未知亜

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10/13/2025, 9:47:48 AM

どこまで行けるかな?
って呟いたあなたに、
どこまでも行けるよ
ってあたしは返した。
あの頃のあたしは、本当にそう思ってたから。

その時の唇の歪み、鼻から漏らした息、少しだけ下げた眉のことなんかを、二年経っても、それこそどこまでも、あたしは考えている。

『どこまでも』

10/12/2025, 8:15:14 AM

ㅤ謂れ無いことで怒られ、去られ、嗤われ、いまや寄り添うのは自分の影だけ。細く長く伸びるそれを無言で見下ろす。
ㅤいつも望んでいない方向に歩かされ、気づいた時には知らない道に立っているのだ。どちらから来たのだったか、どこへ向かうのだったか、考えるのはやめてしまった。
ㅤ目を閉じて頭をカラにする。適当にステップを踏み、パッと目に入った方向に歩き始めた。どこかには繋がっているのが道であり、未知というものだから。

『未知の交差点』

10/11/2025, 8:43:16 AM

ㅤ見て、と袖を引かれ、僕は立ち止まった。佳織の手が足元を指さしている。

ㅤ群生している花畑から離れた歩道の隅に、一輪だけ咲いてるコスモスだった。濃いピンクの花びらが風に揺れる。

「たぶん今、洋ちゃんこんな感じかなって」
ㅤぽつんと咲く花の前にしゃがみ、佳織が付け足した。
「いーんだよ、皆と同じ場所じゃなくたって。一輪でもちゃんと綺麗だし」

「待ってるわ、隣に佳織が来んの」
ㅤ同じようにしゃがむと、佳織の手を握り僕は笑いかけた。
「ずっと一輪じゃ、やっぱ寂しいからさ」
ㅤ思ったよりかは上手く笑えた気がした。

『一輪のコスモス』

10/10/2025, 9:48:26 AM

ㅤ昼ごはんのおにぎりとスープを手にレジに並んだ時、肉まんのショーケースに気づいた。今年は随分早い気がした。
ㅤたとえば毎日通る道で、解体工事が始まってからとか、看板が広告募集中に変わってからとか、それまでここに何があったっけと思う。カップスープの蓋に器用におにぎりを載っけて、スマホを持った手で私は眉間を揉んだ。肉まんのショーケースが置かれた場所に、昨日まであったはずの物が思い出せない。
ㅤ先週はぐれた恋も似たようなものかも知れない。心のその部分をそれまで締めていたはずの何かを、私はもう思い出せない。
ㅤ背後の咳払いで我に返る。申し訳程度の会釈を返し、こちらに向かって手を挙げる店員へと私は歩み寄った。

『秋恋』

10/9/2025, 9:01:17 AM

ㅤさっきから、同じページばかり何度も目で追っている。諦めて本を閉じ、ベッドに寝転がった。呻きじみた意味の無い言葉が喉から漏れる。

ㅤ何を選んでも選ばなくても。いつもそうじゃない方の未来をグズグズと想ってしまう。目の奥がじんとして、カーディガンの袖口を当てた。こんなに涙が溢れるのは、急に気温が下がったから。雨ばかり降ってるから。

ㅤ愛する、それ故に。ひとりぼっちでいるよりももっと寂しくなるのかもしれない。

『愛する、それ故に』

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