小絲さなこ

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5/1/2024, 2:17:59 PM

「貴女を奪えたらどんなに」


灰色だった僕の世界を、貴女は色鮮やかなものに変えた。


貴女は僕の頭を撫でる。
まるで、年の離れた弟にするかのように。

まったく異性扱いされていないことはわかっている。
貴女に触れられることが嬉しい自分が悔しい。

貴女の笑顔はいつも眩しくて、春の花のように鮮やかで、思わず瞼を閉じてしまう。


貴女が嬉しそうにあの人のことを話すたび、僕の心には血のような赤黒いものが広がっていく。


嫌になるほど真っ青で澄んだ空を見上げる。

貴女が生涯を誓った人。
どんな人なのか、知りたいけど、知りたくない。

惚気話を聞きながら、どうやったら貴女を奪えるのかを考えている。最低だ。
奪う勇気も度胸も力もないくせに。



────カラフル

4/30/2024, 2:22:00 PM


「鍵がかかってない檻」



「楽園って、鍵がかけられていない檻みたいね」
君はそう言って、肩にかかる髪を払った。

楽しいことしかない世界。
最高じゃねえか。

「そう?私は怖いけど」



毎日毎日楽しいことばかり。
それに慣れてしまったら、そのうち楽しいことが楽しくなくなってしまいそうで怖い。

外の世界は楽しいことはほんの少し。
楽しいことに慣れてしまったら、もう外に出る気にはならないのではないか。


真面目な君らしい考え方だ。

「なるほど……」
それは、いいかもしれない。

楽園が、鍵がかけられていない檻だというのなら、君を楽園に連れて行きたい。
そうしたら君をそこにいつまでも閉じ込めておけるから。





────楽園

4/29/2024, 2:55:06 PM


「I miss you」




空が同じなら、きっと空気も同じ。
空気が同じということは、風もまた同じ。

この風が流れ、君の町に届くまでどれくらいかかるだろう。

声も気持ちも、そのまま届けられたらいいのに。

無機質な文字や電気信号を介したら、全部ちゃんと伝わらない気がする。
直に会って話しても、すべて伝わらないこともあるから。


「会いたい……」


零れ落ちる言葉と涙を、風が攫っていく。




────風に乗って

4/28/2024, 3:03:34 PM

「好きになってはいけないひと」


きっと好き。
好きかも。
たぶん好き。

そう思う時が短すぎて、自分でもわからなくなっていたのだろう。

どういう感情なのかわからないまま、瞬きするよりも短い時間に感じて積み上げてきたものを、分析して言語化することは難しい。


気がついた時には手遅れで、離れたくても離れられなくなっていた。


この関係を崩すことは出来ない。
気がつかなかったことにする、と決める。
たぶん、それが最善。



今あるものを壊したいと思ってしまうほど、好きになる前に。



────刹那

4/27/2024, 11:41:41 AM


「すべて俺のせいにして」


「何のために生きているのかわからない」

そう言って俯いたままの君の手を取る。

「俺のために生きて」

だから、理不尽なことも、辛いことも、俺のせいにしていい。
俺は君のために生きるから。

「そんなの不公平じゃない?」

見上げる君の額に、口付ける。


そんなことない。
嬉しいことも、楽しいことも、俺のおかげだって思ってくれるなら。


────生きる意味



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「君に伝えたいこと」



自分が何者であるか、とか。
特別な何かになりたい、とか。
そういうことも含めて、ずっと考えて、出なかった答え。

ただ、行き着いたのは「自分が生きている間に、本当の意味での『生きる意味』など、自分ひとりではわからない」ということ。

誰かのために生きるのではなく、本当の意味で自分のために生きて、それが何の意味を持つのか。
世の中にとって、自分はどんな役割を持つのか。
悩んで出てきた答えが正解とは限らない。

その人が生きる意味は、周囲とその人との関係性によって、異なるのではないだろうか。

そう思えるようになるまで、だいぶかかってしまった。

もっと早くこの考えに辿り着ければよかったと思うと同時に、ずっとそれを探し続けることにこそ、意味があったのではないか、とも思う。





まるで年の離れた兄のように俺のことを慕ってくれる君は、ピンと来ないという顔をして聞いている。
わかるよ。自分もそうだったから。

今ならわかる、人生の先輩たちの言葉。
人生は遠回りしたもん勝ち。

うざがられるのはわかってるけど、若い人につい言ってしまう言葉。



自分の存在意義など、生きているうちにはわからない。
だからといって、悩む意味がないわけではない。
悩むこと、そのものに意味がある。

悩んで、足掻け。



────生きる意味

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