駆け落ち···無断で家を去り行く先をくらますこと。
なんて、辞書で引いてみる。僕は今、相談を受けている。「人殺したかもしんない」「たすけて」
そんなメールが届いた。クラスの、自分の席より2つ前なだけで、僕が恋心を抱いた子。
仲がいい友達よりも自分にメールとは、相当パニック状態に陥っているのだろう。
「どうしたの」「ドッキリとか?」
「そんなわけないこらやめてよ」
「どうしたいい?」
「どうしのう」
誤字が酷い。かなり混乱しているようだ。
昔から、思ってたことがある。
「じゃあ、駆け落ちでもしてみる?」
彼女がいつか僕に恋をしてくれないかと。
「わるくないね」
...
やっほー。
...呑気だなあ。
そーかな?
そーだよ。
じゃあ早速、いこっか?
うん、どこ行く?
電車にでも。
...
こんなに、こんなに人は呆気なく死ぬものなのか。
電車に自分から飛び込んだ彼女を止められなかった。
「どうしのう」
メールの言葉がフラッシュバックする。
そっか、そういうことか。
この旅の結末は、最初から決まっていたんだ。
どうか安らかにと体を寝かせたのち、
真っ赤に染まった服からポシェットを抜き出す。
中にある真っ青な日記らしきものを開く。
綺麗にまとめられた日記だ。最後のページは一文だけ書き連ねられている。
「君と一緒なら、どこまでも。」
それは、僕が遠い昔、彼女に告白した時の言葉だった。
ふっ、と息が漏れる。
やけに冷たい朝を見つめ、伸びきった袖で結露で見えない窓を撫でる。窓越しに濁った空が見える。
今日は曇りかな、なんて思いながら
ぼーっとする頭をなんとかしようと玄関で靴を鳴らす。
外はまだ薄暗い。
いつもの公園にいこうとしたのがまずかった。
もうすぐ公園に着く、というところで奇妙なかたちをした看板を見かけた。「」。それには何も書いていなかった。
冬ということもあって余計に冷える。今日の昼の予報は
晴れなのだが、それが嘘なのではないかと思うほど。あ
れには意味があったのだ、今思えば。
にんげんである以上、知識欲には逆らいがたいもので、
はーっと白い息を吐き、口の前に手をあて温める。
看板をたくさんの方向から眺めてみる。やっぱり、看
板には何か書いてあるどころか傷一つない。不気味
に思ったが、なぜか逃げる気になれない。あのまま、ぼ
おだちしてどれだけたったろう。どれだけにげたくても
きもちが、きもtが。kmtggggいきさえとまりそうd。
をあうおあいえいいいまはそらのひかりがこkちいい。
ついでにいいあうええおえお、かんばんはりせいすら
けしさってしまうよう
て゛
。
冬晴れの予報の日の早朝、空が濁っていたら昼まで外にでないことを強く勧めます。
ところで、気づきました?語り手は寒さを訴えていたときから貴方に忠告があるそうです。
是非、縦読みしてみて下さい。
ね。
なにが、「幸せは歩いてこない」だ。
幸せに繋がることだと信じ選んだ選択肢の先には
幸せなんてなかったくせに。
あんなに幸せだったのに更に幸福になろうと踏み出した瞬間全て失い、また闇を彷徨うことを強いたくせに。
あんなに、空は輝いているのに。
まだ、輝き続けるはずだったのに。
幸せの定義は分からない。
ただひとつ。
ただ一つ明確なことがある。
それは幸せのため信じ進んだ故に手に入る景色。
それは失い彷徨い続けたものの特権。
空をみてごらん、
目に浮かぶ水が零れないように。
涙で滲んだ星空ほど輝くものなどないだろう。
幸福を前にし歩みを止めた愚者の見る太陽より、
彷徨いながらも歩み続ける星空の方がどれほど素晴らしいのだろうか。
どんなに考えたとて、それは一つに定まらない。
けれど、それでも。
幸せ···心が満ち足りているさま。· 幸福。幸い。