【梅雨】
憂鬱な季節
面倒な季節
そう言う人もいるけれど
私は梅雨の時期が嫌いではない
それは私が産まれたのが
梅雨の時期だったからだ
雨の降る音を聞きながら
誕生日を祝ってもらうというのも
私は好きだ
私は雨が降っている日に産まれたらしいから
その日の雨音もこんな感じだったのかなと思う
自分の産まれた日に思いを馳せながら
私は今年も梅雨という時期を楽しんでいる
【無垢】
なーんにも考えてないわけじゃなくて
汚いことを考えてないだけなのかな
嬉しいとか嫌だとかはちゃんと感じてるしね
だけど
人を恨んだり酷いことしてやろうと考えたりは
してないと思う
当たり前だよね、赤ちゃんだもん
無垢ってこういうことを言うんだなあ
大人がすっかり忘れてる
綺麗なだけの心のことなんだろうな
でもさ
無垢な状態には戻れないけど
世の中には悪い人がいるとか
こういう人は許しちゃいけないとか
人って成長や経験で覚えていくものでしょ
それがなかったら
人に傷付けられたり騙され続けたりすると思うんだよね
だから私、無垢じゃなくて良かったよ
けど
この子はまだ無垢だから
私たちが守っていかなきゃね
【終わりなき旅】
出発したのは今から三十年前
きっかけは国から出された極秘の任務だった
任務の内容は星々の調査
それから人間が住める星を一人で探せというものだった
だが火星など学生でも知っているような星ではなく
人間が住むことができる未知の星を探し出せとのことであった
けれど三十年経った今も
人間が住める未知の星は見つからない
それどころか未知の星すらほとんど見つけられていない
私は今日も一人で宇宙船に乗り
この広い宇宙を漂っている
宇宙は果てしない
いつか人間が住める星を見つけられたとしても
星々の調査には終わりなどない
私は人々のために終わりなき旅を続ける
ここを出発する前に
自分の人生を全て捧げる覚悟は決めてきた
そして、死ぬまで地球に戻れない契約を承諾して出発した
私がここで調査をするだけで
地球の家族は一日につき五百万円を受け取ることができる
地球に置いてきた子供たちも
もうとっくに立派な大人になっていることだろう
妻は元気にしているだろうか
時々連絡は取っているが、さすがに声が歳を取ってきたように感じる
人々と家族のために、私は孤独な終わりなき旅を
終わらせるわけにはいかないのだ
調査を一度中断して休憩する
無重力で宇宙食がくるくる回っているのも
丸くなった水が浮かんでいるのも
もう珍しい光景ではない
調査の他の楽しみはほとんどないが
宇宙船の窓から外を見れば
今日も地球が綺麗だ
【「ごめんね」】
私は私なりに
必死で生きていただけ
けれどそれは
あなたを悩ませ苦しませた
ごめんね
あの時の私には余裕がなかった
そしてあなたも
無知ゆえに私を何度も不安にさせた
だからあなたと私は互いに疲れ果て
関係は終わったの
それぞれが楽に生きるために
ごめんね
あなたのことは忘れないけど
あなたとの思い出は綺麗なままにはできない
優しかったあなたを思い出すと
今は痛いほどの苦味を感じるの
【半袖】
朝、暑いなと思ったので
俺は今年に入ってから初めて
ワイシャツを長袖から半袖に切り替えて出勤した
車では快適だったのだが
職場に着くと冷房がガンガンに効いており
「今日は暑いなー」と上司が話しかけてきた
出勤してきた同僚たちは涼しい涼しいと言って
みんなエアコンに感謝している
女性社員たちはカーディガンなどを羽織っているのでノーダメージ
そんな中、涼しすぎるとは言い出せず
俺は一日中縮こまって仕事をしていた