田中 うろこ

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8/25/2025, 7:23:54 AM

 見知らぬ街を歩くのが好きだ。地元と全く違う飲食店のラインナップ、今度は地元と似た雰囲気の道。駅構内に漂う暖かい空気。駅には営みが見えるから、好きだ。たとえ寂しい駅でも、そこには過去たくさん人が乗ってきた足跡、すり減った床が見える。 俺は幽霊だし足とか関係ないけど。
 地縛霊ってわけではないので、北海道から沖縄までふわふわ浮いてゆく。浮遊霊の飛行速度は比較的イメージ力による。俺は生前飛行機とかにも乗ったことがないし、だいたい自転車と同じくらいのスピードで旅を続けている。南は沖縄、北は北海道まで。記憶は薄いにしろ、色んなところに行けて嬉しかった。
 大体五歳くらいだろうか。小さいときに見た、何もかもが大きい街のほどの感動は、まだ味わえていない。俺は生まれてから死ぬまでずっと、病床で暮らしていたから。
 

8/20/2025, 7:09:18 AM

なぜ泣くの?と聞かれたから

8/1/2025, 7:01:47 AM


眩しくて
眩しくて
眩しくて

辛いよ〜

7/29/2025, 5:44:33 AM

虹のはじまりを探して

「おい、にじのはじまりを探すぞ」
コタロー、小学二年生。雨上がりの田舎にて、虫取り網を片手に宣言した。
「今日の冒険は虹でやんすね!かしこまり!」
沢の流れる豊かな自然で育ったコタローは、常識というものを知らない。彼が持つただ一つの真実は、常識は自分で見つけるものだということ。
「コダマ、お前はにじってしってるか」
「しらね~でやんす!教えて教えて!」
数ヶ月前に山中を散策して、偶然友達になったコダマとかいう不思議なチビと、夏休みを毎日冒険して過ごしていた。
「にじってなあ、」
「はいな……!」
「すげーきれーで、でかい!」
鼻息を一つ。虫取り網を大仰に掲げる。肩にかけた虫かごが揺れる。中身は雑草でいっぱいだ。
「サイコー!でやんす、コタロー!」
「あいつはかくじつに、地にあしがある」
手に持った網で弧を描いて説明をするコタロー。その世界にはまだ間違いが存在していない。
「虹って、でっかいでやんすからね」
そうやって上を見上げるコダマは、雨上がりできらきら光る空を、神妙に見つめた。

「……コダマ?」
「おお、コタロー!おひさおひさでやんすね!」
ある日の雨上がり、帰省したコタローはまたあの河原に現れた。実に20年ぶりだ。
「コダマ、お前変わらないなあ」
「そうでやんすね、ソレガシ河童でやんすから」
どこからどう見ても普通の小さな子供。男か女かもまだわからない程度の可愛らしい子だ。雨上がりにしか現れず、日照りの日には山の洞窟にいるコダマ。
「いたんだ、河童って」
「いるっすよ、以外と近くに」
風が吹いて、コダマの髪が揺れると、ちらっと頭の皿が、虹のプリズムに反射した。
「虹のはじまり、見つかったっすか?」
「いいや、まだ、見つからないよ」
コタローは拳を握りしめ、まだ湿った河原に突き当てた。小さく丸まって涙を流す。懐かしさか、悲しさか。小さなときより小さくなった、自分の心への悔しさか。
「……だから、今から見つけにいくんだ」
「コタローも、全然かわらねーでやんす!」
虫取り網も虫かごもない、明らかに大きな麦わら帽子もない。それでも、大きな体一つで、山の向こうへ歩き出す。間違いなくこの目で確かめるのだ、虹のはじまりを探して。

7/28/2025, 2:33:21 AM

『オアシス』

 砂漠ほど、喉の乾く場所はない。水が飲めないのはもちろん、気を紛らわすために水のことを思えば思うほど、喉は加速度的に乾いていく。
舌の上にも砂が乗っているかのような、圧倒的な渇きが、青年の精神を蝕む。
 少年は病気だった。
「おれ、もう、だめなのか」
世界有数の奇病。『雛鳥病』にかかってしまったのだ。その病気は、おぞましいとしか言いようのない症例をいくつも有している。
その一つ。病気に伏した後に起床した時、初めに思い出した人のことを『親鳥』とする。そして、その親鳥の体液が混じったもの以外を口に入れると、身体が勝手に拒絶する。
「お前。もういないじゃん。」
しかし青年は、朝起きて偲ぶ故人が『親鳥』になってしまった。それはつまり、何も食すことができないということ。
「……今から、そっち行くよ。」
目を瞑ると、そこには酷く青い空と、遠く広がる地平線。それから、オアシスで遊ぶ、青年の思い人が、水辺に佇んでいた。

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