小絲さなこ

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7/5/2024, 2:55:19 PM

「記憶の空」


子供の頃、自分が住む東京の空と、祖父母が住む田舎の空は違う空だと思っていた。
昼間は青い色の濃さが違うし、夜は星の数が違うから。

もしも都会の灯りが全て消えたら、どれくらいの星を見ることができるのだろう。



手を伸ばす。
片手で足りてしまう空の光の数。
祖父母の家からは、天の川も見えたのに。


今はもう無い祖父母の家の庭から見た空。
記憶はどんどん薄れていくのに、あの星空だけは覚えている。


それを忘れたくなくて、もっと多くの星を見たくて、私は辺鄙な場所を選んで旅に出る。



────星空

7/4/2024, 2:30:58 PM


「あまやどり」



本来なら、出会うはずがなかった。

生まれた地域も、住む地域も、趣味も、なにもかも違うふたり。

なぜ、あのときこの街に来たのか。
面倒だからと旅行なんてしないのに。
しかも有名な場所でもなんでもない場所。

なぜ、あのときあの店に入ろうと思ったのか。
雨宿りできる場所なんて、他にもあったというのに。


雨ではないもので頬を濡らしていた君に声をかけてしまったのは、偶然なのかそれとも……





────神様だけが知っている

7/3/2024, 2:47:57 PM


「茨の道」



「君が進みたいのは、茨の道だぞ」
あの人はそう言いつつも、その道を歩きやすいように整備してくれていた。
そのことに気がついたのは、だいぶあとになってからだったが。

「ここから先は、君の好きにすればいい」
そう言って背を向けたあの人を追いかけて、ずっと追いかけて、今も追いかけている。

あの人が天へ還っても、ずっと。


だから、あの人と同じように君の進む道を、茨の道から人がギリギリ歩けるくらいの道に整備している。まだ若い君には気付かれないように。



────この道の先に

7/2/2024, 2:01:21 PM


「アルミシート」



雨戸がないこの部屋は、遮光カーテンをかけていてもカーテンレールの上から朝陽が差し込んでくる。

引っ越してきた当時は冬だったので気ならなかったが、日の出時刻が早まるにつれ、あまりの眩しさにアラームの設定時刻よりも早く目を覚ますようになってきたのだ。


「とはいえ、あまりお金はかけられないし……」


とりあえず、百均でアルミシートを購入し、カットしてカーテンレールの上にセットしてみる。

なかなか良いが、見た目があまり良くないのが難点。

「ま、彼氏もいないし。誰か泊まりに来るわけでもないし。いっか」


翌月、彼氏が出来ることを、この時の私はまだ知らない。




────日差し

7/1/2024, 2:01:56 PM


「夜空に咲く花」


腹に響く振動に、胸が高鳴る。
部屋の灯りを消して、カーテンを開ける。

やはりこちら側だ。

この時期、この時間に窓を開けてしまうと、虫が入ってくる。
一瞬、躊躇して、結局開けてしまう。


色鮮やかな、空に伸びる光が咲き乱れる。


「自治体名 花火」で検索すると、届出済の花火の予定一覧が表示された。
 


「学校行事による……」

あぁ、そうか文化祭か。


文化祭の後夜祭の花火なのだろう。
漫画や映画の中でしか存在していないと思っていた。


生まれる場所が違ったら、育った地域が違っていたら、もしかしたら、漫喫していたかもしれない青春。
脳内で浮かんで消えていく。


最後、一番大きな花が咲いて、散る。


手を伸ばしても、届かないそれに蓋をするように窓を閉めた。




────窓越しに見えるのは

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