題名:心の境界線
「わ!」
「わぁ?!」
僕は腰を抜かす。
「もう、相変わらずびびりだなぁ。」
「びびりって…そっちが驚かせに来たくせに。君だってびびりじゃないか。前にお化け屋敷で泣きわめいてたじゃないか。急に驚かせて心臓に悪いんだけど。じゃあね。」
僕が怒って言うと、
「違うって!あのね、これには訳があって。それに、少し恥ずかしくて、こういつも通りにしないと心臓が爆発しちゃうの!」
いつも通りの訳の分からない言い訳だった。
「…もしかして、何か用があるの?」
僕がそう思ったのは、君の言葉と、仕草だった。手を後ろにやるなんて、君らしくない。それに、恥ずかしいなんて、強気の君の言葉として似合わない。
「その、ね?これ、受け取って。」
君の手には手紙があった。
その時、もしかして、と思った。僕の頭に浮かんだ言葉は───告白。幼なじみの君がまさか、と少し嬉しく思うが、冷静に手紙を開ける。そこに書いてあるのは…
大好きな君へ
もしかして告白だと思いましたか?違います!
アハハ、まんまと罠に引っかかって面白いね。
もちろんドッキリだよ。そうじゃないと、君の頭はパンクするでしょ?というより、ドッキリで頭に血が上ってるかも?それも君らしい。それじゃあバイバイ。
意地悪な私より
僕は手紙を握りつぶし、目の前にいた君を睨もうとした。しかし、目の前には誰もいなかった。
僕だって君が好きなのに。ずるい。好きと嫌いの境界線が混ざってこんがらがって曖昧になりそうだ。
…大っ嫌い。
…君が。
…本当は、
好き、だけど、君の言葉が演技らしくて、嘘に見える。もしかして…
瞬きすると、そこはベットの上から見た天井だった。どうやら、さっきの出来事は夢だったみたいだ。残念。
題名:透明な羽根
私は親友が好きだ。
そう言うとみんな馬鹿にする。
―好きな人は誰?
と言われたらいつも親友の名前を出していた。
すると、みんなうんざりして、
―そういうの無し。男子で好きな人を聞いてるの。
と良く言われた。
そんな親友は、タヒんでしまった。
ある日親友は、綺麗で、透けている鳥の羽根を見つけたと興奮気味に話しかけてきた。
私が親友についていくと、そこには何もなかった。
―どういうこと?
―見えないの?
そう言われ、目を凝らしてみても、何もない。
―何もないじゃん。
と私が隣を見ると、
親友はいなかった。
透明な羽根が、一瞬だけ見えた気がして
追いかけて、走って、駆け抜けて、
そこには何もなかった。
そして、警察が言った。
親友がタヒんだことを。
だから私は親友を◯した透明な羽根を探している。
これからずっと、一生。
どうせ見つからないだろうけれど。
そして、私が普通じゃないことに先に気づくだろうけれど。
題名:灯火を囲んで
ぽっと灯りが付いた。
キャンプファイヤーのようなメラメラしている炎とは違い、パチパチとする小さい炎。
「綺麗だね、線香花火。」
「そうだね。だけど、もうすぐ終わっちゃうよ。」
私の線香花火は尽きて、友達の線香花火はまだ続いていた。
線香花火を見ると、苦い思い出がよみがえる。失恋したあの時に似ているから。
─線香花火みたいにすぐに終わっちゃったね。
私が読んでいた本に出てきた言葉が、失恋後すぐに私を攻撃した。
線香花火の寿命は短く尽きた。友達の線香花火も、終わってしまった。私が下を向いていると友達は言った。
「もう一回やらない?」
「うん。」
この夜に明るい灯火が弱くついた。
それは綺麗としか言いようがならなかった。
私はまた、恋をしようと、友達に励まされたと、勝手に解釈している。相変わらず、私は変な人なのかもしれないな。
線香花火と恋なんて、今一番関わりがないからさ。
題名:冬支度
ふぅ、とため息を吐くと、白くなった。
ああ、もう冬なのか。
そういや今年、紅葉を見ていないな。赤や橙、黄色く染まった葉は、歓声をあげるほど美しい。それを見られなかっただなんて残念だ。
僕がそう思うと枯れ葉が舞った。どこか儚げで、僕も寂しくなる。
秋を楽しみたいと一度も思ったことはないが、この枯れ葉を見ると、後悔してしまう。まるで僕の心を映す鏡だ。そしてどこかの映画のワンシーンみたいで。そして誰かの日常みたいで。
なら、冬を楽しもうかな。と言っても、楽しむことが浮かばない。本当、頭の中が腐ったみたいだ。
さてと。冬支度でもしますか。
題名:時を止めて
「ねぇ、もし時が止められたら何をする?」
その子は誰かに質問する。声からして、明るい人だろう。
「うーん、テストのカンニングをするかな。だって昨日、テスト結果が悪くてお母さんに怒られちゃったんだもん。」
質問された子は最初は苦笑をしていたが、次第に口をへの字に曲げた。
「えー?ずるいよーそんなのー。」
その子は不満げに言った。
「じゃあさ、時が止められたら何をするの?」
ずるい、と言われた子はそう質問した。
「それはね、好きな人にハグしたり、告白したりする!」
その子は恥ずかしげに言った。
「へー。でもそれって、好きな人に伝わらないじゃないの?」
質問した子は言った。頭の上にはきっとクエスチョンマークがある。
「そうだよ。だって、前に同じことしたんだもん。だけどね、やっぱり分かってもらえなかったみたい。」
その子は寂しげに言った。
「ほらー。ちなみに好きな人って誰?」
質問した子は言った。ニヤリと笑っている。
「それはね───」
その子は誰かの名前を言う。
僕の、名前では無かったようだ。
また僕は失恋した。