだろう。
鳥籠の内側にいたやつが、這いつくばって外に出られた時、初めこそ、この素晴らしき世界に感激するだろうが、きっとすぐ挫折する。だが、ここで、挫折したままにとどまらず、また意を決して起き上がったものは、誰よりも強いと思う。
今日のテーマ
《鳥かご》
もうすぐ彼女の誕生日だ。
つきあい始めて最初の誕生日とあって、俺もそれなりに気合いが入ってる。
この日のためにバイト代もコツコツ貯めてある。
とはいえ、あまりにも気合いの入りすぎたプレゼントというのも憚られる。
俺の彼女はとても遠慮深く、アイスやジュースを奢っただけでもとても恐縮してしまうような子だから。
それに、あんまり高価なものを贈ったら、その後に控える俺の誕生日の時に無理をさせてしまいかねない。
だから、プレゼントはなるべく手頃な価格帯のものにしようと思ってる。
ところで彼女は俺の妹の友達でもある。
もともと友達だったわけではなく、俺とつきあい始めてから親しくなった。
たまたま2人でいるところに駅でばったり出くわした妹から根掘り葉掘り尋問され――そう、あれは尋問と言って差し支えないくらいのしつこさだった――同い年だと知ってその場で強引に連絡先を交換し、いつのまにか俺抜きで遊ぶくらいに仲良くなっていた。
俺としては押しの強い妹が一方的に振り回してるんじゃないかと気が気じゃなかったのだが、存外気が合うようで、良好に友情を育んでいるらしい。
今では彼女が俺の元へ遊びに来た時にも「お兄ちゃん邪魔」と割り込んでくるほどである。もちろん、しっかり因果を含めて部屋から追い出すが。
閑話休題。
そんなこともあって、彼女へのプレゼント選びは妹にもつきあってもらうことにした。
友達として男では理解しきれていない彼女の好みを把握もしているだろうし、完全にハズしてしまうような物を選びそうになったら止めてもくれるだろう。
これで兄妹仲が悪かったら罠を仕込まれる可能性もあるが、そんなことはないと思えるくらいには程々に仲が良い方だと思うし、妹と彼女の関係に関しても言うに及ばずだ。
報酬に季節限定のフラペチーノとスイーツを奢る約束もしていることだし、働きは期待できるに違いない。
ショッピングモールは、夏休みということもあって平日にも拘わらずそこそこ賑わっていた。
雑貨店や文具店などを見て回ったが「これは」というものはなかなか見つからない。
妹もいくつか提案してくれたのだが、俺の中でイマイチしっくりこないのだ。
フードコートで昼食を済ませた後、妹が行きたい店があるというのにつきあうべく歩いていると、ふと落ち着いた雰囲気の雑貨屋が目に留まった。
アンティークなデザインの小物やインテリアが並ぶその店は、何となく彼女の好みに合いそうな気がする。
先に行きかけていた妹が、歩みが遅くなった俺に気づいて戻ってくる。
「ああ、たしかにあの子、こういうの好きそう」
「やっぱり?」
「うん。ちょっと見てく?」
「おまえの方はいいのか?」
「別に急ぎじゃないから後で寄らせてもらえればいいし。何だったら別の日に他の友達と来てもいいし。そもそも今日の本命はこっちでしょ」
カラカラ笑う妹に礼を言い、俺はその店に足を向けた。
午前中に巡った店は男1人で入るのにはちょっと躊躇するような可愛らしい店構えのものが多かったが、この店はそういう敷居の高さも感じない。
いかにも『年頃の女の子向け』という種類の店じゃないからだろう。
価格帯もピンからキリまで、とても学生の身じゃ手が出せないような高価なインテリアもあれば、中学生でも小遣いで買えそうな小物もある。
具体的に『こういう物を』というのを決めていないこともあり、俺は店内をゆっくり見て回った。
妹も隣で物珍しげにあちこちを見回している。
店内には俺達以外に客の姿はなく、賑やかなモール内とは空気がずいぶん違って感じる。
まるで異世界にでも入り込んでしまったかのような不思議な感覚を味わっていると、ふと、俺の目が棚の中央に飾られたアクセサリーに引き寄せられた。
それは鳥かごをモチーフにしたネックレスだった。
ペンダントトップはからっぽの鳥かごで、中に鳥の姿はない。
しかし、鳥かご自体は蔦や花で彩られているという凝ったデザインで、甘すぎないけど可愛らしさもあり、何となく彼女のイメージによく合うように思えた。
「空の鳥かごは、風水的に幸運のモチーフなんですよ。『飛躍の存在の鳥が、幸福を携えて鳥かごに帰ってくる』という意味があるんです」
俺はよほど真剣に凝視していたらしい。
いつのまにか近寄ってきていた母親くらいの世代の店員さんが、にこやかにそんな説明をしてくれた。
そういう由来があるなら、プレゼントにはもってこいだとも思える。
何より、身に着けるものを贈れるというのもいい。
どう思う?
