「ずっと言いたかったことを、今」
「しばらく行けないだろうから」
そう言って、子供の頃によく遊んだ河川敷を歩く。
会いたくなくても会える。
そのことが、どれほど幸運なことか。
もうすぐ、君に毎日会えなくなる日々が始まる。
耐えられるだろうか。
ふたりの関係も、この心も。
幼馴染という関係も、一番の友達という関係も、今日で終わりにしたい。
「近過ぎて届かないことってあるんだな……」
言うつもりがなかった俺の独り言。
泣きそうな顔をしている君に、息を呑む。
懐かしい風景は、気持ちをあの頃に戻すのだろう。
何も言わなくても思いはひとつだったあの頃。
成長するにつれ、言わなくてはならないこと、言わない方がいいことが増えて、本当に言いたいことだけが、どうしても言えなくなってしまったんだ。
だけど、今なら……
「ずっと、ずっと言いたかったことがあるんだ」
今言えなかったら、きっと一生後悔すると思った。
────愛を叫ぶ。
「蝶のように舞う、あいつ」
ひらひら。ふわふわ。へらへら。
あっちへ行ったり、こっちへ来たり。
捕まえようとしても、ひらり。
確信を突こうとしても、ひらり。
花畑を舞うような、あいつ。
ひらひら。ふわふわ。へらへら。
あいつは誰にも本気にならないの。
誰もあいつの口説き文句を本気にしてない。
ただ、あたしだけが、あいつに手を伸ばしてる。
────モンシロチョウ
「いつかふたり離れる日を」
こんなにうまくいってるのに、いつか離れる日が来ることを想像してしまう。
「恋愛において、男は名前をつけて保存、女は上書き保存」などと言われるが、もしも君と別れたら俺は何重にもバックアップを取って永久保存するだろう。
君と手を繋ぎながら考えることじゃないけど、いつか君が俺の手を振り解く日が来ることを想像してしまう。
そして、他の誰かのものになってしまうところまで。
いまだに君が俺を選んだことが信じられなくて、これは現実ではないのかもしれない、と時々本気で思う。
君が微笑むたび、あとどれくらいこの笑顔を独り占めできるのだろうか、なんて考えてしまう。
いつか別々の道へ進むことになっても、俺は驚かない。
君が俺のことを忘れてしまったとしても、俺が覚えているからいいんだ。
ただ、欲を言えば、最期のときに「もしもあの人と一緒になっていたら、今ごろどうなっていたかな」と、俺のことを一瞬でも思い出してくれたら、それでいい。
────忘れられない、いつまでも。
「好きになったら契約解除」
どちらかが本気で好きになったら、即契約解除。
そういう条件で、私たちは付き合っているフリをしている。
二年間の期間限定。
前半の一年は、難なく過ごすことが出来た。
だが、最近は雲行きが怪しくなってきている。
これは仕事だと自分に言い聞かせている日々。
熱のこもった視線。
触れる指先。
頬にかかる息。
あなたの言動ひとつひとつに惑わされる。
これは、恋人のフリ?
私をからかっている?
それとも……
私がその気になれば、即契約解除。
あなたはそれを狙っているの?
それとも本当に私のことを……
契約満了まであと半分。
──── 一年後
「覚えてないから、ずっと続いてる」
君に恋したのは、いつなのかなんて、覚えていない。
物心ついた頃には、すでに隣にいて大切な存在だったから。
初めて君にときめいたのも、いつなのか覚えていない。
だけど、今でも毎日のように君にドキドキしている。
「はいはい、わかってるから」
君はそう言って笑う。
そりゃそうか。
俺たちの娘は、もう高校生になるんだし。
さすがに聞き飽きたのかもしれない。
俺は言い飽きてないんだけどな……
明日からはちょっと言い方を変えてみるか。
────初恋の日