#86「歌」
さぁ!歌を歌おう!
この世は宇宙で最大のミュージカル劇場だ!
オレは平凡だ
メイクアップも適当だ
神は残酷だ
運命には逆らえない
アイツが飽きたら
俺はみじめに死んでいく?
ふざけるな!
まさか俺を舐めているな
さぁ!今に見ていろ!
飽きることのない最高のエンターテイメントを!
俺の輝かしい最後は拍手喝采!
画面の向こうのアイツは感動に震えるだろう
さぁ!さぁ!さぁ!
歌を歌おう
俺は今、生きているのだから
#85「記憶の海」
はて、いずこへ?
よせて、かえす波に手を浸しているような
そんな意識から我に返る
海馬が、壊れた玩具のブリキのように
ギギギと繰り返し音を鳴らしている
もはや錆びてしまったブリキは
終わりのない水平線をなぞるだけであった
そこへ、わたしと名乗るものは問うた
「貴方は、まさか死んでいるのではあるまいな」
いやぁ、ね。
実はわたしも思っていたよ
思い出を持たない記憶の海は
はっきりいって…
はて、いずこへ?
#84「静かなる森へ」
ハイホー ハイホー
おうちへ帰ろう
しんしんと湿気を帯びた森が
きみの体温を奪っていく
ハイホー ハイホー
もうお疲れさま
生き物はとうにいない
それなのに静けさがうるさい
ハイホー ハイホー
きみとふたり 白い息がひとつ
月が綺麗だねぇ
掘り返した土の匂いが広がる
静かなる森
ハイホー ハイホー
帰ろうか
ぼくらのおうちへ
#83「青い青い」
ケツの青いガキだから
この気持ち、分かんないけど
2人で1つの自転車に乗って
雨上がりのアスファルト
水溜まりに写った空に、俺らが走っている
「これでよかったんかも、しれへんなぁ」
「なんてーー!?」
「なんでもあらへんー!!!」
雲一つない青い青い空
この空の下でコイツが笑っているのなら
世界で一番、俺は幸せだ
#82「夜が明けた。」
たぶん、もう少しなのだろう
夜が明けるとき
耳をそばだてて聞くのだ
この世の静けさを
すずめの鳴き声
小学生の元気のいい声
ゴミ収集車の軽快なメロディー
それが小さな幸福と思えるなら
きっと今日も素敵な日になるはずだ
だから幸せに長生きしてね
病院のベットで横たわって
そう願っていた