確認がてら妹を見れば、妹もまたうんうんと大きく頷く。
どうやら彼女の好みとも、同年代の女子として身に着けるアイテムとしても、合格点はもらえたらしい。
そこでようやく値札を見て、予算として考えていた額面とも折り合いがつけられることを確認し、俺はすぐさまそれを包んでくれるよう店員さんにお願いした。
「気に入ったのあって良かったね」
「ああ、おまえもつきあってくれてサンキューな」
「結局お兄が自分で選んで決めちゃったから、全然出る幕なかったけど」
「そんなことねえよ。助かった」
髪が乱れない程度にぽんぽんと頭を撫でてやると、妹もまた満更でもなさそうに笑ってみせた。
そして俺が会計を済ませる頃、妹もまた別の小物をレジに持ってきて、同じように「プレゼントなんです」と店員さんに手渡した。
妹が買ったのは、俺が彼女へのプレゼントに選んだのと似たようなデザインのチャームがついたストラップ。
たぶんこいつも彼女への誕生日プレゼントに贈るつもりなんだろう。
彼女の誕生日はもう少し先。
これを渡したら喜んでくれるだろうか。
嬉しそうに顔を綻ばせてくれるのを想像するだけで胸が温かいもので満たされていく。
その日を待ち遠しく思いながら、俺達はカフェで約束のフラペチーノとスイーツを堪能して帰途に就いたのだった。
外の世界を見てみたかった。
美しい青空、緑豊かな森、そして、何処までも広い海。
けれどこの鳥かごのような城にいる限り、私は自由に
見ることも叶わない。
私は、いわゆる貴族の娘で両親に外は危ないといわれてずっとここに閉じ込められている。
きっと両親は、私の事を閉じ込めて支配したいのだろう。だから、この本しかない部屋に私を入れた。
逆らうこともできず、毎日本を読んで夢想している。
本は好きだ。いろいろな世界へ私を連れて行ってくれるから。
例えば、一人の少年がハラハラする冒険をしたり、運命の相手に出会う恋物語。
なかでも私が一番好きなのが───
鳥かごの中で生きていたお姫様が幼い頃から好きだった王子様によって救けられて自由になる話だ。
まるで、自分の事のように感じて何度でも読める。
「私にも、こんな王子様が現れないかな。」
決して叶わないと分かっていても呟いてしまう。
自分の未練がましさに笑ったその時。
「なら、僕が君の王子様になろう。」
急な声に驚いて振り返ると、そこには美しい青年がこちらに手を伸ばしていた。
「あなた、誰?」
「君を自由にするための王子だよ。さあ、行こう。ここから出なければ君は一人きりだ。そんなの嫌だろう?」
「────うん!」
例えこれが夢だとしても、私は行きたい。
こんな暗い場所で生きるのはうんざりだから。
────そして、新たな物語が始まる。
『鳥かご』
【短歌・麗しのナイチンゲール】
美しく小夜啼鳥を響かせて
共に生きようティカリンガリラ
-Valkyrie-
(鳥かご)
#112 かごの小鳥が鳴く理由
鳥かごにいるだけで
「かわいそう」
と眉をひそめる不自由な人たちを
私はかごの中からあざ笑っている
とても美しい鳴き声で
「鳥かご」
『鳥かご』
金網や、頑丈な
カゴなんかじゃなく
スポンジで
作りたい。
素敵な羽が
綺麗なままで。
鳥かご
とびらが開いたままだといいな
自由に外に出て
外の世界に疲れたら戻ってこられる
安心できる場所
ここは暮らしやすい。
四季はあるが年間通して穏やかな気候。
緑豊かで常にキレイな水で満たされている。
少し行けば岩肌見える丘陵地。
反対を行けば腰掛けられる巨大な流木。
この広く静かな世界に小さな私1人。
ある日。
天から金色の鳥籠が降ってきた。
ゆらりゆらりと。
砂を少し巻き上げ着地した。
少し傾いている。
遠巻きにそっと見ていたがそれ以降動きはない。
またある日。
丘陵地から戻るとレトロな橋が建っていた。
ここに…橋?
金色の鳥籠は流木の袂に移動していた。
そして今朝。
目が覚めると生き物が増えていた。
自分と姿形は似ているが自分の方がかなり小さい。
20ほどいるだろうか。
一気に騒がしくなり目眩がする。
どこか避難できる場所を探す。
流木に近付くと鳥籠がキラリと光った。
するりと中に入ると静けさが戻った気がした。
網目の幅からして入れるのは自分だけ。
安息地を得られほっとひと息つく。
これからはここを棲家とする。
魚なのに鳥かごとは妙なものだが。
―――アクアリウム
#22【鳥かご】
[今までありがとうね、よく頑張ったね]
ある春の日に小さな命がお空に旅立った
私が中学生の春のある日に
羽を切ってしまったのか、飛べない小さい鳥が
いて、ぐったりしていたのを見つけた
心配になって、そのまま家に連れてきた
こっぴどく親に怒られたけど、
お前の優しさを無駄にはしたくない
そう言って父が鳥かごや、餌などお世話が出来る用にペットショップへ連れてきてくれた
その週の土日に獣医さんに行き
検査をしてもらった
どうやら栄養が足りてなかったり、春とは言え、まだ寒い時期だったためぐったりしていたとの事だった。
羽の方は応急処置をしたため飛べる可能性があるかもしれないと言われた
そこから少しずつ回復していき、1ヶ月が経つ頃には飛べるようになっていた
それから時が経って
私が家を出る時
マンションなのでペットは飼えないということなので
その鳥は実家に預けることにした
好きな人が出き、両想いになった
彼も鳥が好きだったので話は盛り上がった
お付き合いすることになって結婚をした
それから小さい命を預けた時だった
ある雨の日に実家から電話がかかってきた
出てみたら酷く慌てた様子だった
[あのね、かなり弱ってて1回こっちに帰ってきて]
そう連絡があり、その日の翌日に夫と一緒に帰った
酷く弱っていて、小刻みに震えていた
詳しく聞いたら
老後が原因だった
心配で帰れそうになかった私はしばらく泊まることにした
その翌日のお昼頃に静かに眠ったまんま永遠の眠りについた。
家族で簡単に埋葬をして、戻って
空になった鳥かごを眺めて溜め込んでいたものが流れてきてしまった。
母も、夫も、父も、そっと涙を流していた。
授かった子には同じ名前をつけよう、私はそう心の中で決めた
お題[鳥かご]
No.48