「決める勇気」
とくに得意ということがなく、逆にすごく不得意なこともない。
自分の長所も短所もよくわからない。
自分がどうしたいのかが、わからない。
本当のことを言うと、やりたいことがありすぎて、どれを選んだら良いのかが、わからないのだ。
親の跡を継がなければならないヤツが少しだけ羨ましい。継ぎたくないって言ってるあいつには絶対言えないけど。
失敗したくない。
だけど、得意なことが特にない自分は、どの道なら、うまくいくのかわからない。
道を間違えるのが怖い。
外に出なければ、迷子にはならない。
ドアの前で立ち止まっている。
こんな感じだから、他人から見たらやりたいことがないように見えるのだろう。
決める勇気がないだけなのに。
────やりたいこと
「雨戸のない部屋」
眩しさに目を覚ます。
いつもなら起き出す時間だ。
日曜日。
試験も終わり、バイトもない。
雨戸がない西向きの部屋にも少し慣れた。
隣で眠る遠距離恋愛中の彼女が身じろぎする。
眩しいのだろう。もぞもぞと頭を布団の中に入れていく。
久しぶりに会えたのだから、どこかに行きたいし、色々なことを話したい。
だけど、もう少しこのままでいたいとも思う。
あと五分……
いや、十分。
君が目を覚ますまで、このままで。
────朝日の温もり
「柵(しがらみ)」
運命なんて、自分ではわからない。
いつ命を落とすのかもわからない。
数分の差で、そのあとの人生が変わってしまうかもしれない。
それなのに、普段はそんなこと気にしないで生活してる。
「本当は、やりたいこといっぱいあって……たぶん、何年生きても足りない」
だけど、親に決められたレールの上を歩くことになりそう、と彼は言う。
人の寿命なんて誰にもわからない。親よりも長く生きられる保証なんてどこにもないのに、親のために生きるの?
しがらみも、立場も気にしないで、自分のためだけに生きてほしい。
そう、言えたら……
他人の私には、黙って見守ることしかできない。
────岐路
「君には知られたくないこと」
君と結ばれないのならば、生きる意味も価値もない。
物語に出てくる魔王のような力があったなら、世界ごと滅ぼしてしまうだろう。
こんなことを考えているだなんて、君が知ったらどう思うだろうか。
君が誰かに奪われてしまったら、辺り一面焼き尽くすだろう。
閉じ込めたはずの君が脱走したら、世界の果てまで追いかけるだろう。
そして、二度と逃げられないように、この手で君の命を奪ってしまうかもしれない。
君のいない世界などに意味も価値もないから、そのまま世界も滅ぼすだろう。
何の力も持たないことに安堵して、苛立つ。
────世界の終わりに君と
「ふたりの始まりの日」
アクシデントや良くないことがあると「最悪〜!」が口癖のあの子と、ペアを組むことになった。
「うわぁ……最悪」
彼女はそう言うと、腕を組んだ。
いや、それはこちらのセリフだよ……と思っていても私は言わない。
私のことをどう思っていても構わないけど、仕事に私情は持ち込まないでほしい。
個人的な好き嫌いで仕事に支障が出るようなことがありませんように、と願う。
相性最悪の私たちが、最強のペアになるまであと百五十日。
────最悪