学校が終わり、トレーニングが終わった。
空はもう暗く、寮に入ると疲れた顔の同期たち、先輩、後輩たちとすれ違った。
もちろん、私も疲れた。けれどもっと強く、速くなりたい。あいつに、あの子に追いつくために。いや、追い越すために。
そして再びジャージに着替え、寮の外に出た。ひんやりと肌を突き刺すような冷たさ、少し息を吐くと白く濁る。空を見上げると澄み渡る星空。
さぁ、私だけの追加トレーニング開始だ。
最速を、1番を目指すために。あの星たちに手が届くほど、速く駆けるために。
『伝説』をただひたすら辿って駆けてきた。
けれどその旅路はあまりに無謀で、「届きそう」という言葉すら零せないほど遠すぎた。
そして君と出会い、競った。
自然と以前より前へ自由に、大きく駆けることが出来た気がした。
好敵手ーーライバルである君と競い合っているうちに、いつしか「伝説を越えた存在」と呼ばれるようになった。
あの業界を去って尚私の名、君の名は語り継がれているらしい
さぁ、始めようか。新たに君と紡ぐ物語を。
新たに私たちをも越える時代を創る者たちに、
伝説を───継ぐものたちへ
“『いつか』時代を創る者が現れる。私たちの時代の遥か遠くの未来で”
その『いつか』は此処にあったんだね
───ならば、私たちは君たちの時代を創る手助けをしようじゃないか。
大きく、広く、素晴らしい時代を作ってくれ
私たちはその為に全力で支え、私たちと君たちの時代を繋ぐ架け橋となろうではないか。
ただ強くなるため、いや早くなるために走る。
銀杏並木を、イチョウが、紅葉が、葉が歩道に落ちた、落ち葉の絨毯を。
その絨毯を辿るように、何か別のものを…あるいは憧れの存在を追いかけるように夢中で走る。
この道の先にあるゴール、そして伝説を越えたその先目指すようにーー。
淡々とトレーニングをこなした
ただ無心で、必死で知識を蓄えた
好敵手のライバルの、敵の弱点、得意、走法、特徴全て
けどどれだけトレーニングをこなしても、どれだけ知識を頭に詰め込んでも、あの子には勝てない。
何が違う?何が劣っている?
私は、これまでの時間を捨ててでも全てレースのために、走るために費やしてきたのに。
でも、私は気づいた。あの子は、ただ懸命に、健気に楽しそうに走っていた。ただそれだけだった。
けれど私には無くてあの子には確かにそれがあった。